緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#6

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 「恋愛成就。」
 そう呟くように、答えると、大谷が、慌てた様に吹き出した。それに釣られた様に、寺井さんもゲラゲラと笑い出した。
 「ちょっと、陣内さん本気で言ってます?」
 「冗談に決まっているじゃない…。ただの、仕事開運よ。暫く仕事が恋人で居たいから、私に恋愛の『れ』の字も興味ないから…。寺井さんは、笑いすぎです。」
 寺井さんが、「すまんすまん」と笑いながら答えた。大谷は、何故かホッとした表情を浮かべている。
 正直、恋愛に興味がない訳では無い。寧ろ恋人が欲しいと、思わない日なんて、殆どない…。というのも、周りの目があるからだ…。ローカルのテレビ局とはいえ、仮にも、女子アナ…。私を付け回す、物好きなパパラッチも居るらしく、ほとぼりが冷めるまで、独り身で居るつもりだ…。

 到着した場所は、一軒家の前だった。田舎ならではの、大きめの敷地に、これまた大きな木造建築の屋敷と、蔵の様な建物。周りは、植物でできた垣根で覆われており、時折、椿や松の木などが、顔を覗かせている。
 「ごめん下さい。先程お電話させて頂いた、ピーチテレビの者です。お話聞かせて下さい。」
 大谷が名刺を、インターホンのカメラに向かって、見せた。
 『今行きます。少々、そこで、お待ちを。』
 インターホン越しから、物腰の柔らかそうな、声が聞こえた。
 大谷が先程言っていたように、イメージが、少し違う。
 「やっぱり、優しそうな方ですね…。」
 「そうね…。私のイメージとは、大違い。」
 「世間は、食わず嫌いな奴が多いんだよ。聞いた断片的な話を、誇張したがるのが、人間だ。その所為で、噂が独り歩きをしだす。
 直接会ったこともない人に、固定概念なんざある方が、可笑しいのさ。お前らも、報道関係で働く人間なら、それくらい覚えて置け。
 『噂には敏感になれ。ただ、それを真実にするな』だ。」
 寺井さんが、真剣な顔で、真剣な声色で、そう言った。
 「…誰かの請け売りですか?」
 「…俺が考えた…。」
 彼の言っていることは、至って真面だ。ただ、どうも寺井さんの言葉ではない気がしてならない…。というのも、何処か、その言葉に、執念すら感じる感情が、入り混じっている様に、聞こえたからだ。私と大谷だけではなく、自分にも言い聞かせる様な、そんな感じがする…。
 「お待たせして、申し訳ない。」
 背後から、インターホン越しに聞こえた声と、同じ声が、聞こえ、私たち三人は、振り返った。
 そこに居たのは、作務衣を来た、白髪と白い髭を蓄えた、お爺さんだった。
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