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31~40話
報告に行きましょう【下】
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「クロ……。今の人ってもしかして、この前話してくれた元婚約者候補の……?」
「一目見ただけでわかるのか。ヒナは慧眼だな」
クロは驚いたようにそう言って、ポケット越しにポンポンと私を撫でる。
……別に私が鋭いわけではない。
クロが親しげに話しかけるような女性なんて、話に聞いたその人しか知らなかっただけだ。
とても綺麗な人だった。
お姫様のように優雅な所作で、僅かな受け答えからも理知的な雰囲気が伝わってきた。
そんな人でも、ダメだったのだ。
それに比べて、私は…………。
一面に彫刻の施された重厚な両開き扉を左右から騎士が開くと、クロはためらうことなく室内へと足を踏み入れた。
「父上、お時間を取っていただきありがとうございます。お加減はいかがですか?」
「なに、大した変化はない。この歳にもなれば、どこかしら不調を抱えている状態のほうが『常』になるものだ。そら、そこへ」
ハスキーな低音は耳に心地よく、聞く者に安心感を与える。
ポケット布越しに伝わる動きから、クロが椅子に座ったのがわかった。
「くれぐれもご無理はなさらないでください」
「重い冠を下ろせば、身体も軽くなるとは思わないか?」
冗談めかした口調ながらも、僅かに空気が張り詰める。
「……その件に関して、ご報告があります。指輪の相手が見つかりました」
「なに?」
「こちらを」
微かな衣擦れの音と、カタッと箱を開く音。
「これは……」
そう聞こえたきり静まり返った外の様子はわからないけれど、きっと今、王様が指輪を検めているところだろう。
無色透明に姿を変えた、あの宝石の付いた指輪を。
こっそり覗き見ては失礼だろうか、しかし盗み聞きしているようなこの状況も十分まずいのでは、とポケットの中でそわそわしていると、大きな手のひらが私を迎えにきた。
「父上、紹介したい女性がいます」
「一目見ただけでわかるのか。ヒナは慧眼だな」
クロは驚いたようにそう言って、ポケット越しにポンポンと私を撫でる。
……別に私が鋭いわけではない。
クロが親しげに話しかけるような女性なんて、話に聞いたその人しか知らなかっただけだ。
とても綺麗な人だった。
お姫様のように優雅な所作で、僅かな受け答えからも理知的な雰囲気が伝わってきた。
そんな人でも、ダメだったのだ。
それに比べて、私は…………。
一面に彫刻の施された重厚な両開き扉を左右から騎士が開くと、クロはためらうことなく室内へと足を踏み入れた。
「父上、お時間を取っていただきありがとうございます。お加減はいかがですか?」
「なに、大した変化はない。この歳にもなれば、どこかしら不調を抱えている状態のほうが『常』になるものだ。そら、そこへ」
ハスキーな低音は耳に心地よく、聞く者に安心感を与える。
ポケット布越しに伝わる動きから、クロが椅子に座ったのがわかった。
「くれぐれもご無理はなさらないでください」
「重い冠を下ろせば、身体も軽くなるとは思わないか?」
冗談めかした口調ながらも、僅かに空気が張り詰める。
「……その件に関して、ご報告があります。指輪の相手が見つかりました」
「なに?」
「こちらを」
微かな衣擦れの音と、カタッと箱を開く音。
「これは……」
そう聞こえたきり静まり返った外の様子はわからないけれど、きっと今、王様が指輪を検めているところだろう。
無色透明に姿を変えた、あの宝石の付いた指輪を。
こっそり覗き見ては失礼だろうか、しかし盗み聞きしているようなこの状況も十分まずいのでは、とポケットの中でそわそわしていると、大きな手のひらが私を迎えにきた。
「父上、紹介したい女性がいます」
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