緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#40

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 それから1か月が過ぎた。結局、あの時修められていた映像は、私たちだけの秘密とし、“機材トラブルとして、美味く週路良くできていなかった”と言い訳し、例の企画はお蔵入りした。何故かプロデューサーは何も言わず、“残念だったな”とだけ言い、他のチームに取材させていた、キャンプ特集に切り得られた。
 更にそれ以来、プロデューサーは過激な取材や心霊特集などを企画することはなくなり、例年通り万人受けする様な企画を採用するようになった。
 局内では、色々な噂が流れたが、視聴率も維持している為、次第にそんな話はなくなった。
 私は、例の館までやってきた。あの日以来、ここに来るのは初めてだが、不思議と恐怖心は無かった。
 あの時とは違い、雨も降っていおらず、眩しい程の日差しが朝から大地を照らしていた為、日が暮れ始めたこの時間帯でも、辺りは熱気に包まれていた。
 だが、館に近づくにつれ、空気はガラリと変わり、少し肌寒くなってきた…。特別標高が高い訳でも、木々が生い茂り、日陰になっている訳では無い。あの館の周りだけ、そんな空気が漂っている…。その理由が館の前に着くと分かった。
 手首に枷を付けた少女が、館の入り口の前で、鉄板を使い、何かを焼いていた。
 「お久しぶりです。」
 『…おぉ。あの時の…。食べて良くかい?』
 ナツミさんは、そう微笑み、鉄板の上に載っていた肉の様なものを差し出してきた。
 「それ、何のお肉ですか?」
 『ん?さっきそこを通りかかったカップル…というのは冗談で、只の牛肉だよ。さっき、主様がお供えしてくれたんだ。腐る前に食べてしまおうと思ってな。』
 私が嫌そうな顔をしたのが分かったのか、冗談話を早めに切り上げてくれた。
 どうやら、大谷はあの日以降、ちょくちょく、ここに足を運んでいるらしい。
 「お酒買ってきたんですけど…。飲めます?」
 私は持って来ていたスーパー袋から缶ビールを取り出し彼女に差し出した。
 『飲めるさ。酔わないがな…。』
 彼女は、それを受け取った。
 「良かった。」
 私が近くにあった、大きめの石に腰を下ろし、缶ビールのタブに指を掛けた瞬間。
 『待って。ビールは冷たい方が良いだろ。』 
 そう言って、右手から白い炎を出した。その炎を私の持っていた缶ビールに充てると、みるみるうちに、冷えて行くのが分かった。
 「…。」
 『私は炎以外にも、熱も操れる。当然冷やすこともできる。』
 おそらく、本来、こんな使い方ではないのだろうが…。
 『まったく、能力の無駄遣いね…。そんな事してたら、また力を失うわよ。』
 そう言いながらもう一人のナツミさんがあらわれた。
 『…寧ろ無くなってくれたほうが有難いかもな…。』
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