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愛とオルゴール
03. 面会
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「お呼び立てするようなことになり誠に申し訳ございません。
お時間を頂き感謝いたします。
また、お嬢様への取り次ぎを願い、断られても何度もこちらのメイドに申し出を行いましたことを深くお詫びいたします。
しつこく頼む私の申し出を受けざるを得なかったメイドには罪はありません。全ては私の責任でございます。
私どもがお嬢様にお目にかかる立場でないことは承知しております。
ただ、どうしてもお話させていただきたいことがございます。
何卒、お聞き届けいただけますよう、お願い申し上げます」
イネスとリカルドは平伏して私を迎えた。
そして頭を上げるように言った私に、そう切り出した。
初めて見る異母弟の姿に内心では気もそぞろであった私にイネスが言ったことを纏めると、父が突然言い出した妄言に二人は本気で狼狽し、その話をされてからずっとそんな考えは捨ててほしいと懇願していること、二人にはそんな気持は毛頭無く、父の話に乗る気はないこと、そのことを私から祖父母やネイサンにも伝えて欲しいというものだった。
「私どもは恐れ多くもリカルドを侯爵家の後継者になどと考えたことなど一度もございません。命をかけて本当でございます。ですから何卒、リカルドにお情けを。どうぞ、情けをかけて頂きたく」
イネスが必死の形相でそう言うとリカルドもつづけた。
「母の言葉に相違はありません。私は弟君の地位を脅かすつもりなどありません。この命にかけて、誓って本当です」
二人の言葉から嘘は感じられなかった。
そこにあるのは、真摯で誠実な気持であるように見えた。
「わかりました。あなた方のお気持ちは必ず祖父母達に伝えます。そして、わたくしから父に物申す際にはあなた方にここまでさせた責任についてもきっちりと問いますから安心なさって」
父はいったいどういうつもりでいるのかと私は本気で腹を立てていた。
愛する者のため?
これはそんなことじゃない。
父は徒に愛する二人を危険にさらしているだけだ。
二人の方がそのことを理解しているなんて皮肉な話だと思った。
そして、一方でリカルドが義理とはいえ姉に向かってここまでしなければならないということが悲しいとも。
だけど、これは仕方の無いことなのだ。
私は自分とネイサンの立場を守らなければならない。
もちろん祖父母は私たちの立場を尊重してくれるだろう。
だけど、リカルドのように、道理を曲げてでも彼に全てを渡したいと考えてくれる父親も、彼を守るためになりふりかまわないほど愛情深い母親もいない私達だから私は強くならなければならない。
「さあ、この件はわたくしがきちんと対処しますからこれ以上心配しなくていいわ」
そう言うとイネスは少しだけほっとしたような顔をした。リカルドはじっと私を見ている。
「リカルド」
リカルドの不躾な様子を見たイネスが焦ったように小さな声で叱責し、その声にハッとした顔をしたリカルドが慌てて頭を下げた。
「申し訳ございません、お嬢様」
「申し訳ございません」
二人は頭を再度下げて言った。
「リカルド」
私の声にリカルドがビクリと顔をあげた。
思わず名を呼んだが、私は彼に何を言うべきか迷った。
「貴方は……いえ、その……そう、もしも貴方がたに今回のように父が迷惑をかけることがあったり、何れ、そうね、いつか父が亡くなった後に困ることがあったらわたくしに言いなさい。
貴方がたがわたくしやネイサンの立場を侵さない限り、わたくしは貴方を悪いようにはしないわ」
母は違えど弟なのだからとは続けられなかった。
私の言葉にイネスは驚いたように顔をあげたかと思うとすぐにまた頭を下げた。
リカルドも頭を下げ、小さな声でありがとうございますと言ったようだった。
お時間を頂き感謝いたします。
また、お嬢様への取り次ぎを願い、断られても何度もこちらのメイドに申し出を行いましたことを深くお詫びいたします。
しつこく頼む私の申し出を受けざるを得なかったメイドには罪はありません。全ては私の責任でございます。
私どもがお嬢様にお目にかかる立場でないことは承知しております。
ただ、どうしてもお話させていただきたいことがございます。
何卒、お聞き届けいただけますよう、お願い申し上げます」
イネスとリカルドは平伏して私を迎えた。
そして頭を上げるように言った私に、そう切り出した。
初めて見る異母弟の姿に内心では気もそぞろであった私にイネスが言ったことを纏めると、父が突然言い出した妄言に二人は本気で狼狽し、その話をされてからずっとそんな考えは捨ててほしいと懇願していること、二人にはそんな気持は毛頭無く、父の話に乗る気はないこと、そのことを私から祖父母やネイサンにも伝えて欲しいというものだった。
「私どもは恐れ多くもリカルドを侯爵家の後継者になどと考えたことなど一度もございません。命をかけて本当でございます。ですから何卒、リカルドにお情けを。どうぞ、情けをかけて頂きたく」
イネスが必死の形相でそう言うとリカルドもつづけた。
「母の言葉に相違はありません。私は弟君の地位を脅かすつもりなどありません。この命にかけて、誓って本当です」
二人の言葉から嘘は感じられなかった。
そこにあるのは、真摯で誠実な気持であるように見えた。
「わかりました。あなた方のお気持ちは必ず祖父母達に伝えます。そして、わたくしから父に物申す際にはあなた方にここまでさせた責任についてもきっちりと問いますから安心なさって」
父はいったいどういうつもりでいるのかと私は本気で腹を立てていた。
愛する者のため?
これはそんなことじゃない。
父は徒に愛する二人を危険にさらしているだけだ。
二人の方がそのことを理解しているなんて皮肉な話だと思った。
そして、一方でリカルドが義理とはいえ姉に向かってここまでしなければならないということが悲しいとも。
だけど、これは仕方の無いことなのだ。
私は自分とネイサンの立場を守らなければならない。
もちろん祖父母は私たちの立場を尊重してくれるだろう。
だけど、リカルドのように、道理を曲げてでも彼に全てを渡したいと考えてくれる父親も、彼を守るためになりふりかまわないほど愛情深い母親もいない私達だから私は強くならなければならない。
「さあ、この件はわたくしがきちんと対処しますからこれ以上心配しなくていいわ」
そう言うとイネスは少しだけほっとしたような顔をした。リカルドはじっと私を見ている。
「リカルド」
リカルドの不躾な様子を見たイネスが焦ったように小さな声で叱責し、その声にハッとした顔をしたリカルドが慌てて頭を下げた。
「申し訳ございません、お嬢様」
「申し訳ございません」
二人は頭を再度下げて言った。
「リカルド」
私の声にリカルドがビクリと顔をあげた。
思わず名を呼んだが、私は彼に何を言うべきか迷った。
「貴方は……いえ、その……そう、もしも貴方がたに今回のように父が迷惑をかけることがあったり、何れ、そうね、いつか父が亡くなった後に困ることがあったらわたくしに言いなさい。
貴方がたがわたくしやネイサンの立場を侵さない限り、わたくしは貴方を悪いようにはしないわ」
母は違えど弟なのだからとは続けられなかった。
私の言葉にイネスは驚いたように顔をあげたかと思うとすぐにまた頭を下げた。
リカルドも頭を下げ、小さな声でありがとうございますと言ったようだった。
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