緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#4

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 神社のある、山の麓に近づくにつれ、民家は少なくなり、周りには、田んぼや、畑ばかり…。学生の頃は、当然、都会の暮らしに憧れた時もあった。だが、最近は、この田舎らしい、風景も、嫌いではなくなった。
 「生憎の空模様ですね…。」
 ルームミラー越しに、私に目配せしていた、大谷が、何かを察したのか、そう、声を掛けてきた。
 「そうね…。」
 朝から降っていた雨は、今は止んでいる物の、いつ降り始めるか、分からない、どんよりとした、灰色の雲が、空一面を、覆っている。
 「こんな天気の日に、喜ぶのは、びっきか、農家の人達くらいだろうな。」
 相変わらず、スマホから目を離さないでいる、寺井さんも、便乗してきた。
 「じゃぁ、私は“びっき”ですね。」
 
 神社に、到着したのは、役場を出発してから、40分後だった。近くの集落からは、数百メートル離れた位置の、木々で覆われた場所に、その神社はある。
 私の曽祖父が生まれるよりも、もっと前からある、神社なのだが、真新しい見た目をしている。なんでも、数年前、瓦や床材の張替え、塗料の塗替えを、行ったと、聞いていた。
 鳥居をくぐり、一度本堂を、お参りし、私たち三人は、境内の脇にある、社務所らしきところに、向かった。
 普段から、人気のない神社だというのに、豪勢にも、お守りやお札、御朱印まで、販売している。逆を言えば、ここまでグッズを、並べ、販売しているのだから、少なくとも、誰かは居る筈だ…。
 とりあえず、窓口のところにあった、呼び鈴を鳴らした。
 だが、社務所の中からは人っ子一人の、気配すら感じない…。
 「ごめん下さい!ピーチテレビの者です!森の上にある、例の洋館について、伺いたいのですが!」
 寺井さんが、叫ぶように、訊ねた。それでも、誰も、出てこない…。
 「留守…なんじゃないですかね…。」
 「かもしれないわね…。ん?」
 私は、社務所の窓口の、端の方に、小さな賽銭箱の様なものを、見つけた。
 その箱の、側面には、
 ・御守各種六百円
 ・御朱印五百円
 ・厄除鈴三百円
 ・おみくじ三百円……
 と、事細かく、それぞれの、グッズの値段が書かれていた…。

 「もしかして、無人販売…。」
 不用心な…。と一瞬言いかけたが、ここは、神社の境内。盗みを働く輩こそ、罰当たりだ…。それに、この神社に、観光客など、殆ど来ない。来るとしたら、御朱印集めをしている、物好き程度だ…。だから、“盗まれる”という、概念が、この場所には、存在しない。
 「御朱印、買っていこうかな…。」
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