ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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1~10話

『可愛い』は正義ですか罪ですか【中】

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「……はじめまして」

 食い入るように見つめてくる家主の目の前で、改めて挨拶をしてみる。
 手を伸ばせば高い鼻頭に触れられそうな距離。
 座った手のひらは温かく、肌の触れた部分からはやはりぬるま湯の流れ込むような心地よさを感じる。

「……かっ、かわっ――」

 かわ? 川……、皮……あっ!

 即座に居ずまいを正し、勢いよく頭を下げた。

「すみませんでしたっ! 勝手にブドウを頂戴したうえ、まで置きっぱなしにしてしまって……。あっ! ドールハウスの前にあったプレゼントも私用かと思って勝手に食べてしまいました! 重ね重ねすみません!!」

「――可愛すぎないか」

「…………へ?」

 おかしな返答に顔を上げる。

 唐突に何の話だろう。
 家主の視線を追ってくるりと自分の背後を振り返ってみても、これといって変わったものは見当たらないけれど。

「??」

 首を傾げて見つめ返せば、家主は空いた右手で口元を覆い天を仰いでしまった。

「これはだろう……!」

 大きな手のひらの隙間から、押し殺すような声がする。

 『罪』――もしや、警察のような機関に引き渡されてしまうのだろうか。
 となれば、そこからがのスタートかもしれない。
 こんなにリアルな夢がもしも悪夢に変わったなら……そんなもの、考えるだけで恐ろしい。

「あ、あのっ! まだ手をつけていないものに関しては全部お返ししますので、どうか警察は――」

 ふぅぅぅぅぅと長く息を吐き出した家主は、幾分冷静さを取り戻した様子で青ざめる私に向き直った。

「可愛すぎる」

「え?」

「いや――ここにあるものなら、なんでも食べてくれていい。それにあのプレゼントは君のために用意したものだ。何を好むかわからなかったので思いつくままに入れてしまったが、少しは喜んでもらえただろうか?」

「…………はっ、はい! すごく嬉しかったです! ありがとうございます!」

 突然始まったまともな会話に置いていかれそうになりながらも、なんとかプレゼントのお礼を伝える。

 やはりあれは私宛てだったのか! よかった!!

 安心して表情を緩める私を見つめ、家主は眩しそうに目を細めた。
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