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31~40話
あわわわわわわ【上】
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「父上、紹介したい女性がいます」
「……いいだろう。連れてきてみなさい」
大きく息を吸い込んで、ふぅぅと吐き出して、震える全身にぐっと力を入れて手のひらに乗り込む。
開けた視界に飛び込んできたのは落ち着いた色調で、王様の部屋と聞いて想像していたようなきらきらと華美なものではなかった。
「紹介します。俺の想い人、妖精のヒナです」
クロは私を乗せた手のひらを、見えやすいよう胸の高さに掲げる。
目の前に広がる大きなベッドの上。
ヘッドボードにもたれて上体を起こした『王様』は、後ろへ撫でつけた茶色交じりの白髪の下で、クロそっくりのアイスブルーの目を僅かに見開いた。
「ヒナ=シロサキと申しましゅっ」
噛んだ!
妖精の件の誤解を解き忘れていたことにも気付いたけれど、紹介されてしまっては後の祭り。実は妖精じゃないのだなどと気軽に言い出せるような場ではない。
震える指先でドレスの裾を摘まみ、クロに教わった付け焼き刃の淑女の礼をとる。
なぜかクロまでぷるぷると震えているせいで非常にバランスが取りづらいけれど、顔を伏せた姿勢で耐えているとすぐに落ち着いた声がかかった。
「ヒナ嬢、顔を上げておくれ。――こんな格好ですまないね。私の名はファラゲル。クローヴェルの実父で、このラストア王国の国王をしている」
突然目の前に妖精もどきの小人が現れたというのに、王様は動じた風もない。
これが王様……!
「サイズの合う椅子の用意がなくて申し訳ないが……そこの本ではいかがかな?」
王様が視線で示した先。クロの座る椅子の隣に置かれたサイドテーブルには、ランプと眼鏡と一冊の厚い本が乗せられていた。
意図を察したクロが私をサイドテーブルに降ろし、本を手前へとずらしてくれる。
「でも……」
こんなに高そうな本を椅子代わりにお尻に敷くなんて、本当にいいのだろうか。
「どうぞ楽なように」
「し、失礼します……!」
お言葉に甘えておずおずと本の縁に腰を下ろすと、王様は優しげな眼差しで私に一つ頷き、クロへと視線を戻した。
「……いいだろう。連れてきてみなさい」
大きく息を吸い込んで、ふぅぅと吐き出して、震える全身にぐっと力を入れて手のひらに乗り込む。
開けた視界に飛び込んできたのは落ち着いた色調で、王様の部屋と聞いて想像していたようなきらきらと華美なものではなかった。
「紹介します。俺の想い人、妖精のヒナです」
クロは私を乗せた手のひらを、見えやすいよう胸の高さに掲げる。
目の前に広がる大きなベッドの上。
ヘッドボードにもたれて上体を起こした『王様』は、後ろへ撫でつけた茶色交じりの白髪の下で、クロそっくりのアイスブルーの目を僅かに見開いた。
「ヒナ=シロサキと申しましゅっ」
噛んだ!
妖精の件の誤解を解き忘れていたことにも気付いたけれど、紹介されてしまっては後の祭り。実は妖精じゃないのだなどと気軽に言い出せるような場ではない。
震える指先でドレスの裾を摘まみ、クロに教わった付け焼き刃の淑女の礼をとる。
なぜかクロまでぷるぷると震えているせいで非常にバランスが取りづらいけれど、顔を伏せた姿勢で耐えているとすぐに落ち着いた声がかかった。
「ヒナ嬢、顔を上げておくれ。――こんな格好ですまないね。私の名はファラゲル。クローヴェルの実父で、このラストア王国の国王をしている」
突然目の前に妖精もどきの小人が現れたというのに、王様は動じた風もない。
これが王様……!
「サイズの合う椅子の用意がなくて申し訳ないが……そこの本ではいかがかな?」
王様が視線で示した先。クロの座る椅子の隣に置かれたサイドテーブルには、ランプと眼鏡と一冊の厚い本が乗せられていた。
意図を察したクロが私をサイドテーブルに降ろし、本を手前へとずらしてくれる。
「でも……」
こんなに高そうな本を椅子代わりにお尻に敷くなんて、本当にいいのだろうか。
「どうぞ楽なように」
「し、失礼します……!」
お言葉に甘えておずおずと本の縁に腰を下ろすと、王様は優しげな眼差しで私に一つ頷き、クロへと視線を戻した。
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