ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁@書籍発売中

文字の大きさ
22 / 165
1~10話

『可愛い』は正義ですか罪ですか【下】

「他にも欲しいものがあれば言ってくれ。――ところで、どこか体調の優れないところはないか?」

「えっ? 体調ですか?」

「ああ。眩暈めまいや息苦しさ、馬車酔いに似た症状だとか」

「いえ……別に何もありませんけど…………」

 なんでそんなことを聞くのだろう。
 ――はっ! まさかあのプレゼントに毒が――!?

 両手でバッと口を押さえると、私の心を読んだかのように家主が補足した。

「プレゼントには何も混ざっていないから安心してほしい」

 真っ直ぐに向けられた真摯な瞳を見て、ほっと腕を下ろす。

「問題は『俺』のほうだ。すべての人間は大なり小なり魔力を保有しているものなのだが、俺の保有する魔力量はあまりにも膨大でな……。どんなに抑え込もうとも、周囲に干渉して魔力酔いを引き起こしてしまうんだ」

「へぇー、酔い……」

 魔法のある世界にも、なにかしら不便な事情はあるらしい。
 理解半分にふんふんと聞いていると、家主は確信めいて言い放った。

「君からは一切の魔力を感じないうえ、こうして俺の側でも平然としている。人のことわりから逸脱した存在――君はだな?」

「はい?」

「やはりな。あまりにも可愛すぎると思ったんだ」

 突拍子もない解釈に洩れた声を勝手に肯定と受け取った家主は、すべて合点がいったとばかりに深く頷いている。

 自分では単に小さくなっただけだと思っていたけれど、まあ『妖精』というである可能性もなきにしもあらず?
 空も飛べなければ魔法も使えない、妖精…………いや、たぶん違うな。

「俺の名はクローヴェル=ヘシュラウ=フィド=ラストア」

「クロー……え?」

 なんて?
 ちょっともう一度言ってほしい。
 いきなりのことだったので、右耳から入った文字列がほとんど左耳から零れた。

「君の名を聞いてもいいだろうか?」

「え、あっ、はい。白崎しろさき日菜ひなです。えっと、日菜ひなが名前です」

「っ、名前まで可愛いなど――ん゛ん゛っ。ヒナと呼んでも?」

「はい……別に構いませんけど」

 先ほどからちょいちょい会話に挟まってくる『可愛い』が気になる。口癖だろうか。

「ヒナ、感謝する。俺のことも好きに呼んでくれて構わない」

 そうは言われても……。

「えーと……じゃあ、『クロ』とか?」

 なんだか犬の名前のようで申し訳ないけれど、唯一覚えているのがそこだけなので一択である。

「ああ、クロでいい」

 そう言って家主、改めクロは、その険しい表情を僅かに緩めた。
感想 36

あなたにおすすめの小説

拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう

花虎
恋愛
「はぁ?嫁に逃げられたぁ!?」 世界を救った召喚聖女リナリアと彼女を守り抜いた聖騎士フィグルドは世界に祝福されて結婚した。その一年後、突然リナリアは離縁状を置いてフィグルドの元を去った。 両想いで幸せだと思っていたフィグルドは行方不明になった妻を探し出すが、再会した彼女は、自分に関する記憶を全て、失っていた。 記憶を取り戻させたいフィグルドに対して、リナリアは困惑する。 「……でも、私は貴方のことを忘れたくて忘れたのかもしれないですよ?」 「もし君が、俺のことを忘れたくて忘れたとしても……、記憶を取り戻せなくても……俺は君に心を捧げている」 再び愛する彼女と共に生きるため、記憶の試練が始まる――――。 夫のことだけ記憶を失った妻の聖女リナリア(21)×両想いだと思い込んでいた夫の聖騎士フィグルド(24)のすれ違い追いかけっこラブコメ

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる
恋愛
 シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。 ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。 そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。 国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。 そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。 彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。 そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。 隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…  この話は全てフィクションです。

前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな?

ミミリン
恋愛
ある理由でキャバ嬢として働いていた主人公ルキア。 ビジネスとして男性と接することはあっても、若い男との恋愛経験はゼロ。 そんなルキアが異世界に転生すると…。 低体温だけど、たくましい女の子の異世界奮闘物語です。 前半しばらくは主人公ルキアの過去を掘り下げるので、恋愛要素はほぼないです。 舞台が変わってから徐々に恋愛に繋がる描写が多くなる予定です。

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが

影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。 ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。 敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女 ------------------- 続以降のあらすじ。 同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。 前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。

地味に見せてる眼鏡魔道具令嬢は王子の溺愛に気付かない

asamurasaki
恋愛
一応長編、今や番外編の方が長くなりました作品『愛のない政略結婚のはずがいつからか旦那様がグイグイきてどうしていいのかわからないのですが』から派生した、ジークシルード王国の第二王子、セントバーナルと子爵令嬢、エンヴェリカ・クエスベルトの恋物語です。 スピンオフ的な作品ですが、『愛のない〜』 の本編ではヒーローがチラッと名前が出てくる程度でヒロインはまったく出てきません。 『愛のない〜』を読まなくてもこちらの作品だけでもわかる内容となっておりますが、番外編の『ジョルジュミーナの結婚』ではヒーローとヒロインがちょこっと出てきます。 そして同じく番外編の『セントバーナルの憂鬱』ではこの作品のヒーローが主役のお話です。 『愛のない〜』を読んでいらっしゃらない方はこちらをお読み頂いた後に『ジョルジュとミーナの結婚』『セントバーナルの憂鬱』を読んで頂ければ嬉しいです。 もちろん同時でも大丈夫ですが、最初こちらの短編を書く予定がありませんでしたので、ちょいネタバレ的になってますので、ネタバレは嫌だ!という方はご注意下さませ。 このお話は主にヒロインエンヴェリカ視点で進みますが、ヒーローのセントバーナル視点など他のキャラ視点も入る予定です。 表記のないものはすべてエンヴェリカ視点となります。 こちらの作品ジャンルとしては異世界恋愛となってますが、『愛の〜』ではヒロインヴァネッサや王太子妃ナターシャ、元となった乙女ゲームのヒロインメリッサは転生者でしたが、この物語のメインキャラは転生者は登場しない予定です。 この物語は魔法のある世界ですが、魔法、魔術と記載を分けておりますが、本来の意味と違い私の独自の設定とさせて頂いております。 ご了承下さいますようお願いします。 尚、只今感想欄を閉じております。 今後開けるかもしれませんが。 ですので、誤字や脱字などないよう何度も確認をしておりますが、それでも見つけてしまわれましたら申し訳ありません。 その他、ユルユルで設定ございます。 そのあたりをご理解して読んで頂けましたら大変有り難く思います。 よろしくお願い致します!

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。