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51~最終話
差し伸べられた手《クロ視点》【中】
しおりを挟む俺の即位の条件については誰もが知るところである。
戴冠式の日程が決まったとあれば、婚約披露を明言せずとも自ずと『結婚相手が見つかった』ことが知れるのだ。
敵の出方を窺うため、最も信頼できる人物に講師を依頼し、ヒナの存在は戴冠式当日まで極力秘匿することにした。
――――というのに。
ヒナが元の大きさに戻って三日目。
一人で食事すると言い出したヒナを説得して膝の上に置く了承を取りつけ、ヒナの席に配膳されていた料理を俺の席へ運ぼうとして、それに気付いた。
肉料理の皿の上、ソースの紅に溶け込むように散らされた、特徴的なハート型の花弁。
一片で熊をも殺す猛毒を持つ、コカリスの花だ。
視界が真っ赤に燃える。こめかみが鈍く脈打ち、一転思考は恐ろしいほどクリアになっていく。
まったく、耳の早さに反吐が出る。
これは宣戦布告だ。
王族の扱う『クリーン』の魔法は、一般のものよりも多く魔力を消費することで独自に浄化作用を強め、『解毒』の効果を持たせてある。
毒味係もいるにはいるが、魔力干渉が加わっては体調の変化がわからないため同席させておらず、毒味後に手が加えられる可能性もゼロではない。また、毒味をするのは王族である俺の料理だけだ。
そのため無味無臭の毒であれば、食前に『クリーン』で二人分を解毒したのち気付かず口にしていた可能性が高い。
それをあえて目に見える形で寄越したのだ。
よりにもよって、なんの罪もないヒナを狙って。
ワインを零し、新しいものを用意すると言って料理を下げさせる。
料理の解析と、関わった者すべてを取り調べるようにと密かに指示を出しながら。
ヒナはもったいないと嘆いていたけれど、わざわざ真実を知らせて不安を煽る必要はない。
この胸の内に煮えたぎる憤りを晒すこともない。
ヒナがそれと気付く前に、すべての危機を排除すればいいだけの話だ。
俺の隣で憂いなく、笑っていてほしいから。
寝る前の特訓は継続中である。
俺以外に触れる必要などないのだから制御は無用だと思うのだけれど、ヒナは意欲的に取り組んでいる。
細い眉を寄せて真剣な顔をしているヒナもまた堪らなく愛らしい。
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