ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

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 やわらかな唇が、目を覆う手の甲や、耳元を掠めていく。
 焦れたようにちゃぷちゃぷと跳ねるお湯の音さえも私をさいなんで。

 熱くて、熱くて、頭の中が煮え立ってどうにかなってしまいそうだ。

「ヒナ、ヒナ……っ」

 そんなに繰り返し呼ぶのだから本当に何か用があるのかもしれないと、指の隙間からそっとクロを窺った、その瞬間。

「くっ――――」

 目の前で。本当に真ん前で。
 赤い顔で目を細め壮絶な色気をはらんだクロが、何かに耐えるようにぎゅっと眉根を寄せて、ビクンと一度肩を弾ませた。

「はぁ……、は……」

 くったりと全身の力を抜いていくクロに『処理』が終わったのを感じ、私も目元の覆いを解く。

「はっ……、はっ……」

 緊張からか、熱にあてられたのか、私の身体も熱っぽく、走った直後のように呼吸が弾んでいた。

「ああ……ヒナ、顔が真っ赤だ。目も潤んでいるし……湯気でのぼせてしまったか?」

 色気を駄々漏れにしたまま、クロが愛おしげに目を細める。

 半ば放心状態でぼんやりと見とれていると、クロの顔が間近に迫り……ちゅ、と頬に口付けられた。

「なっ、なな……っ、何するんですか!!」

 べちんと勢いよく左頬を押さえる。
 さっきだってそうだ。涙を口付けで吸い取られた気がする!

「熟れたリンゴのような頬が美味しそうで……つい」

「『つい』で簡単にキっ、キスしちゃダメです……! そういうのは好きな人にだけしてください!」

「ああ、わかった」

 そう言ってクロは、空いた私の右頬にちゅっと口付けを落とした。

「〰〰わかってなーーーい!!!」







 その日も、クロは朝から寝室で書類の相手をしていた。

「ヒナ、ここに頼む」

「はーい」

 小振りな五徳ごとくに専用のスプーンを乗せ、封蝋シーリングワックスのペレットを数粒入れる。
 太短い円筒形の本体の石部分に触れれば、キャンドルのようにポッと上部に火がついた。

 蝋が溶けるのを待ってスプーンを火から下ろし、クロが指定した場所へと蝋を垂らす。
 その上からクロが印章をせば、一丁上がり!

 捺印された書類を処理済みの山に重ね、きっちりと角を合わせる。

「ふぅーっ」

 いい仕事した!

「ありがとう、ヒナ」

「えへへ」

 なぜこうして書類仕事を手伝っているかというと、昨日のように腹部に貼りついて魔力吸収しようとしたところ、クロにかたくなに辞退されたからである。

 一緒にいるのは利用するためではないとか、狭い空間に押し込めておくのは申し訳ないとか、こちらが訊ねる前からあれこれと理由を挙げ連ねていた。
 まあ、クロの役に立てるなら私はなんの仕事でも構わないけれど。
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