ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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31~40話

あわわわわわわ【下】

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 なるほど。色の変わった指輪を発見した第三者が『運命の相手』に成りすまそうとしても、発光の有無でバレてしまうのか。

「指輪を」

 差し出された王様の手のひらに指輪を乗せようと手を伸ばした、その瞬間。
 力強い熱風が体内に吹き込むような感覚に、慌ててバッと両手を離した。

「っ申し訳ありません!!!」

 これはあれだ! 魔力を吸い込んだときの感覚!
 王様の魔力を吸い込んでしまった……!!

「……ヒナ嬢には、魔力を吸収する力があるのかな?」

「ひゃい……っ。かかか勝手に吸収してしまわないよう、クっ、クロっ、クローヴェル殿下と特訓してるところなのですが、まだ集中していないとむむ難しく……! ほっ、本当に申し訳ありません……っ!!!」

 崩れ落ちるようにテーブルに膝をつき、両手をきつく組み合わせて祈るように謝罪する。
 血の気は失せて、なのにこめかみだけはズクズクと脈打ち思考を散らす。

 試してほしいと言われたヤシュームのときとは違う。断りもなく勝手に吸収してしまったのだ。
 王様の魔力を! 私が! この手で!!

 う、打ち首獄門……!

「なに、私もクローヴェルほどではないが魔力量は多いんだ。気にするほどのことではない。むしろ全身のよどみが晴れてすっきりとした気分だよ」

「父上もこう言っている。ヒナ、大丈夫だ」

 温かな手のひらが、体温を失った背に触れる。

「っ…………」

 恐る恐る薄目を開けてうかがえば、クロによく似た穏やかな瞳が私を受け止めた。

「ヒナ嬢の体調にさわりはないかな?」

「はい……。私は何も……大丈夫です」

 ああ――やっぱりこの王様は、クロのお父さんだ。
 同じ『色』を宿す瞳に、温かな気遣いに、ひしひしと実感が込み上げる。

「しかし、そうか。ヒナ嬢はその能力でクローヴェルを助けてくれているんだね」

「た、助けるなんて、そんな……っ。私のほうが助けてもらうばっかりです」

 ぶんぶんと首を振る。
 本当に、何から何まで助けられっぱなしなのに。

「ふむ……。クローヴェル、私とのはどうなっている」

「ヒナには想いを伝え、振り向いてもらえるよう努めているところです」

「世継ぎについては」

「父上から課せられたは『結婚相手を見つけること』だけだったはずです。世継ぎなどご心配なさらずとも、俺が即位して二十年も経つころにはネラウェルが立派に成長しているでしょう」

「周囲に操られない程度には……か」

「助力は惜しまないつもりです」

 王様は僅かに浮かんだ自嘲的な笑みを消し、心の底まで貫くような犀利さいりな眼差しでクロを射た。

「決意は固いのか」

「光なき未来など闇も同じこと」

「――そうか」
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