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「シンギさん、タヤと一緒にいるあの子は誰?」
「え、えーっと、あの令嬢は町の中でタヤとぶつかったみたいで、怪我をしていないかってタヤが連れてきたんです」
「ふうーん、前からの知人ではないんだな」
「そうですね。今日出会ったばかりだと思います」
なのに。あんなに近くで話して笑って、仲が良さそうだ……久しぶりにタヤに会えた喜びが、嫉妬に変わり胸がムカムカする。私はシンギが止めるなか暖簾をめくり店内にいるタヤに話しかけた。
「タヤ、一緒に冒険に行こうと思って来たけど……来客か? 用があるんだったら一人で行くけど」
私の声に反応してタヤが振り向く、その顔が嬉しそうで、私の気持ちは若干だが上がった。
「ルテ? おお、久しぶりに時間が出来たの? なんだよ、一人で冒険に行くって言うな、少しだけ待ってくれ」
「わかった、どれくらい待てばいい」
のれんをくぐり抜けて、二人がいるテーブルに近付いた。タヤの逆側に座っていた令嬢は突然あらわれた私を見て、かなり驚いているようだ。だが、今の私は変身具で髪の色と、声色を変えているからバレないはずなんだが。
ジロッと見つめた途端、慌てて席を立つ令嬢。
「タ、タヤ、私、用事ができたから帰るわ」
「え、オレたちに気を遣わなくてもいいんだぞ?」
「あのね。あと一時間くらいで屋敷に、家庭教師がくるのを忘れていたの。早く戻らないと、お父様に叱られてしまうわ」
「か、家庭教師? お嬢様も大変だなぁ」
「そっ、そうなの……ごめんね」
下手な芝居だ……あきらかに私を見て動揺している。どこの令嬢だ? この様子だと名前を聞いても教えてくれはしない、年齢は私と同じくらいか。
だが、学園で見たことがない顔だな。
「いいよ。じゃ、馬車まで送るかな。どこに停まっているんだ?」
「馬車の場所? ……えっと、タヤとぶつかったところから、左に行った出口だったかしら?」
「ぶつかったところ?……だとすると、その付近にあるのは西門だな。ちょっと待っていて送って行くよ」
「あ、ありがとう」
まあ、女性の一人歩きは危ない。それに外見も可愛いが……タヤは私のだと睨むと令嬢は益々顔を青くした。それに気付かずタヤは令嬢に少し待つように言って、厨房に続くのれんをくぐり、シンギのとこに向かった。
私が空いた席に座ると、さらに令嬢は体を硬直させたが。変に声をかけて面倒な事になるのは避けよう、タヤの食べかけのシュリンサンドをかじった。
「あ、ああ! それはオレのお昼だ……ルテも欲しかったら、シンギさんにたのめよ」
「ハハ、わかった。タヤが戻ったら一緒に食べよう」
「ああ、オレが帰ってくるでそれ全部食べるなよ。ちょっと送ってくる」
「うん、気をつけて行けよ」
「わかってるよ、行ってきます」
オレはロッサお嬢様を馬車まで送りに行った。
ロッサは熊クマ食堂を出て、ホッとした。
(やばい、やばい……あのローブの男はフォルテ殿下だわ。ここにきたと言うことは、タヤはヒロイン確定ね)
でも殿下が熊クマ食堂に訪れるのは、夏季休暇に入ってからのはずなんだけど。それに既にタヤと知り合いみたい。
「タヤ、あのローブの男性と仲がいいの?」
「ん、ルテこと? ルテとは冒険者仲間なんだ」
「冒険者仲間?」
「そそ。オレさ、ギルドに登録しているんだけど、まだEランクで弱くて……少し前に知り合ったんだ。ルテに時間があるとき店に来てくれて、一緒に冒険に行くんだ」
フォルテ殿下がタヤの冒険者仲間……?
あわわ――二人がどうやって知り合ったのか知りたい。だって、あのフォルテ殿下の装いはヒロインと外で会う時の変装。ゲームでは図書館、お祭りに行ったりと、デートをするときに着る変装だから。
「そっか、タヤは冒険者なのね」
「そうだよ。女神が転移のときオレに回復魔法以外、何も持たせてくれなかったから……抑制剤と、日々の暮らしの為にお金がいる」
「……あら、そうなのね」
タヤは苦労人だ……今日は優しくしてもらったから。今度くるときにお菓子とあと、王家から毎月送られてくる使わない抑制剤を持ってこよう。
「ロッサお嬢様、あの馬車かい?」
「ロッサお嬢様? フフ、私の事はロッサでいいわ。タヤ、送ってくれてありがとう」
「いいや、ロッサと色々話せてよかった……これ帰って家族と食べてくれ」
タヤは袋に入った、温かいシュリンサンドを渡してくれた。
「え? 私、代金も払っていないわ。タヤ、いくら?」
お金を払わずに出てきてしまったことに気付き、お財布を取り出そうとすると、タヤに止められた。
「今日のはオレの奢りだ。ロッサ、また食堂に来てくれよな」
「ええ、また近々来るわ」
タヤと西門で手を振って別れた。御者の手伝いで馬車に乗り込み、ロッサはソファーに深く腰をかけた。よかった、この乙女ゲームにヒロインはいた。タヤはこの乙女ゲームのヒロインで、フォルテ殿下の運命の番。
ロッサはヒロインが男だけど、みつかってホッとした。
そしてこの世界で、前世の話をできるタヤを見つけて嬉しかった。
「え、えーっと、あの令嬢は町の中でタヤとぶつかったみたいで、怪我をしていないかってタヤが連れてきたんです」
「ふうーん、前からの知人ではないんだな」
「そうですね。今日出会ったばかりだと思います」
なのに。あんなに近くで話して笑って、仲が良さそうだ……久しぶりにタヤに会えた喜びが、嫉妬に変わり胸がムカムカする。私はシンギが止めるなか暖簾をめくり店内にいるタヤに話しかけた。
「タヤ、一緒に冒険に行こうと思って来たけど……来客か? 用があるんだったら一人で行くけど」
私の声に反応してタヤが振り向く、その顔が嬉しそうで、私の気持ちは若干だが上がった。
「ルテ? おお、久しぶりに時間が出来たの? なんだよ、一人で冒険に行くって言うな、少しだけ待ってくれ」
「わかった、どれくらい待てばいい」
のれんをくぐり抜けて、二人がいるテーブルに近付いた。タヤの逆側に座っていた令嬢は突然あらわれた私を見て、かなり驚いているようだ。だが、今の私は変身具で髪の色と、声色を変えているからバレないはずなんだが。
ジロッと見つめた途端、慌てて席を立つ令嬢。
「タ、タヤ、私、用事ができたから帰るわ」
「え、オレたちに気を遣わなくてもいいんだぞ?」
「あのね。あと一時間くらいで屋敷に、家庭教師がくるのを忘れていたの。早く戻らないと、お父様に叱られてしまうわ」
「か、家庭教師? お嬢様も大変だなぁ」
「そっ、そうなの……ごめんね」
下手な芝居だ……あきらかに私を見て動揺している。どこの令嬢だ? この様子だと名前を聞いても教えてくれはしない、年齢は私と同じくらいか。
だが、学園で見たことがない顔だな。
「いいよ。じゃ、馬車まで送るかな。どこに停まっているんだ?」
「馬車の場所? ……えっと、タヤとぶつかったところから、左に行った出口だったかしら?」
「ぶつかったところ?……だとすると、その付近にあるのは西門だな。ちょっと待っていて送って行くよ」
「あ、ありがとう」
まあ、女性の一人歩きは危ない。それに外見も可愛いが……タヤは私のだと睨むと令嬢は益々顔を青くした。それに気付かずタヤは令嬢に少し待つように言って、厨房に続くのれんをくぐり、シンギのとこに向かった。
私が空いた席に座ると、さらに令嬢は体を硬直させたが。変に声をかけて面倒な事になるのは避けよう、タヤの食べかけのシュリンサンドをかじった。
「あ、ああ! それはオレのお昼だ……ルテも欲しかったら、シンギさんにたのめよ」
「ハハ、わかった。タヤが戻ったら一緒に食べよう」
「ああ、オレが帰ってくるでそれ全部食べるなよ。ちょっと送ってくる」
「うん、気をつけて行けよ」
「わかってるよ、行ってきます」
オレはロッサお嬢様を馬車まで送りに行った。
ロッサは熊クマ食堂を出て、ホッとした。
(やばい、やばい……あのローブの男はフォルテ殿下だわ。ここにきたと言うことは、タヤはヒロイン確定ね)
でも殿下が熊クマ食堂に訪れるのは、夏季休暇に入ってからのはずなんだけど。それに既にタヤと知り合いみたい。
「タヤ、あのローブの男性と仲がいいの?」
「ん、ルテこと? ルテとは冒険者仲間なんだ」
「冒険者仲間?」
「そそ。オレさ、ギルドに登録しているんだけど、まだEランクで弱くて……少し前に知り合ったんだ。ルテに時間があるとき店に来てくれて、一緒に冒険に行くんだ」
フォルテ殿下がタヤの冒険者仲間……?
あわわ――二人がどうやって知り合ったのか知りたい。だって、あのフォルテ殿下の装いはヒロインと外で会う時の変装。ゲームでは図書館、お祭りに行ったりと、デートをするときに着る変装だから。
「そっか、タヤは冒険者なのね」
「そうだよ。女神が転移のときオレに回復魔法以外、何も持たせてくれなかったから……抑制剤と、日々の暮らしの為にお金がいる」
「……あら、そうなのね」
タヤは苦労人だ……今日は優しくしてもらったから。今度くるときにお菓子とあと、王家から毎月送られてくる使わない抑制剤を持ってこよう。
「ロッサお嬢様、あの馬車かい?」
「ロッサお嬢様? フフ、私の事はロッサでいいわ。タヤ、送ってくれてありがとう」
「いいや、ロッサと色々話せてよかった……これ帰って家族と食べてくれ」
タヤは袋に入った、温かいシュリンサンドを渡してくれた。
「え? 私、代金も払っていないわ。タヤ、いくら?」
お金を払わずに出てきてしまったことに気付き、お財布を取り出そうとすると、タヤに止められた。
「今日のはオレの奢りだ。ロッサ、また食堂に来てくれよな」
「ええ、また近々来るわ」
タヤと西門で手を振って別れた。御者の手伝いで馬車に乗り込み、ロッサはソファーに深く腰をかけた。よかった、この乙女ゲームにヒロインはいた。タヤはこの乙女ゲームのヒロインで、フォルテ殿下の運命の番。
ロッサはヒロインが男だけど、みつかってホッとした。
そしてこの世界で、前世の話をできるタヤを見つけて嬉しかった。
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