恋色模様

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その後の二人

七夕の話

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 世の中ではおそらく多くの恋愛している人々が、この七夕というイベントに乗じて告白だとかプロポーズだとかそういう愛のプレゼン?語彙力の全力集結?あー、まあ、恋愛成就を願ったり。家族の健康を願ったりするわけです。

 ミーハーな俺も例に漏れず、『どうぞご自由に』と置かれていた短冊へついつい欲張って書いてみた。
 叶うか叶わないかは別として、願えばできるんじゃないかと思ってしまう勘違いは大切だ。勢いでどうにかなるときもある。
 できたらいいなーなんて無謀な欲望を晒し合いながら他人の願望を眺めるのも楽しいもんだ。タダだし。

(いっぱい書いても、まあ、いいか)

 ―――なんて、思っていたときもありました。過去の自分を葬りたくなることありますよね?



「……っ、あ、うぁあーっ……」

「ほら、まだニ回しかイってないよ?」

「もう、いい……だいじょ、ぶっ、…いらなっ…」

 背中から聞こえる声はどこか楽しげで、一方の俺はというと額をシーツへ押し付け必死に青山からの直撃を受け止めていた。

 おっかしーな。俺、日本語で書いたよな?普通に書いたよ?特にこれと限定せず、食い物でも欲しいもんでも当てはまるような書き方で。ありきたりなことを、つらつらーつらーって。
 ・美味しいものたくさん食べたい
 ・お腹いっぱいになりたい
 ・好きなものたくさんほしい
 ・いっぱい満たされたい
 ・好きなものに囲まれたい
 もう一個書こうとして、もう書ける余白がないから諦めたけど。でも普通に読める言葉で書いたはずだ。
 垂れ下がる笹の中から手が届く上の方へ結びつけた。そのとき青山が『へー』って薄っすら笑って俺の短冊を見てたから、子供っぽいとでも思ってるんだろうなーなんて思っていた。だって、旨いもん食ってるとき幸せだぞ。最高だ。俺は毎日幸せだぞ。

 それなのに『じゃ、すぐ願い事叶えようか』なんて言いながら、ひょいひょいとホテルのディナーに連れて行ってくれて、すげー幸せ!と満足してたのにだよ。
 ひょいひょいってエレベーター乗って、ひょいひょいって。ベッドの上?

 で。今ココ。
 数時間前のことを思い出してる余裕なんてものはないのに、頭の中がもう溶けておかしくなって、パッパッパッと記憶が甦った。

「もう精液出なくなっちゃったね」

「ふぁ、ぁっ……」

 何回イってるんだか何だかよくわからなくて、身体の力は入らないのに掴まれているから尻だけ突き出していた。
 抜かずに腹の奥へ注がれているから、重たいような膨れているような変な感覚がする。
 器用に挿れたままくるんっと転がされ、正面から向かい合う。向かい合う?っていうのかわからないけど、正常位でお互いの顔がよく見えた。

 ふふって青山が笑うからいつまでも元気だなって感心していると、ご子息はまだ硬度を保っていて、敏感になっている俺の内壁を突いてきた。
 ゆさゆさ擦り、どろどろのやわやわになっているところを何度も往復する。もう何も出ないはずの陰経からチョロッと残滓が申し訳程度に垂れ出た。

 それから奥へ奥へ進み、突き当りまで届いた。突き当りです。そこは突き当りなんです。それ以上は進めません。という場所です。

「むりっ、も、そこは……ぁ、ああー、ダメ、そこ……ダメ」

「ダメじゃないでしょ。入ったことあるし」

 ………開けて。ほら。
 耳元で低くわざと色っぽく、俺の官能を刺激する声音でそそのかした。

「ぃ、あっ、……んあ、っ」

 ぶわっと勝手に身体が震え、俺の身体なのに、俺がダメって言ってのに、嘘だろー!?お、ま、え。俺を裏切るのかー!!
 という感じで、最奥でちゅっちゅっとせがむ青山の先端を許してしまった。

「……っ、ぁ………っ、」

 クポリッ。
 頭の中なのか瞼の裏なのか、弾けるような気がして後はよくわからなかった。


 事後。事後です。
 記憶は飛んでない。意識が飛んだ。気絶はしていないが、何だかさっぱりよくわからない。
 ふぁーっていう状態に放り込まれた感じ。俺の感じなので世間一般とは違うかもしれません。語彙力はないもんで。

 それで、俺の日本語は通じないのか案件の検証だ。
 短冊見たよな?短冊読んだよな?
 そこの確認を青山にしたところ。
 で。今ココ。

「ああ、読み間違えたかな?」

 読み間違えた?え、それでいいの?
 読み間違えたら好き勝手していいのか。いや、気持ちよかったですよ。イヤイヤ抱かれたわけじゃないけどさ、加減。加減を覚えよう。レッスンワン。

「だって、『たくさん食べてお腹いっぱいにして好きなものたくさんほしくていっぱい満たされて囲まれたい』…俺のことでいいよね?」

「ん?…うーん?まあ、」

 言われてみれば、そうなようなそうじゃないような。あれ、いいのか?合ってる?

「でもさ。あとひとつさー、『青山大好き』って、書こうか迷って…書かなかったんだよね」

 そう正直に話せば、しばし青山が瞬きを忘れて俺をジッと見ていた。
 青山が青山のこと好きになんなかなって考えて言ってみたんだけど。
 え、どうした、瞬きのやり方忘れてしまったのか?じゃあ強制的に閉じさせてやろうと、俺は青山に向かってフーッと息をかけてやった。

 そうしたらパチパチしばたいた。あはは。

「あのね。それ、願い事じゃない」

「あ、そうか。じゃあ書……っ」

 書かなくてよかった。と言おうと思ったのに。

 ぎゅむぎゅむ抱きしめられて、言えなかった。



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