朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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第二部

※お泊まりと2度目の事件※①(東弥side)

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「着いたら連絡するからね。」

「うん。」

「夜寂しくなったら、いつでも電話していいからね。」

「うん。だいじょうぶ。」

そう言った静留の口元は笑っていたが、目は少し不安げだった。

左手には東弥がプレゼントした熊のぬいぐるみが抱きしめられている。

こんなにも愛おしい存在をどうして置いていかなければならないのか。

本当に解せない、と東弥は思った。

普段から静留となるべく一緒にいられるように授業を極力隙間なく入れて、部活はほぼ行かず、塾講師のバイトすら週一で早い時間しか入れていないというのに。

全ては海外在住の両親から、“明日帰るから帰ってきなさい”、と昨日LINEが来たせいだ。

東弥の親は基本とんでもない放任主義なのだが、たまに唐突にこういう命令をしてきて、従わないとかなり面倒くさいことになる。

そしてクセが強い。

行くとしたら最低一泊はしなければならないが、もし静留を連れて行ったとしたらそれはまあ大変なことになる。

静留が押しの強さにびっくりして泣き出す未来しか見えない。

静留を家に一人にするのは心配すぎて、考えに考えた末、東弥は静留を友人宅に預けることを決めたのだった。

「真希さん、よろしくお願いします。」

「任せて。シャワーは6時、夜ご飯はそのあとで大丈夫?」

「はい。お願いします。」

ここは谷津と真希の住むマンションの玄関前。

昨夜谷津に静留を預けられないか尋ねたところ、谷津が返信するより先に真希が電話で是非まかせて欲しいと言ってくれた。

しっかり者の彼女に預けられるのなら心強い。

「ねえ東弥、なんで俺じゃなくてずっとマキちゃんのこと見てるの?俺もいるんですけど!!」

真希の隣で谷津がむっと唇を尖らせてみせた。

「谷津もよろしく。」

「うわっ、雑!!」

「明楽、静留くんがびっくりするから少し声落とそうね。」

「ごめんなさい…。」

谷津の声で静留がびくっと肩を跳ねさせたから、真希が優しく谷津をなだめる。

谷津はしゅんと肩を落として、普段の彼からは考えられないその様子がおもしろい。

軽く抱きしめて口付けると、静留は顔を赤らめながら東弥に手を振った。

「東弥さん、いってらっしゃい。」

「うん、行ってくるね。」

空は快晴。秋風も気持ちいい。こんなに気持ちいい土日に、何が悲しくて静留と1日以上も離れなくてはならないのだろう。

駅までの道のりで東弥が漏らしたため息は、数えきれない。
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