恋色模様

文字の大きさ
12 / 17
その後の二人

ハロウィンの話

 


「今日ってさ、バレンタインだったっけ?」

「十月三十一日だね。バレンタインは三ヶ月以上先」

「だよな…すごい量、青山のそれ」

「まあ……お菓子の日みたいなもんだから。断る理由もなくて」

 今日は飯でも食おうってことになり、約束した時間に現れた青山は紙袋をもっていた。それには大量のお菓子が入っていて、バレンタインのような華美で丁寧にラッピングされたものではなく、手のひらに乗るようなお菓子だったり個包装のクッキーだったり、そういうものが大量に入っていたのだ。

 イケメンで優しくて仕事もできる男の青山がモテることは知っている。本人がどう思おうと、例え俺という、こ、こ、恋人がいようと、周りには表明していないわけだからハロウィンみたいなイベントがあれば乗じて渡されるのも納得だ。

 かくいう俺もいくつかもらってはいた。まあ全員に配られたかぼちゃの形をしたクッキーだけど。
 そんな俺とは明らかに違う量の紙袋を引っ提げて現れたのだ。
 ほとんど特別な感情は含まれていない、受け取ってくれるならこれもあげるよ~的なものばかりだとは思うが、やはり青山ってモテるんだなと感心したり再認識したり何ともいえないこれヤキモチなんだろうかというもしゃもしゃした気分が燻った。たぶんその中には本気の気持ちを含めたやつだってあると思うんだ。

 HAPPYHALLOWEEN~なんて言われて渡されれば、そりゃ受け取るしかないもんな。俺も何か準備しておいて渡したらよかったのか。何となく負けた感がして悔しいような気がしなくもない。
 青山ってそんなに甘い物好きじゃないから、お菓子じゃない方がいいだろう。ここは定番の『Trick or Treat~ あははっ お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞー』って俺からキスでもしたらいいだろうか。何も持ってないから差し出せるものは俺くらいしかないんだよ。

「どうした?行くぞ」

「あ、うん。あのさ」

 頭の中でぐるぐる考えてしまった俺の足はなかなか動かなくて、訝しんだ青山が行き先を促した。うーん。やっぱキスはなしだ。ちょっと違う。
 思い付いたからには何かしたいんだよな。せめてコンビニへ寄れたら、飴でもチョコでも買えるのに。

「後でいいからちょっとコンビニ寄りたい」

「別に構わないけど。何か急ぎ?欲しいものある?」

「そうじゃないけど、見たいというか欲しいというか、必要というか。ま、気にしないでよ」

 必要なのに気にするなって言われたら気になる。としばらく食い下がられはしたものの、背中をぐいぐい押して店を目指すことにした。


 夕飯は中華にして、歩きながら目にしたコンビニへ寄ることができた。買うものを見られたくないわけでもないし、別に隠すことじゃないから一緒に店内へ入ると思ったのに、外で待ってるよって青山は来なかった。たぶん俺がもにょもにょ考えていることがわかって、一人にさせてくれたんだ。そういう気遣いができるのいいなっていつも思う。

(何にするかな…うーん)

 ミントガムなら甘くないよなと思ったりもするけど、ちょっとピンとこなかった。そういうのじゃなくて、ほら、ハロウィンだからって感じのものにしたい。ちょっと遊びゴゴロもあるような―――

「おまたせー」

「買えた?」

「うん、あった」

 俺は買えたものをいつ青山に渡せばいいのか考えた。今でもいいし別れ際でもいいし、チョコみたいに溶けるものじゃないからポケットにサッと入れてくれたらいいサイズだし。
 ま、今でいっか。買ったもの聞かれはしないが、きっと気にしてるだろうし。

「青山」

「んー?」

「ハッピーハロウィン! はい、これ」

 俺は右手の中に小箱を握りしめ、パッケージが見えないように青山の前へ差し出した。そうすると条件反射なのか、青山は受け取ろうと左手をこちらへ向けた。

「甘いもん好きじゃないし、でもこれならお菓子っぽいからいいかなーと思って」

「……これ、」

「うん、お菓子入ってそうじゃん? このスキンのパッケージ。ちょうどいいかと思って、……っえ、ちょっ、ねえっ」

 うえー。
 手首を掴まれてぐいぐい歩かされる。ちょとー!家に帰らなきゃいけないのに、どこ行くんだよっ
『悪戯のお返し、しないとな』じゃなくて。その悪い顔、何するつもりなんだよー



感想 0

あなたにおすすめの小説

酔った俺は、美味しく頂かれてました

雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……? 両片思い(?)の男子大学生達の夜。 2話完結の短編です。 長いので2話にわけました。 他サイトにも掲載しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【BL】寸劇

のらねことすていぬ
BL
偶然知り合った大人の男、伊佐島にどうしようもなく惚れてしまったフリーターの受け。泣き落としで付き合ってもらうことになったけど、彼が自分のことを好きだとは到底思えない。悩むことに疲れて別れることを決意するが、彼は他に男ができたと勘違いして……? すれ違っている二人の別れ話→ハピエンです。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。