恋色模様

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その後の二人

その後2

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 あれから二週間が経って再び土曜日となりました。ちゃんとこの間の平日は仕事してますからね。一応ここに報告をしておきます。
 これまで親友としてなら映画やショッピングという身近な場所で遊ぶことが多かった。デートがしたいと言った俺の話に合わせて、青山が準備してくれたのはドライブ&温泉宿だ。すげー。

 朝、俺が住んでいるマンション前まで青山が車で迎えに来てくれてた。車!と驚いたら免許は持っているけど車は自分のものではなく借りたとのこと。維持費もかかるし、都内はなくても困らないからだそうです。
 ちなみに俺は免許すら持っていない。高校生のときに周りがみんなして教習所へ通い始めたとき、俺も一緒に通おうとしたらお前は持つなと言われた。しかも友達全員から。どういう扱い?ハンドル握ったら人格変わるタイプだとでも思われたのか?
 ついでにたぶんお前には必要ないし困らないだろうって、口を揃えて言われたのだ。根拠なんかどこにもないのにどこから出てきたんだその確定未来。乗りたいとき困るじゃんって言ったのに、たぶん必要ない、運転してくれるお姉さんかお兄さんがいるから大丈夫だと返された。意味がわかんなかった。それで免許取得のタイミングを逃して持っていないわけだ。

 そういうわけで俺が途中で代わることができない。ほらみろ。やっぱり必要だったじゃないか。だから青山に全部任せることになってしまって、休憩を取りながら一人で運転してくれるという。できないものはできないし、ここは甘えることにした。

 寄り道しながら温泉宿がある方へ向かっているのだが、言わずもがな、運転姿の青山も大変よろしい。こう、信号で停まったとき、ふっと緩んだ目許とかドアに掛けた腕だとか。うあー、どうして色気みたいなもんがこんなにあるんだ。俺にはまったくないぞ。

「そんなに見られると運転しにくいよ」

「あ、ごめん」

「別にいいけど。着いたら俺もたくさん見るから」

 えっ、いやそれはどういう宣言……今は前見ないといけないってだけだよな。たくさん見るって何だ?俺のことそんなに見ても何も変わらないよ?毎分ごとに色が変化するわけじゃないし、顔もいたって普通の日本人ですがなにか。

「ここ寄っていこうか」

 そう言って道沿いのパーキングへ入った。ナビ任せでどこを走って来たのかさっぱりわからない。せいぜい南に向かっているんだろうなという程度だ。いつの間にか海岸線を走っていて、どうやらここから海が見えるらしい。
 海と縁のない生活をしてきたこともあって、海岸に来たことはほとんどない。小さな頃、親に連れられて海遊びをしたりどこかに泊まった記憶があるにはあるが、学生のうちに来たことはなかった。だから海を見ること自体久々になる。

「わー、すげー」

 車から下りて広がる眼下に声が出た。潮の香りだとか海風だとか、縁遠いせいか貴重な遭遇であるような気がしてならない。あれだ、赤いタワーや634mのツリーと同じ感じ。海というだけでうきうき心が騒ぐ子供気分25才です。
 残念ながら砂浜ではないので、海水に入ることも触ることもできないけれど、ちゃっぷんざっぷん波の様子を見ているだけでも楽しい。

「何か食べる?」

「ソフトクリーム!」

 青山の言葉に勢いよく食いついた。さっきチラリと見えたのぼりには『ブルーベリー』って書いてあった。まだ昼には時間があるし、見てしまうとそれが食べたくなるものだ。

「じゃあ中入ろうか」

 俺の勢いにちょっとだけ目を細めてから歩き出したから、青山の後を追うようにして店の中へ入った。どうせ俺は味覚も行動もお子様であると自覚している。いいんだ、もう開き直ってるから。
 俺のソフトクリームと自分の珈琲を注文して、受け取ったら店の外で出ることにした。さっきの海が見える手摺のところに寄り掛かり、手にしているソフトクリームを青山の方へ差し出す。

「はい、どうぞ」

 一瞬きょとんと意味がわらないような顔をして、ああって納得したようで、俺の手ごと掴まれて少し屈みながら顔を近付けた。何故か上目遣いでこっちを見ている。そうしながらてっぺんの尖ったところを伸ばした舌先で掬って、喉仏を上下させて飲み下した。唇が気になったのか舌で少し舐めていた。一連の動作がどうにも艶かしく見えてしまい、俺は目が離せなかった。

「ごちそうさま。おいしかったよ」

「あ、うん」

 掴まれていた手を解放される。ちょっとだけ溶けてしまったソフトクリームがコーンを伝って垂れてしまい指先についた。
 ああ早く食べなくちゃ、と思ったのに、俺からソフトクリームを取り上げて汚れている指先を舐められた。『甘いね』って蕩けそうな顔で言うから、俺の方が熱でやられそうになる。このイケメンめ。
 もう一度言おう。

 俺が溶かされるっ!


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