(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ

文字の大きさ
10 / 75

10話

しおりを挟む
「シュシュ、そこまでにしてタヌキ君のケガを治療するわよ」

「はい、お嬢様」

 だけど、タヌキ君は全身モコモコの毛に覆われていて、ケガが見えにくい。その毛をめくり、体全体をチェックするとタヌキ君の顔、背中、前足後ろ足、お腹に複数の刃物での切り傷、擦り傷を見つけた。

(誰にやられたのか、わからないけど……酷いケガだわ)

「シュシュ、一度、タヌキ君を水で洗った方がいいかしら?」
 
「それがいいかもしれません、洗濯用の木の桶を持ってきます」

「お願いね」
 

 シュシュが裏から持ってきた木の桶に水魔法で水をためて、タオルを浸してタヌキ君を軽く拭き洗いする。水が冷たかったのか、タヌキ君はピクッと動いたあと体を硬直させた。

「水が冷たいけど、我慢してね」
「お、おう」
 
 タヌキ君の体を新しいタオルで軽く拭き、シュシュは切り傷と大きな擦り傷を消毒して傷薬を塗り。私は手をかざして、一応使える回復魔法でタヌキ君の擦り傷を治しはじめる。

「イテテ……シュシュありがとう。カサンドラ……ん、言いにくいな、ドラは回復魔法が使えるんだ、スゲェ」

 ――カサンドラのドラ?

「フフ、その呼び名いいわね。でも、私の回復魔法は……その、小さな切り傷しか治せませんの……タヌキ君、ごめんね」

「ハァ? 何謝ってんだよ、ドラ。回復魔法はスゲェ魔法なんだぞ……使える者も数少ないから、とても貴重な魔法だ! ほら、腕のすり傷がきれいに治った、スゲよな」

 見ろ!と、モフモフの前足を見せてくる、タヌキ君と。
 コクコク、頷くシュシュ。

「そうなの? 回復魔法が貴重な魔法か……ありがとう」

 今、私が使った回復魔法が『凄い』言ってくれた、タヌキ君の言葉、コクコク、コクコク何度も頷く、シュシュの姿がカサンドラは嬉しかった。

 ――前に。

『そんな、小さな切り傷、擦り傷しか治せない回復魔法など何に使うんだ?』

 アサルト殿下のキズを治した時そう言われた……カサンドラは顔には出さなかったが、傷付いた。
 だけど今「凄い」「ありがとう」「助かった」と。あまりにも喜ぶタヌキ君とシュシュに、カサンドラは自分の頬が熱くなるのを感じた。

「ありがとう、タヌキ君、シュシュ……喜んでくれる人が私の周りには余りいないから……少し照れてしまいますわ」

「そうか、俺がこれからドシドシ言ってやる。言いたい……あ、あのな、ドラ、シュシュ……俺の名前、アオってんだ。……しばらく、ここに置いてくれないか? この家に女性二人だけだろう? 俺、腕に多少自信がある……用心棒とか、なんでもするからさ」

 ――タヌキ君、もとよりアオ君がここに居たい?
 
「いいの? アオ君はここに、いてくださるの?」
「あぁドラと、シュシュがいいと言うなら」

「まぁ嬉しいわ! シュシュ、今日の夕食は豪華にいたしましょう」

「はい、カサンドラお嬢様。よい肉を近くの街で買って、肉を焼きましょう!」

「じゃ、奮発しないとね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

白百合の君を瞼に浮かべて

蒼あかり
恋愛
騎士隊副隊長のレイモンドは、第二王子アーサーの婚約者アリシアの事を密かに想っていた。 『白百合の君』と呼ばれるほどに美しいアリシアが、自分の起こした行動により婚約破棄を告げられてしまう。酔った勢いで婚約破棄を告げ後悔するアーサーだが、大きな力で婚約の存続は途絶えてしまった。それでもアリシアを手放せないアーサーが、執拗にアリシアを追い詰めてくる。そんなアリシアを守るために求め続けるも、二人はすれ違い続けついには行方知れずに。 年月を重ね、二人は再び出会うことができるだろうか? 他サイトでも掲載しております。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...