112 / 165
31~40話
『ちっちゃい』ということ【中】
しおりを挟む
「ヒナ、体調は変わりないか?」
「ちょっと頭痛がするくらいで、他はなんともありませんよ」
「そうか」
私を抱きしめた手の親指の腹で、すりすりと頭を撫でられる。
これといった大きな症状がないせいか、今一つ命の危機に瀕しているという実感が湧いてこない。
「何か異変を感じたら、些細なことでもすぐに教えてくれ」
「はい」
側頭部を撫でていたはずの親指は、いつの間にかむにむにと頬をもてあそびだした。
「それにしても、どうして私はちっちゃくなったんでしょう? 運命の相手を導くにしたって、同じ大きさじゃないと困るはずなのに」
「ふむ……。考えられるとすれば、界を繋ぐ際に歪みが生じ、繋がれた『穴』の出口側だけが狭くなっていたんじゃないだろうか」
クロが、右手の親指と人差し指で小さな輪を作ってみせる。
「たとえばこちらに通ずる出口がこのくらいの大きさだったとして……小さなペンダントトップは、問題なくここを通過する。しかし入口から入ったヒナの身体はそのままでは出口を通過できず、出口の大きさに合わせて実体を縮められた」
「出口に合わせて……」
「だとすれば、小さなペンダントトップと実体を持たない魂だけが元の形を保っていたことにも説明がつく」
部屋着まで一緒に縮んだのは、私という『芯』が入っていたせいで出口を通れなかったからか。
お城の結界で小さな状態が解除されないのは、私を小さくした力が『魔法』ではない何かだから。
そう考えると、いろいろな点が腑に落ちる。
もしも穴が正常に繋がれて、はじめから普通の大きさだったなら……今頃なんの悩みもなく、クロと過ごせていたのだろうか。
命の危機もなく、愛情を疑うこともなく。
少し考えて首を振る。
普通の人間としてクロに出逢っていたなら、「可愛い」と言ってもらえることさえなかっただろう。側に置いてもらえることも、こうして一緒の時間を過ごすことも、惹かれあうこともなかった。
――それならば、この姿でよかった。
クロに可愛いと、好きだと思ってもらえる姿でいられて。
「『魂と器』の話は不安ですけど……私、ここに来たのがちっちゃな姿でよかったです」
「俺は大きく戻ったヒナを見るのも楽しみだ」
クロの言葉に、私は曖昧な笑みを浮かべた。
「ちょっと頭痛がするくらいで、他はなんともありませんよ」
「そうか」
私を抱きしめた手の親指の腹で、すりすりと頭を撫でられる。
これといった大きな症状がないせいか、今一つ命の危機に瀕しているという実感が湧いてこない。
「何か異変を感じたら、些細なことでもすぐに教えてくれ」
「はい」
側頭部を撫でていたはずの親指は、いつの間にかむにむにと頬をもてあそびだした。
「それにしても、どうして私はちっちゃくなったんでしょう? 運命の相手を導くにしたって、同じ大きさじゃないと困るはずなのに」
「ふむ……。考えられるとすれば、界を繋ぐ際に歪みが生じ、繋がれた『穴』の出口側だけが狭くなっていたんじゃないだろうか」
クロが、右手の親指と人差し指で小さな輪を作ってみせる。
「たとえばこちらに通ずる出口がこのくらいの大きさだったとして……小さなペンダントトップは、問題なくここを通過する。しかし入口から入ったヒナの身体はそのままでは出口を通過できず、出口の大きさに合わせて実体を縮められた」
「出口に合わせて……」
「だとすれば、小さなペンダントトップと実体を持たない魂だけが元の形を保っていたことにも説明がつく」
部屋着まで一緒に縮んだのは、私という『芯』が入っていたせいで出口を通れなかったからか。
お城の結界で小さな状態が解除されないのは、私を小さくした力が『魔法』ではない何かだから。
そう考えると、いろいろな点が腑に落ちる。
もしも穴が正常に繋がれて、はじめから普通の大きさだったなら……今頃なんの悩みもなく、クロと過ごせていたのだろうか。
命の危機もなく、愛情を疑うこともなく。
少し考えて首を振る。
普通の人間としてクロに出逢っていたなら、「可愛い」と言ってもらえることさえなかっただろう。側に置いてもらえることも、こうして一緒の時間を過ごすことも、惹かれあうこともなかった。
――それならば、この姿でよかった。
クロに可愛いと、好きだと思ってもらえる姿でいられて。
「『魂と器』の話は不安ですけど……私、ここに来たのがちっちゃな姿でよかったです」
「俺は大きく戻ったヒナを見るのも楽しみだ」
クロの言葉に、私は曖昧な笑みを浮かべた。
43
あなたにおすすめの小説
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる