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+野白
何派?
しおりを挟む好みはそれぞれだから何でもイイと思う。別に自分と違ったって、わざわざ否定しないし「あ、そうなんだ」ってくらいのものだろう。少し経ったら忘れるか、もしくはまた尋ねても差し支えない程度。
「嫌だ。譲れない」
「えー、俺だってあんまそっち食べたことないよ」
うん、どうでもいいことなんだけど。ただ、目的のものにそれぞれの好みが反映できる個包装がなくて三個パックのときはこうなるわな。どっちにしよう問題。しかもお互い譲らない。
大福食べたいな。じゃあ買って帰るか。そこの店に寄っていこう。大福ないけど柏餅ならあるね。柏餅でもいいか。ああ、こしあんだな。え、つぶあんだろ。
遡ること数分前。そういうことが起きたのですよ。
こしあん派の青山と、つぶあん派の俺。普段は大概のことはお互い譲り譲られ、まあ大人だしすんなり解決することがほとんどだ。ただ何故か今回は青山が頑なに意見を通そうとする。
譲ってやりたいが俺だって好きなもの食べたい。
「じゃんけんでもする?これじゃ決めらんないし」
「じゃんけん……」
えー、そんな大事なこと?
あんまない青山のしかめっ面が珍しくて、しかも何でそんな子供みたいなの。イケメンの人が駄々こねるって、かわいいな!
思わず、ふふって笑ってしまった。
「じゃあ、…それでもいい。うちで食べるよね?泊まっていって」
「え?遅くもないし、帰るよ」
「……じゃあ、買わない」
えー!俺の口はもう柏餅が入ってくる想定で待ってるんだけど。食べる気マンマンなのに、それって酷い。
そうなると、もうしょうがないなってこちらが折れることになってしまう。
「子供かよ。わかった、文句なしのじゃんけんで決めて青山ん家行こう」
俺が言うと、ようやく青山はしかめっ面をやめてくれた。いや何それかわいいかよ。
それで、いざ勝負ってときに後ろから聞いたことのある声が入ってきた。
「お二人さーん、お疲れ~ 何やってんの?」
「おぉ野白か、お疲れ様。柏餅買おうと思ってさ、つぶかこしか決めかねてたの」
「あー、柏餅ね。どっちに決めた?」
「じゃんけんで決めるよ」
へー、って言いながら野白が俺たちの間から手を伸ばした。それでつぶあんでもなくこしあんでもない三個パックを持ち上げた。
「これうまいよ、みそ。柏餅はみそだろ、食ってみてよ」
何それ、俺の目にはちっとも入らなかった。こんな横にあるのに気付かないってすごいな。完全アウトオブ眼中ってやつだった。
結局、お勧めされたみそにして、縋るように青山が見るから。
泊まることになってしまった。
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