54 / 92
第二部
突然の別れ⑦(東弥side)
しおりを挟む
舌をこれ以上ないほどに深くまで絡めあい、何度も何度も違う角度から唇を重ねた。
名残惜しさを覚えながらもそろそろ静留が苦しそうなので唇を離すと、彼は全力疾走した後のように肩を上下させ始める。
「ごめん、苦しかった?」
「…えっとね、うれし、かった…。」
静留の顔は真っ赤で、恥ずかしそうに視線を泳がせている様子が可愛らしい。
__俺もちゃんと言わなきゃね。
「静留、collarのことだけど、できなかった理由をちゃんと話してもいい?」
彼が落ち着いたのを見計らって話を切り出すと、静留は申し訳なさそうに俯いた。
「おしえて。おしえてもらえないとわからなくて、ごめんなさい…。」
それを知らないところも全て引っくるめて好きだったと、これからそれを教えるのにそう返すのは酷だろうか。
すこし迷った末東弥は何も言わず、ただ口元に優しい笑みを浮かべる。
「結婚するときに結婚式をするみたいに、パートナーになるときにclaimっていうのをするんだ。
そのときにcollarを渡すんだけど、それと一緒に、その、…セックスをすることになってて…。」
中高生でもあるまいし、この年になって顔を赤らめてこの単語を言うことになるとは思わなかった。
静留に対してその単語を発することは、何かとても後ろめたい。
「…せっくす…?」
言いながら、静留はきょとんと首を傾げた。
少なくともそんなあどけない表情を浮かべて発する単語ではない。
しかしその内容をしっかり説明しなければ静留に示しがつかないのだ。
きっと母に言われた内容でひどく傷つき、東弥に“自分を手放してもいい”、などと言うほどだったのだから。
「怖がってもいい。けど嫌がらないで聞いてね。したくないとか、汚いとか言われたら結構凹むから。セックスっていうのはね…。」
その男同士のやり方と意味について彼にもわかる言葉で説明すると、静留は顔を両の手のひらで覆ってしまった。
「東弥さんは、それ、したいの…?」
指の隙間からこちらを覗きながら、震える声で彼が言う。
一言で答えるのなら、したい。
静留の白い身体をベッドに横たえ、自分のために足を開かせ、その小さな身体で受け入れてほしいと思う。
でも、すぐにしたいわけじゃない。
「いずれはしたいと思うよ。でも今すぐしたいとか、そう言うわけじゃないかな。むしろ静留がどうしてもしたくないなら、しなくてもいい。
静留がしたいと思ったときにしたいな。俺には静留しかいないから、そういうこともゆっくり知っていけばいいと思ってた。」
東弥の答えを聞いて、静留はほっとしたように柔らかに笑んだ。
それからじっと東弥の目を見て、顔を真っ赤にして言う。
「…ぼくは、…はずかしい、けど、東弥さんのになりたい。首輪、つけてほしい…。」
__ここが病院じゃなかったら、危なかったかもな…。
この状況に初めて感謝した。
潤んだ瞳でそんなことを言われたら、たまったものではない。
「いきなり本番じゃなくて、例えば今夜にしてることをもう少し本番に近づけたりして、少しずつ練習しようね。それに怪我が治らないとできないし…。
静留のこと大切にしたいから、ゆっくりしたい。それでもいい?」
彼の手首を優しく掴み、顔を覆う両手を外す。
彼は少し不安そうに眉をひそめていた。
「…嫌…?」
「いやじゃない、けど…。
東弥さんのしるし、はやくほしい…。」
予想外の内容が返ってきて驚く。
なんだこの可愛い返答は。
しかしcollarを渡すならちゃんとclaimの儀式をしたい。そしてそれを静留が痛がらないためには数週間単位の準備が必要で。
迷った末、一つの答えにたどり着いた。
なにかcollarの代わりになるものを印として渡せばいい。婚約指輪だって、結婚式の前に渡すではないか。
例えば…。
「そういえば静留、ピアノはずっと弾いてないの?」
「…?うん。」
「それは大変だ。今から梨花さんに連絡するから、ちゃんと練習しないと。」
「…でも…。」
「コンサートのこともあるでしょう?梨花さんと相談して、終わったらまたここに来ればいいから。」
「…うん…。」
「それまで一緒にお話ししよう。」
「うん!」
結果的に少し話をはぐらかす形になってしまったが、思いついたことを実行するためなので仕方ない。
「もしもし?あのさ、お願いがあるんだけど…。」
梨花が血相を変えて静留を回収しにきた後、東弥はある人物に連絡を入れた。
名残惜しさを覚えながらもそろそろ静留が苦しそうなので唇を離すと、彼は全力疾走した後のように肩を上下させ始める。
「ごめん、苦しかった?」
「…えっとね、うれし、かった…。」
静留の顔は真っ赤で、恥ずかしそうに視線を泳がせている様子が可愛らしい。
__俺もちゃんと言わなきゃね。
「静留、collarのことだけど、できなかった理由をちゃんと話してもいい?」
彼が落ち着いたのを見計らって話を切り出すと、静留は申し訳なさそうに俯いた。
「おしえて。おしえてもらえないとわからなくて、ごめんなさい…。」
それを知らないところも全て引っくるめて好きだったと、これからそれを教えるのにそう返すのは酷だろうか。
すこし迷った末東弥は何も言わず、ただ口元に優しい笑みを浮かべる。
「結婚するときに結婚式をするみたいに、パートナーになるときにclaimっていうのをするんだ。
そのときにcollarを渡すんだけど、それと一緒に、その、…セックスをすることになってて…。」
中高生でもあるまいし、この年になって顔を赤らめてこの単語を言うことになるとは思わなかった。
静留に対してその単語を発することは、何かとても後ろめたい。
「…せっくす…?」
言いながら、静留はきょとんと首を傾げた。
少なくともそんなあどけない表情を浮かべて発する単語ではない。
しかしその内容をしっかり説明しなければ静留に示しがつかないのだ。
きっと母に言われた内容でひどく傷つき、東弥に“自分を手放してもいい”、などと言うほどだったのだから。
「怖がってもいい。けど嫌がらないで聞いてね。したくないとか、汚いとか言われたら結構凹むから。セックスっていうのはね…。」
その男同士のやり方と意味について彼にもわかる言葉で説明すると、静留は顔を両の手のひらで覆ってしまった。
「東弥さんは、それ、したいの…?」
指の隙間からこちらを覗きながら、震える声で彼が言う。
一言で答えるのなら、したい。
静留の白い身体をベッドに横たえ、自分のために足を開かせ、その小さな身体で受け入れてほしいと思う。
でも、すぐにしたいわけじゃない。
「いずれはしたいと思うよ。でも今すぐしたいとか、そう言うわけじゃないかな。むしろ静留がどうしてもしたくないなら、しなくてもいい。
静留がしたいと思ったときにしたいな。俺には静留しかいないから、そういうこともゆっくり知っていけばいいと思ってた。」
東弥の答えを聞いて、静留はほっとしたように柔らかに笑んだ。
それからじっと東弥の目を見て、顔を真っ赤にして言う。
「…ぼくは、…はずかしい、けど、東弥さんのになりたい。首輪、つけてほしい…。」
__ここが病院じゃなかったら、危なかったかもな…。
この状況に初めて感謝した。
潤んだ瞳でそんなことを言われたら、たまったものではない。
「いきなり本番じゃなくて、例えば今夜にしてることをもう少し本番に近づけたりして、少しずつ練習しようね。それに怪我が治らないとできないし…。
静留のこと大切にしたいから、ゆっくりしたい。それでもいい?」
彼の手首を優しく掴み、顔を覆う両手を外す。
彼は少し不安そうに眉をひそめていた。
「…嫌…?」
「いやじゃない、けど…。
東弥さんのしるし、はやくほしい…。」
予想外の内容が返ってきて驚く。
なんだこの可愛い返答は。
しかしcollarを渡すならちゃんとclaimの儀式をしたい。そしてそれを静留が痛がらないためには数週間単位の準備が必要で。
迷った末、一つの答えにたどり着いた。
なにかcollarの代わりになるものを印として渡せばいい。婚約指輪だって、結婚式の前に渡すではないか。
例えば…。
「そういえば静留、ピアノはずっと弾いてないの?」
「…?うん。」
「それは大変だ。今から梨花さんに連絡するから、ちゃんと練習しないと。」
「…でも…。」
「コンサートのこともあるでしょう?梨花さんと相談して、終わったらまたここに来ればいいから。」
「…うん…。」
「それまで一緒にお話ししよう。」
「うん!」
結果的に少し話をはぐらかす形になってしまったが、思いついたことを実行するためなので仕方ない。
「もしもし?あのさ、お願いがあるんだけど…。」
梨花が血相を変えて静留を回収しにきた後、東弥はある人物に連絡を入れた。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
Dom/Subユニバース読み切り【嘉島天馬×雨ケ谷颯太】
朝比奈*文字書き
BL
🖤 Dom/Subユニバース
毎週日曜日21時更新!
嘉島天馬(クーデレ・執着Dom)× 雨ケ谷颯太(ワンコ系・甘えんぼSubよりSwitch)
読み切り単話シリーズ。命令に溺れ、甘やかされ、とろけてゆく。
支配と愛情が交錯する、ふたりだけの濃密な関係を描いています。
あらすじは各小説に記載してあります。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる