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+野白
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こうして俺は赤堀からも青山からもそれぞれの話を聞かされるという、何これ惚気なの?愚痴なの?全部聞き流すからなっていう罰ゲームみたいな役回りをさせられていた。しかももう二年経つ。そろそろくっつけよと言いたい。まあいいけど。寝たら忘れるから。
『今夜飲もう。18:30にいつもの飲み屋な!』と俺の予定も聞かず一方的なメッセージで赤堀から約束を押し付けられたのはそんな頃だった。
そして俺は優しいからなー。ちゃんと行っちゃうんだよな。
「人のこと何だと思ってんだよ。便利屋か?残業とか用事とか、あるかもしれないだろー」
「えー、そんなのあった?」
「……ここにいるんだから、わかるだろが」
「ほらっ!残業も用事もないじゃん。だったらいいでしょー」
俺が来ることを確信していたのか、あれだけ一人で飲むなと言っておいたのに一人で飲み始めていた赤堀がへらっと座っていた。
向かいの席に座り、すいませーんビールと焼鳥盛り合わせとモツ煮ください。って追加注文する。うん、腹減ってるんだよ俺。
「それでぇー、失恋しちゃって。今日はヤケ酒なの」
「は?」
いや、いきなりそんなこと言われても経緯がわからん。俺エスパーじゃないから、ちゃんと説明してくんないかね。
「だーかーらぁ、ヤケ酒」
「違う、失恋?」
何言ってんだ。青山が赤堀を離すわけないだろ。そんな話聞いてないぞ。何でもかんでも聞いてるわけじゃないが、心変わりなり冷めたなりしていたら少しくらい匂わせているはすだ。そんな話は欠片も聞いてない。
「そぅそぅ、やっぱりぃ青山には、好きな人、…いるって、聞いちゃったし」
「あー、お前その一杯だけだからな。何か食ったの?食べながら飲めよ、酔いが酷くなるだろ。ほら、焼鳥食っていいから」
目に涙の膜が張ってきて泣きそうな赤堀をとりあえず食い物で誤魔化してみる。焼鳥片手に何か考えているらしい。まあ青山のことなんだろうけど。
ああ、お疲れ様かんぱーい。カチンとジョッキを鳴らしてとりあえず労いの儀式を交わす。
「失恋するわけないんだけどな。青山何やってんの?」
「んぁ?」
「いやこっちのこと。それで?ヤケ酒してどうすんの?諦めるわけか」
「うーん、よくさぁ。失恋には新しい恋を、って、言うじゃん。だーかーらー、新しい恋を。しようかなぁ」
そこからもだもだよくわからない長い話が始まった。青山のどこがいいか、これまでどこにでかけたとか、何が嬉しかったとか、とりあえずそうかそうかよかったなーって聞き流す。たぶん同じ話聞いてるぜ?全部聞いてもしょうがないからな、酔っ払いの話は要所だけわかればいいんです。
だけど告白することはできなかったし、もう伝えることもないし、これから見るの辛いなあとか未来図の話が始まった。
「野白ぉ、おいもとおいもみたいなオレンジのやつのサラダが食べたい」
「はいはい。けっこう酔ってんな。それ一杯目だろ?」
「うん?うーん、…わかんない、」
ダメだこりゃ。『すいませーん、さつまいもとかぼちゃのサラダとビビンパと唐揚げ追加で。あとビールも』ってことで腹に何か入れさせないとな。
「それでぇ、野白ぉの方が知り合い、いっぱいじゃん?誰か紹介してー」
「本気で言ってんの?」
は?ちょっとそれは違うんじゃねーか。本人に当たって砕けたわけでもあるまいし失恋決定させるのはどうよ。しかも自棄になるのはもっとよくない。ちゃんとしろ。話せ。
「だって、だってさ……ぅい、っう」
「あーあー、泣くなって。俺が怒られるじゃんか」
「うー、…っ」
いつになく少し強めに言ったら、我慢していたのか赤堀はボロボロ泣いてしまった。しょうがないからおしぼりを渡してその顔をとりあえず晒すなと促す。
しばらく止みそうにないし、気が済むまでこういうのは放っておく方がいい。俺は声を掛けるでもなく、気分が悪くならないかだけ見ていることにした。
「ぅいっ、うー、……喉、乾いた」
「はいよ」
そして突然あれだけ泣いていた勢いは収まった。『すいませーん、烏龍茶とビールくださいっ』って、水分補給させることにする。もうお腹いっぱいだろうし、いつもの炭酸はやめとけな。烏龍茶もうまいんだぞ。
「暑い……」
それで泣いて熱くなったのか、赤堀は店だというのにシャツのボタンを外し始めた。冷たさを求めているようで壁を撫でて頬を付けて、ほにゃらと笑う。
「お前っ…こらっ!無防備にするんじゃない、ボタン留めろ」
「えー、いや」
「いやじゃねえの」
泣いて潤んだ目に酒で赤くなった肌、しかも鎖骨の下まで出したりしたらどう見られることか!酔いもあってなかなか言うことを聞かない赤堀をこのままにしておくわけにもいかず、しょうがなしにボタンを留めてやった。
どうも話を聞いていると勘違いだか行き違いだかしているような気がするんだけどな。こういうのは俺がどうこうするもんでもないし、当人同士で解決してもらおうか。じゃ、そういうことで青山呼んじゃおうっと。
スマホからコール音が聞こえ、プチッと通話に切り替わった。あー、よかった。すぐ出たわ。
「青山?うん、そう。失恋したって潰れてんぞ。迎えに来いよ――「野白、すきー」」
げっ。そんなこと言うんじゃない!しかも通話切れてるし……勘違いされてないよな?コレ、俺大丈夫か?
「悪いな、毎度」
「そう思うならさっさと言えよ」
「…わかってる」
その仏頂面で言われても感謝されている気がしない。本当に悪いと思ってんの?けっこう大変だったんだからな。俺は酔っ払いの相手を毎回毎回してんだぞ。いい加減まとまってくんないかね。
「ちゃんと話せよ」
「ああ…」
これ、貸しでいいよな。でかい恩返しを期待してやるから覚悟しとけよ。じゃあ後は任せるから連れて行ってくれ。
『ほら、そろそろ帰るぞ』って青山が声を掛けてもふにゃふにゃしている赤堀は目の前にいるのが誰だかよくわかっていないらしい。それでも手が伸びて青山に抱きついた。
「抱っこして」
うん、やべえな。
流石に青山もこりゃわかりやすく口元緩んでね?赤堀の代りに代金多めに置いて、半分寝惚け状態なのを抱きかかえながら店を出ていった。
どうなっちゃうかなー、赤堀。
ま、たぶん同意でいいよな?両想いなんだし。
ちゃんと面倒見ろよ、青山!
『今夜飲もう。18:30にいつもの飲み屋な!』と俺の予定も聞かず一方的なメッセージで赤堀から約束を押し付けられたのはそんな頃だった。
そして俺は優しいからなー。ちゃんと行っちゃうんだよな。
「人のこと何だと思ってんだよ。便利屋か?残業とか用事とか、あるかもしれないだろー」
「えー、そんなのあった?」
「……ここにいるんだから、わかるだろが」
「ほらっ!残業も用事もないじゃん。だったらいいでしょー」
俺が来ることを確信していたのか、あれだけ一人で飲むなと言っておいたのに一人で飲み始めていた赤堀がへらっと座っていた。
向かいの席に座り、すいませーんビールと焼鳥盛り合わせとモツ煮ください。って追加注文する。うん、腹減ってるんだよ俺。
「それでぇー、失恋しちゃって。今日はヤケ酒なの」
「は?」
いや、いきなりそんなこと言われても経緯がわからん。俺エスパーじゃないから、ちゃんと説明してくんないかね。
「だーかーらぁ、ヤケ酒」
「違う、失恋?」
何言ってんだ。青山が赤堀を離すわけないだろ。そんな話聞いてないぞ。何でもかんでも聞いてるわけじゃないが、心変わりなり冷めたなりしていたら少しくらい匂わせているはすだ。そんな話は欠片も聞いてない。
「そぅそぅ、やっぱりぃ青山には、好きな人、…いるって、聞いちゃったし」
「あー、お前その一杯だけだからな。何か食ったの?食べながら飲めよ、酔いが酷くなるだろ。ほら、焼鳥食っていいから」
目に涙の膜が張ってきて泣きそうな赤堀をとりあえず食い物で誤魔化してみる。焼鳥片手に何か考えているらしい。まあ青山のことなんだろうけど。
ああ、お疲れ様かんぱーい。カチンとジョッキを鳴らしてとりあえず労いの儀式を交わす。
「失恋するわけないんだけどな。青山何やってんの?」
「んぁ?」
「いやこっちのこと。それで?ヤケ酒してどうすんの?諦めるわけか」
「うーん、よくさぁ。失恋には新しい恋を、って、言うじゃん。だーかーらー、新しい恋を。しようかなぁ」
そこからもだもだよくわからない長い話が始まった。青山のどこがいいか、これまでどこにでかけたとか、何が嬉しかったとか、とりあえずそうかそうかよかったなーって聞き流す。たぶん同じ話聞いてるぜ?全部聞いてもしょうがないからな、酔っ払いの話は要所だけわかればいいんです。
だけど告白することはできなかったし、もう伝えることもないし、これから見るの辛いなあとか未来図の話が始まった。
「野白ぉ、おいもとおいもみたいなオレンジのやつのサラダが食べたい」
「はいはい。けっこう酔ってんな。それ一杯目だろ?」
「うん?うーん、…わかんない、」
ダメだこりゃ。『すいませーん、さつまいもとかぼちゃのサラダとビビンパと唐揚げ追加で。あとビールも』ってことで腹に何か入れさせないとな。
「それでぇ、野白ぉの方が知り合い、いっぱいじゃん?誰か紹介してー」
「本気で言ってんの?」
は?ちょっとそれは違うんじゃねーか。本人に当たって砕けたわけでもあるまいし失恋決定させるのはどうよ。しかも自棄になるのはもっとよくない。ちゃんとしろ。話せ。
「だって、だってさ……ぅい、っう」
「あーあー、泣くなって。俺が怒られるじゃんか」
「うー、…っ」
いつになく少し強めに言ったら、我慢していたのか赤堀はボロボロ泣いてしまった。しょうがないからおしぼりを渡してその顔をとりあえず晒すなと促す。
しばらく止みそうにないし、気が済むまでこういうのは放っておく方がいい。俺は声を掛けるでもなく、気分が悪くならないかだけ見ていることにした。
「ぅいっ、うー、……喉、乾いた」
「はいよ」
そして突然あれだけ泣いていた勢いは収まった。『すいませーん、烏龍茶とビールくださいっ』って、水分補給させることにする。もうお腹いっぱいだろうし、いつもの炭酸はやめとけな。烏龍茶もうまいんだぞ。
「暑い……」
それで泣いて熱くなったのか、赤堀は店だというのにシャツのボタンを外し始めた。冷たさを求めているようで壁を撫でて頬を付けて、ほにゃらと笑う。
「お前っ…こらっ!無防備にするんじゃない、ボタン留めろ」
「えー、いや」
「いやじゃねえの」
泣いて潤んだ目に酒で赤くなった肌、しかも鎖骨の下まで出したりしたらどう見られることか!酔いもあってなかなか言うことを聞かない赤堀をこのままにしておくわけにもいかず、しょうがなしにボタンを留めてやった。
どうも話を聞いていると勘違いだか行き違いだかしているような気がするんだけどな。こういうのは俺がどうこうするもんでもないし、当人同士で解決してもらおうか。じゃ、そういうことで青山呼んじゃおうっと。
スマホからコール音が聞こえ、プチッと通話に切り替わった。あー、よかった。すぐ出たわ。
「青山?うん、そう。失恋したって潰れてんぞ。迎えに来いよ――「野白、すきー」」
げっ。そんなこと言うんじゃない!しかも通話切れてるし……勘違いされてないよな?コレ、俺大丈夫か?
「悪いな、毎度」
「そう思うならさっさと言えよ」
「…わかってる」
その仏頂面で言われても感謝されている気がしない。本当に悪いと思ってんの?けっこう大変だったんだからな。俺は酔っ払いの相手を毎回毎回してんだぞ。いい加減まとまってくんないかね。
「ちゃんと話せよ」
「ああ…」
これ、貸しでいいよな。でかい恩返しを期待してやるから覚悟しとけよ。じゃあ後は任せるから連れて行ってくれ。
『ほら、そろそろ帰るぞ』って青山が声を掛けてもふにゃふにゃしている赤堀は目の前にいるのが誰だかよくわかっていないらしい。それでも手が伸びて青山に抱きついた。
「抱っこして」
うん、やべえな。
流石に青山もこりゃわかりやすく口元緩んでね?赤堀の代りに代金多めに置いて、半分寝惚け状態なのを抱きかかえながら店を出ていった。
どうなっちゃうかなー、赤堀。
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ちゃんと面倒見ろよ、青山!
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