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31~40話
『ちっちゃい』ということ【下】
しおりを挟む夕食後、お風呂に入るにあたって一悶着。
「待ってください! 一緒にお風呂に入るのはちょっとまずいんじゃないでしょうか!?」
「いつも入っているだろう」
「で、でもっ、交際間もない男女がそんないきなり……」
「? 付き合ってもいない男女で入るより、よっぽど健全じゃないか?」
「あれっ? そう言われれば……」
となると、今まで一緒に入っていたことのほうが不健全ということに……? おやおや??
私が思考の迷宮に入りかけている間にも、自身の脱衣を終えたクロがいそいそと私の服を脱がせにかかる。
シュミーズとワンピースをひとまとめに持ち上げてスポンと脱がされ、止める間もなく紐を解かれた紐パンが、ハラリと足元に落ちた。
「〰〰!」
色気もへったくれもなく、あっという間にすっぽんぽんである。
「さあ、入ろう」
上機嫌なクロの手のひらに乗って浴槽を目指しながら、収まりのつかない乙女心を持て余して口を尖らせる。
「下着まで脱がせるなんて、クロは乙女心をわかってなさすぎです!」
「それはすまなかった」
楽しそうな声色には、申し訳なさなんてこれっぽちも窺えやしない。
「んもうっ! 目が悪いからまだいいようなものの!」
「目が悪い? なんの話だ?」
「だってクロ、視力がよくないですよね?」
「? 見えづらいと感じたことはないが」
「えっ……?」
だって、クロはよく見えていないから私を可愛い可愛いと言っていて……。
よく見えていないから裸で一緒にお風呂に入るのもセーフだったはずで……。
「眠れない日が続けば視界が霞むこともあるが、最近はヒナのおかげでよく眠れている。今だって、ヒナのまつ毛の本数を数えられる程度にははっきりと見えているぞ?」
「!!!!?」
そんな……、そんなまさか……!
はくはくと口を開け閉めする。
「いっ、今まで全部見えてたなんて、そんなの……っ! もうお嫁に行けないーーっ!!」
「俺が貰うから心配無用だ」
顔を覆って丸まった私の頭頂部に、ちゅっと口づけが落ちた。
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