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21~30話
適切に処理しましょう【下】 ※
しおりを挟む昼食が運び込まれ、いつものように一緒に食事をとる。
「昼食を終えたら、ヒナにプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
なんだろう? 一週間程度かかると言っていたオーダーメイドの服ができるには、まだ早すぎるし……。
コンコンコンコン
昼食を終えひと息ついたのを見計らったかのように、タイミングよくノックの音が響いた。
「ヤシュームです。お届けものにあがりました」
食事を運んでくるメイドに、書類を運んでくるヤシューム、お見舞いにやってくる人々や、日に一度診察に訪れる医者。
訪問者にはすっかり慣れ、慌てることなくクロの手のひらに運ばれて枕元のクッションに隠れる。
クロの許可を得て入室したヤシュームは、なにやら布を被せられた巨大な山のような物体を乗せたワゴンを押していた。
「午後の分の書類と……、こちらはちょうど近くでメイドと出くわしたので、ついでに預かってまいりました」
「ああ、手間をかけたな」
「とんでもないことでございます」
数言やり取りして退室するヤシュームを見送ると、クロは私を抱いていそいそとワゴンに歩み寄った。
「クリーン」
「?」
クロはいつも食事に向けて『クリーン』をかけるので、もしかしたらこの布の中にも食べ物が入っているのだろうか?
「ヒナ、見てくれ。――プレゼントだ」
そう言ってクロが布を取る。
中から現れたのは、お城のような鋭角の屋根が美しい立派なドールハウスだった。
「すごーい……! 新しいドールハウスを買ったんですか!?」
「ふっ。扉を噛ってみてくれないか?」
「え??」
そっとドールハウスの前に下ろされて、クロの要求に困惑する。
目の前のドールハウスを見つめ、チラとクロを見上げれば、楽しそうにこちらを見つめている。
……まあ、『クリーン』もされているから汚くはないか。
意を決すると、薄く開いた両開き扉の縁へと噛りついた。
パリンッ
「!?」
口の中に残った『扉』の破片から、じわりと上品な甘みが広がっていく。
「これ…………飴!?」
「ああ。『お菓子の家』を作らせたんだ」
この見た目では『家』でなく『城』な気がするけれど……そんなことよりも。
「すごーい! すごいすごい! 本当に食べられるお菓子の家、作っちゃったんですか!!?」
クロの指先と握手して、興奮にぴょんぴょんと跳び跳ねる。
ガチャッ
「申し訳ありません、先ほど替えのインク瓶をお渡しするのを忘れ――――」
笑顔で固まったまま、初めて真正面からヤシュームを見た。
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