ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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31~40話

あわわわわわわ【中】

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「クローヴェル」

 先ほどまでより数段低まった声が響く。
 途端に増した迫力。部屋全体を呑み込むような威圧感を、ビリビリと肌で感じる。

 お、怒ってる! なんで急に!? 優しそうな人だと思ったのに!
 やっぱり、こんな妖精もどきなんて紹介されたせいで――

「レディーをポケットに入れて連れ歩くとは、どういうつもりだ――?」





「……なるほどな。おまえがこのところ妙に上機嫌だったのはヒナ嬢のおかげか」

「はい」

 クロへの叱責を終えて再び穏やかな雰囲気を取り戻した王様は、これまでの経緯を聞き納得したように顎ヒゲを撫でた。

 ちらりと隣を見上げれば、相変わらず眉間にシワを寄せて怒ったような顔をしたクロが、叱責の余韻でしゅんと肩を落としている。

 上機嫌……?

「ヒナ嬢、少々この指輪を持ってみてもらえるかな?」

「? はい……」

 両手を伸ばして指輪を受け取る。

「クローヴェル、部屋の明かりを」

「はい」

 ドアの方へと向かったクロが壁に埋め込まれた赤い石に触れると、ふっと部屋の照明が落ちた。

「……あれ?」

 真っ暗な部屋の中、ほのかな明かるさを感じて手元に視線を下ろす。
 指輪に付いた透明な宝石は、奥から光が涌き出てくるかのようにふわりふわりと淡く光を発していた。

 クロもこちらへ来て指輪を見下ろす。

「これこそが指輪に者の証だ。クローヴェルに渡してみておくれ」

 言われた通りクロに指輪を手渡すと、指輪から放たれていた光が消えた。
 もう一度クロから受け取れば、やはり指輪はふんわりと光りだす。

「最後にこの光を見てから、もう何年が経つだろう……。政略結婚だった父も、すでにおまえの母を愛していた私も、指輪を使うことはなかったからな。幼いころ祖母が見せてくれた、懐かしい光だ……」

 王様が遠い記憶を辿るようにゆっくりと目を閉じると、クロは静かに明かりをつけて椅子に戻った。
 淡い発光は明るい照明に溶け消えて、今はただの透明な宝石にしか見えない。
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