朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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第二部

2回の来客②(東弥side)

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どこか懐かしさを感じさせるメロディーと共に始まったその映画は、少し古い恋愛映画らしい。

職場と居酒屋で偶然二度出会った2人の男女が恋に落ちていく、ありきたりな序盤は怖いくらいにスムーズで、2人は開始20分足らずで結婚までを遂げてしまった。

__きっとこのあとで何かが起こるんだろうな。

幸せな結婚生活をぼうっと眺めながらなんとなくそんなことを考えていると、横で見ていた静留が突然東弥の袖をくいっと引いた。

「どうした?何かあった?」

こちらの目を見ながら不思議そうに首を傾げる彼の姿を愛おしく思いつつ、東弥は微笑みかける。

静留は大きな目を不思議そうにぱちぱちと瞬かせながら画面を指差しゆっくりと唇を開いた。

「…あれ、なにしてるの…?」

__何か特殊なことしてるっけ…?

疑問に思いながら静留の指差す方を見て、少し考えてなるほどと納得する。

画面の中では新婚の2人がベッドの上で幸せそうにじゃれあっていた。

2人が衣服を纏っていないことは見て取れるが、上からシーツがかかっているため静留には何が行われているのか理解できなかったのだろう。

「前に俺が教えたclaimと一緒にすること、覚えてる?」

「…?うん。」

うなずいた静留は依然として府に落ちない様子だ。

「布団の下で、それをしてるんだよ。」

「!?」

説明すると、彼は頬を真っ赤にして口を手で覆い隠した。初心うぶな反応が可愛らしい。

しかし彼らの行為をしばらく見ていてやがて静留は手を離し柔らかな笑みを浮かべた。

「しあわせそう…。」

うっとりとした声でそう紡いだ静留に、

「そうだね。」

と、東弥は彼の頭を撫でながら答える。

本当に幸せそうだ。尺的にこれから何かが起こるに決まっているのだが、何も起こらないでこのまま幸せに過ごしてほしいと願わずにはいられないほどに。

「東弥さんはしたことあるの?」

ふと、静留が本当にただ知りたいだけといった口調でそう呟いた。

「あるよ。」

別に隠すことでもないから淡々と事実を伝える。隠したところで過去がなくなることはない。

「…しあわせだった…?」

さらに静留は続ける。

「幸せではなかったかな。」

静留に尋ねられ過去の性行為を思い返してみたが、どれも東弥にとって幸せとはかけ離れたものだった。

ただ相手を満足させることだけを考えて心では早く終われと願うのに、身体は与えられる快楽に確かに反応する。

心と身体がバラバラになったような感覚がひどく気持ち悪かった。

「…そうなんだ…。」

「うん。」

静留は東弥の肩に頭をもたれかけ、それっきり何も言わなくなってしまった。

東弥たちが喋らなくても関係なく物語は続いていく。

まだずっと2人は幸せそうだ。

“もうあなたとはいられない。好きではなくなってしまったの。離婚しましょう?”

しかしある日突然女性の方がなんの前触れもなく愛した男性を突き放して、離婚届を突きつけて。

そのシーンを見た静留は、涙目になって肩をぴくりと震わせた。






次のシーンから女性の回想が始まった。

女性は前の男からDVを受けており、その男に見つかって“今の男と別れてこちらにこなければ家に乗り込む”、と脅迫されたらしい。

そして泣く泣く別れることを選んだという。

クライマックスに向けて事態はどんどん悪化していく。

離婚届を出せないまま荒れる男性、前の男の元に戻り毎日暴力を振るわれる女性。

そこまで何も言わずにじっと見ていた静留だったが、ついに画面から目を背け、東弥の方を見て泣き出してしまった。

「うぅっ…。おんなのひと、どうしていじめられてるの…?このままじゃ、しんじゃうよ……。」

東弥は愛しさに思わず笑みをこぼす。

オニキスのような瞳からは大粒の涙がぼろぼろとこぼれ出していて、たかがと言って仕舞うのは失礼だが、画面の中の女性のためにこんなにも真剣に泣いている彼をひどくいじらしく思った。

「静留泣かないで。きっと幸せになれるから、最後まで見てみよう?…ね?」

頭を撫でながらそう言い聞かせる。この手の話はきっと男性が王子様のように助けに来てハッピーエンドだ。そう相場が決まっている。

「…ほんとう…?」

「うん、本当。」

そこまで言ってやれば静留は大きく頷いて、再び東弥の肩に頭を預け画面の方を向いた。

結局ある手がかりをきっかけに男性は女性が去った理由に気が付き、行動を起こし、DV男は逮捕され、2人は寄りを戻し、ハッピーエンドを迎えた。

「よかったね。ほら、幸せに…静留大丈夫?」

エンドロールが流れ、東弥は静留に微笑みかける。

しかし静留はまたぐずぐずに泣いていた。

「よかっ…たっ…。しあわせになれてっ…。」

__なんだこのかわいい生き物は。

思わず口を押さえた。

膝に乗せて強く抱きしめて口づけをして目一杯可愛がりたいのに、怪我のせいでそれができないことがひどくもどかしい。

「どうだった?」

「しあわせになれて、ほんとうによかった。」

そう言って彼は、今度は花開くようにしあわせそうな笑みを浮かべる。

衝動的に静留の唇を奪いながら、こんなにも泣いて笑って盛り上がれるなら映画もいいなと密かに思った東弥であった。

部屋の電気をつけてカーテンを開ければ、空はもうすでに薄暗い。

“~~♪”

__…あれ。

玄関のチャイムが再び鳴って、東弥は静留とともに大きく目を見開き首を傾げた。
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