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21~30話
苦労人は突然に【上】
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バタンッ!
後ろ手に勢いよく扉を閉めたヤシュームは、忙しなく視線を往復させて私とクロを見比べたあと、ドサリとその場に崩れ落ちた。
「とうとう人形とお話しになって……!」
……えーと、これは一体どうしたものか……。
ヤシュームはひどく打ちひしがれて、今にも涙せんばかりの沈痛な様子である。
「ヤシューム」
「ええ、ええ、嫌な予感はしていたんです。急にドールハウスに添える水場を用意しろとおっしゃったり、サイズまで指定して人形の服を買ってこいとおっしゃったり、挙げ句の果てには細かく採寸したオーダーメイドの人形服を人気の婦人服店に発注に行けとおっしゃったり」
「ヤシューム」
「昨日も火急の用だとおっしゃるので、人形用個室トイレの調達に奔走したばかり……。愛らしいものがお好きなことは重々、重っ々存じておりますが、動物型のものまでに留めてくださいと! 人型の人形に手を出してはおしまいだと、申し上げたではありませんか……っ!」
……なるほど。
昨日用意してもらったトイレの件だけでなく、今までクロが贈ってくれた諸々のプレゼントはどうやら、すべてヤシュームを介して調達されたものだったらしい。
その嘆きようからも、彼がかなりの苦労人であることが窺える。
「『妹へのプレゼントに』と偽って頻繁にぬいぐるみ類を買い求める私が、周囲からどんな目で見られているかご存知ですか!? 色恋よりも妹にしか関心のない男だと、恋人になったら苦労するだろうと、ご令嬢方には遠巻きにされ……! 当の妹はその噂を聞いて、私のことを白い目で見てくるのです! それでも殿下のお力になれるのであればと私は……、私は……っ」
「俺の趣味を知っているのはおまえだけだからな。頼りにしているぞ」
「うぅ、頼りに…………」
クロの手のひらに乗せられて、床に突っ伏すヤシュームの元へと向かう。
クロはヤシュームの目の前にしゃがみ込むと、私を乗せた手のひらを差し出した。
「ヤシューム、紹介しよう。妖精のヒナだ」
「えっと、はじめまして……」
「は…………」
顔を上げたヤシュームの目が点になる。
後ろ手に勢いよく扉を閉めたヤシュームは、忙しなく視線を往復させて私とクロを見比べたあと、ドサリとその場に崩れ落ちた。
「とうとう人形とお話しになって……!」
……えーと、これは一体どうしたものか……。
ヤシュームはひどく打ちひしがれて、今にも涙せんばかりの沈痛な様子である。
「ヤシューム」
「ええ、ええ、嫌な予感はしていたんです。急にドールハウスに添える水場を用意しろとおっしゃったり、サイズまで指定して人形の服を買ってこいとおっしゃったり、挙げ句の果てには細かく採寸したオーダーメイドの人形服を人気の婦人服店に発注に行けとおっしゃったり」
「ヤシューム」
「昨日も火急の用だとおっしゃるので、人形用個室トイレの調達に奔走したばかり……。愛らしいものがお好きなことは重々、重っ々存じておりますが、動物型のものまでに留めてくださいと! 人型の人形に手を出してはおしまいだと、申し上げたではありませんか……っ!」
……なるほど。
昨日用意してもらったトイレの件だけでなく、今までクロが贈ってくれた諸々のプレゼントはどうやら、すべてヤシュームを介して調達されたものだったらしい。
その嘆きようからも、彼がかなりの苦労人であることが窺える。
「『妹へのプレゼントに』と偽って頻繁にぬいぐるみ類を買い求める私が、周囲からどんな目で見られているかご存知ですか!? 色恋よりも妹にしか関心のない男だと、恋人になったら苦労するだろうと、ご令嬢方には遠巻きにされ……! 当の妹はその噂を聞いて、私のことを白い目で見てくるのです! それでも殿下のお力になれるのであればと私は……、私は……っ」
「俺の趣味を知っているのはおまえだけだからな。頼りにしているぞ」
「うぅ、頼りに…………」
クロの手のひらに乗せられて、床に突っ伏すヤシュームの元へと向かう。
クロはヤシュームの目の前にしゃがみ込むと、私を乗せた手のひらを差し出した。
「ヤシューム、紹介しよう。妖精のヒナだ」
「えっと、はじめまして……」
「は…………」
顔を上げたヤシュームの目が点になる。
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