ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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1~10話

ブドウ味のブドウ【下】

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 また『何か』する気だ!
 絶体絶命のピンチに、ぐっと歯を食いしばって目を閉じる。

 終わった――――

「クリーン」

 すゎっと、清涼な風が通り抜けた。

「…………………………」

 それ以上何も起こらないことに、そーっと薄目を開く。

 ……あ、綺麗になってる……。

 やはり魔法だったのだ。
 『クリーン』を受け、あんなにベタベタだった服も、手も、口まわりも、ついでにハンカチもどきも。一度洗って乾かしたかのように、さらりと清潔な状態になっている。

 私を綺麗にしてくれた……?

 ――――いや、違う。
 ローテーブル上のゴミに向かって魔法を発動したところへ、たまたま私が居合わせただけだろう。

 再び様子を窺うより早く、家主がドサリとソファに寝そべった。

「!」

 かつてない接近に緊張が走る。
 目の前にあるソファの、見上げた座面の上に今、巨大な家主が寝そべっているのだ。

 呼吸音さえも聞こえてしまいそうな距離に、ぐっと息を詰める。
 指一本動かさず、ぴりりと全神経を張り詰めて静止していると、ほどなくして規則的な寝息が聞こえてきた。

 …………え、寝た? ブドウ泥棒を突き止める気はないのだろうか……?

 そろりとローテーブルの陰から出て、家主のいるソファを見上げる。
 ここからでは座面上の様子は見えないけれど、昨日同様に抱かれているらしい、羊のぬいぐるみのお尻が見えた。

 昨日だってそうだ。
 気配は察知していたようなのに、原因を探るでもなく。
 今日なんて、放置されたブドウの皮を見ての存在が明らかなのにも関わらず、こうして何事もなかったかのように眠っている。

 家主は、あまり侵入者に頓着していない……?
 きっと、本当にネズミが一匹入り込んだだけだと思っているのだろう。

 それならば大いに結構。願ってもないことだ。
 今のうちにドールハウスに戻ってしまおうとこそこそと立ち去ろうとした背中に、低い唸り声が届いた。

「……く…………、っ……」

 こうして近くで耳にすると、ぜぇぜぇとして本当に苦しそうなのが伝わってくる。
 耐えるような、押し殺すような。

 これは悪夢にうなされているというよりも、どこか身体の具合が悪いのではないだろうか?
 気にはなるけれど、今は自分の身の安全が第一……。

「……ぅ…………、っはぁ」

 身の安全が……。

「ぐっ…………っ」

「〰〰っ」

 ええい! 目の前で苦しんでる人を放っておくのも寝覚めが悪い!

 腹をくくって方向転換した私は、ソファの脚を目掛けて駆けだした。
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