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31~40話
『ちっちゃい』ということ【上】
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「れ……恋愛感情で、クロが好き……です」
「ヒナ――」
包み込むように抱きしめられて顔が近づく。
意図に気付いてぎゅっと目をつぶれば、唇にやわらかな熱が触れた。
吐息が頬をくすぐる。
自分の鼓動を全身で感じる。
触れた唇から流れ込む魔力は、いつもよりも熱い気がして。
引き結んだ唇を開くこともできずに鼻から息を吸い込めば、清涼感あるクロの香りに満たされてくらくらと熱が回る。
のぼせあがる寸前で、ようやく唇が解放された。
「――っぷは」
「二回目だな」
「? ……あーっ! やっぱりあのときのって、わざとだったんですね!?」
偶然掠めてしまっただけだと思っていた唇の接触が、ちゃっかり一回目としてカウントされているではないか。
「さあな?」
「ファーストキスだったのに!」
「俺もだ」
「!!」
いつになく嬉しそうなクロが、くつくつと喉の奥で笑いながら口づける。
真っ赤に染まった頬に、耳に、額に、――再び唇に。
「ヒナ、愛している。界を越え、俺の元に来てくれてありがとう」
「……本物の『妖精』じゃなくて、ガッカリしてませんか?」
「まさか。ヒナが妖精であろうと人間であろうと、たとえ悪魔であったとしても愛に変わりはない。が――、同じ人間であるならば、こんなに嬉しいことはない」
クロの言葉は嬉しいのに。とても嬉しいはずなのに、素直に喜ぶことができない。
実際に普通の人間サイズになった私を見たら、クロはどう思うだろう。『小さくて可愛い』フィルターが外れて、幻想から覚める可能性は十二分にあるのだ。
「もし、元の大きさに戻った私を見てもまだ、その……肉欲込みの『好き』だったら……そのときは、もう一度言ってくれますか?」
「ああ、何度だって愛を伝えよう」
クロは指先で私の右手をすくい取ると、誓いのように手の甲に口づけを落とした。
これでもしもクロが何も言ってこなかったときには、ちゃーんとその意味を察して自分から身を引こう。
それでも側にはいたいから、このお城で雑用か何かさせてもらえるといいのだけれど……。
「ヒナ――」
包み込むように抱きしめられて顔が近づく。
意図に気付いてぎゅっと目をつぶれば、唇にやわらかな熱が触れた。
吐息が頬をくすぐる。
自分の鼓動を全身で感じる。
触れた唇から流れ込む魔力は、いつもよりも熱い気がして。
引き結んだ唇を開くこともできずに鼻から息を吸い込めば、清涼感あるクロの香りに満たされてくらくらと熱が回る。
のぼせあがる寸前で、ようやく唇が解放された。
「――っぷは」
「二回目だな」
「? ……あーっ! やっぱりあのときのって、わざとだったんですね!?」
偶然掠めてしまっただけだと思っていた唇の接触が、ちゃっかり一回目としてカウントされているではないか。
「さあな?」
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「俺もだ」
「!!」
いつになく嬉しそうなクロが、くつくつと喉の奥で笑いながら口づける。
真っ赤に染まった頬に、耳に、額に、――再び唇に。
「ヒナ、愛している。界を越え、俺の元に来てくれてありがとう」
「……本物の『妖精』じゃなくて、ガッカリしてませんか?」
「まさか。ヒナが妖精であろうと人間であろうと、たとえ悪魔であったとしても愛に変わりはない。が――、同じ人間であるならば、こんなに嬉しいことはない」
クロの言葉は嬉しいのに。とても嬉しいはずなのに、素直に喜ぶことができない。
実際に普通の人間サイズになった私を見たら、クロはどう思うだろう。『小さくて可愛い』フィルターが外れて、幻想から覚める可能性は十二分にあるのだ。
「もし、元の大きさに戻った私を見てもまだ、その……肉欲込みの『好き』だったら……そのときは、もう一度言ってくれますか?」
「ああ、何度だって愛を伝えよう」
クロは指先で私の右手をすくい取ると、誓いのように手の甲に口づけを落とした。
これでもしもクロが何も言ってこなかったときには、ちゃーんとその意味を察して自分から身を引こう。
それでも側にはいたいから、このお城で雑用か何かさせてもらえるといいのだけれど……。
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