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第二部
突然の別れ⑥(東弥side)
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幹斗と連絡をとって1時間ほどが経ってから、とんとんとドアがノックされた。
続いて“東弥”、と幹斗の声が聞こえてくる。
「どうぞ。」
「東弥さんっ…!!」
ドアが開くと同時にたたっと静留が駆け込んできて、東弥はやっと地に足がついた心地がした。
__よかった、やっと会えた…。
彼はいつものように東弥に抱きつくために両手を伸ばしかけたが、東弥が怪我していることに気づいたからか、途中でその手を宙に泳がせる。
「心配かけてごめんね。静留。もう大丈夫だよ。」
彼の手をつかんでこちらに引き寄せ長い髪を撫でてやると、静留は涙を堪えるように唇を噛んで。
「…あのね、東弥さん。」
何かを決心したように拳を握りながらじっと東弥の目を見て言った。
「どうしたの?」
「…おはなし、あるの…。きいてくれる…?」
真剣な瞳を見て、少し恐怖を覚える。
もしもこの先一緒にいられないと静留が東弥を拒んでしまったらどうしようかと。
「もちろん。…そこに座って。ずっと立っていたら疲れるでしょう?」
けれど不安を表に出さないように優しく笑ってそう言うと、静留はこくりとうなずいて、東弥の隣に腰掛けた。
いつのまにか幹斗の姿はない。
「…あの、ね…。
ぼく、男で、…赤ちゃんうめないの。それでね、くれいむ?もしらないの…。
だから、…いっしょいたら、めいわくかけちゃうから… 」
そこまで言って、彼はぎゅっと目を瞑り、小さく息継ぎをした。
息を吸う音が震えている。
「…もう、東弥さんといたいって、わがままいわない。…ぼくのこと、もし、きをつかっていっしょにいるなら、…だいじょうぶ、だから…。」
言い終えたあと、彼は唇に笑みを浮かべて見せた。
しかし唇は震えているし、柔らかく細められた瞳は潤んでいて、声はかすれていて、明らかに無理に笑っているのだとわかる。
彼の健気な様子へのどうしようもない愛しさと、彼をこんなふうに悩ませてしまった苦しさで、どうにかなってしまいそうだった。
頭がぐちゃぐちゃで、なんと返せばいいのかわからない。
伝えたいことと伝えなければならないことが、きっと少し違う。
どちらが大切か考えたとき、今の場合に限って言えば伝えたいことの方だと思った。
彼の後頭部に手を回しこちらの方へと引き寄せてから、彼の瞳をじっとみて東弥は唇を開く。
「ねえ静留、愛してる。絶対に離したりしないよ。」
優しい声で伝えれば、無理に浮かべられていた笑みが解け、驚いたように大きくひらかれた瞳から大粒の雫がぼろぼろと溢れ出した。
「もちろん静留に気を遣って一緒にいるわけじゃない。俺が一緒にいたいんだ。たくさん話さなくちゃいけないことがあるけど、まずはそれをわかってくれる…?」
こくこくと彼が大きく頷く。
「いい子。」
拭っても意味がないことを知っていながら、東弥は彼の瞳に浮かぶ雫をそっと掬った。
そのまま甘いglareを放ち、固まっている彼の唇を奪う。
桜色の淡い唇は東弥の乾燥した唇を乳を吸う赤子のように何度か食み、東弥がその隙間を舌でとんとんとノックすると、通り道を開くように合わせが緩んだ。
互いの存在を確認するように、そっと舌を擦り合わせていく。
たくさん話すべきことがある。そのことはわかっている。
でも愛おしさが先立ってしまったから、もう少しこのままでいることを許してほしい。
続いて“東弥”、と幹斗の声が聞こえてくる。
「どうぞ。」
「東弥さんっ…!!」
ドアが開くと同時にたたっと静留が駆け込んできて、東弥はやっと地に足がついた心地がした。
__よかった、やっと会えた…。
彼はいつものように東弥に抱きつくために両手を伸ばしかけたが、東弥が怪我していることに気づいたからか、途中でその手を宙に泳がせる。
「心配かけてごめんね。静留。もう大丈夫だよ。」
彼の手をつかんでこちらに引き寄せ長い髪を撫でてやると、静留は涙を堪えるように唇を噛んで。
「…あのね、東弥さん。」
何かを決心したように拳を握りながらじっと東弥の目を見て言った。
「どうしたの?」
「…おはなし、あるの…。きいてくれる…?」
真剣な瞳を見て、少し恐怖を覚える。
もしもこの先一緒にいられないと静留が東弥を拒んでしまったらどうしようかと。
「もちろん。…そこに座って。ずっと立っていたら疲れるでしょう?」
けれど不安を表に出さないように優しく笑ってそう言うと、静留はこくりとうなずいて、東弥の隣に腰掛けた。
いつのまにか幹斗の姿はない。
「…あの、ね…。
ぼく、男で、…赤ちゃんうめないの。それでね、くれいむ?もしらないの…。
だから、…いっしょいたら、めいわくかけちゃうから… 」
そこまで言って、彼はぎゅっと目を瞑り、小さく息継ぎをした。
息を吸う音が震えている。
「…もう、東弥さんといたいって、わがままいわない。…ぼくのこと、もし、きをつかっていっしょにいるなら、…だいじょうぶ、だから…。」
言い終えたあと、彼は唇に笑みを浮かべて見せた。
しかし唇は震えているし、柔らかく細められた瞳は潤んでいて、声はかすれていて、明らかに無理に笑っているのだとわかる。
彼の健気な様子へのどうしようもない愛しさと、彼をこんなふうに悩ませてしまった苦しさで、どうにかなってしまいそうだった。
頭がぐちゃぐちゃで、なんと返せばいいのかわからない。
伝えたいことと伝えなければならないことが、きっと少し違う。
どちらが大切か考えたとき、今の場合に限って言えば伝えたいことの方だと思った。
彼の後頭部に手を回しこちらの方へと引き寄せてから、彼の瞳をじっとみて東弥は唇を開く。
「ねえ静留、愛してる。絶対に離したりしないよ。」
優しい声で伝えれば、無理に浮かべられていた笑みが解け、驚いたように大きくひらかれた瞳から大粒の雫がぼろぼろと溢れ出した。
「もちろん静留に気を遣って一緒にいるわけじゃない。俺が一緒にいたいんだ。たくさん話さなくちゃいけないことがあるけど、まずはそれをわかってくれる…?」
こくこくと彼が大きく頷く。
「いい子。」
拭っても意味がないことを知っていながら、東弥は彼の瞳に浮かぶ雫をそっと掬った。
そのまま甘いglareを放ち、固まっている彼の唇を奪う。
桜色の淡い唇は東弥の乾燥した唇を乳を吸う赤子のように何度か食み、東弥がその隙間を舌でとんとんとノックすると、通り道を開くように合わせが緩んだ。
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