女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ

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 ロッサを送り熊クマ食堂に戻ったオレは、ルテに手を握られていた。それもねっとり指を絡み付かせている。何故だがわからないが、オレはルテの機嫌を損ねたらしい。

「ルテ?」
「なんだ、タヤ」

 鋭い瞳だ。アルファの支配力にオレの体は抗えなくなる。そして自分の意志とは別に体は熱くなっていく。いま口を開いたら「抱いてくれ」と言ってしまいそうだ。

 その思いを噛み砕き、口を開く。

「頼む、手を離してくれ」
「どうして? タヤは私と手を繋ぐのが嫌なのか?」

「い、嫌じゃない」
「ならいいだろう?」

(……ルテが俺の手をいやらしく触るから、チンコが半勃ちなんだよ。それ以上……ルテに手を触られたら……ひっ、ルテがオレの指にくちづけした?)

「あっ! ……ルテ、辞めてくれ頼む……お前も、男ならわかるだろ?」

「ああ、私も男だからわかるよ」
「だったら、手を離せよ」

「嫌だ」

 厨房のシンギとマヤに聞こえないよう、小声でルテに話している。そのルテはニヤリと笑って、オレの人差し指を噛んだ。

「ひっ、ああっ………!」

 ルテに噛まれただけで、オレの体は簡単に反応を返す。
 そんなオレを見て、ルテの瞳に熱がこもり「たまらねぇ」低く唸るように囁く。それと同時にフワリとルテからスパイスの香りがした。

 この香り……そして、もう1度ルテに噛まれたら……イク。ルテはオレの心情がわかったのか、ニヤリと微笑む。
 
(あ、ああ、やめろ、やめてくれ)
 
 ルテは口を開けて牙を見せ、オレの指を噛もうとした。

「いい加減おやめください、フォルテ殿下! タヤが困っております、おふざけはお辞めください」

 え、フォルテ?

「シンギ団長! いま言うなんて酷いだろう!」

「元団長ですよ。フォルテ殿下は黙ってください。……タヤ、この方はフォルテ殿下だ……気付いていながら伝えなくてすまない」

 シンギはオレに深深く頭を下げた。ルテがフォルテ殿下で……シンギが元騎士団長? オレの頭の中はパニックだ。




 ♱♱♱



 
「俺は7年前まで王都で騎士団長を務めていた……28になって夢だった宿をマヤと息子とはじめた……まあ、息子を亡くして食堂に変えたんだけどな」

 シンギは笑って、厨房に消えていった。


 熊クマ食堂の奥の席。オレ達の前には揚げたて、シュリンサンドイッチが前に置かれている。落ち着いてきたオレにルテは説明を始めた。

「自分のことは自分でという、父上どの約束事で。私はこの姿でローランドの冒険者ギルドで依頼を受け、自分の足で、使用する抑制剤の材料を集めていたんだ……そこで、タヤに話しかけられたんだ」

 変装具を外して、ルテからフォルテに戻った。

「凄いな……オレ、全然気付かなかった。すみません、俺はフォルテ殿下に失礼な態度ばかり取っていました。それに、また介抱までしてもらった」

「いや、ああなったら仕方がない、私の方こそ無理矢理、己の杭を押し付けてすまなかった」

 当時の状況を思い出して恥ずかしくなった。

 ――でもオレは。

「フォルテ殿下に触られて気持ちよかったよ。二度も、助けていただき、ありがとうございました」

「いいや、お礼を言うのは私だ。……あのさ、タヤ、いま私の香りを嗅いでどう思う」

「フォルテ殿下の香り? えーっと、強烈なスパイスの香りがします……オ、オレの好きな香りで、いま抑制剤を飲んでいなかったら……フォルテ殿下に「抱いて」と擦り寄っていたと思います」

(顔に出さないようにしているが、ルテからフォルテに変わったときに濃くなった、彼の香りに下はガチガチで――己の体がフォルテ殿下を求めているのがわかる)

「シンギさん、私は……タヤに告白してもいいだろうか?」

 告白したいと、フォルテは真剣な声で厨房にいるシンギに聞いた。シンギは暖簾をめぐり、顔をだして。

「……されてもいいと思います。タヤを必ず大切にしてください。そして、国王陛下、王妃にも話さなくてはなりません」

「そうだな、父上と母上には夕飯のときに伝える」

「お願いします、しっかり伝えて話し合ってください。次の休み、王城に出向いたとき俺からも陛下に伝えます」

 2人の尋常じゃない空気に、オレは圧倒されていた。
 
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