(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・

青空一夏

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マイケルの妹を見つけた(アレクサンダーside)

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 私が勇者になったのは16歳の時だった。突出した魔力が使えて魔物退治ができる人間は7年ごとに現れるという。
魔物を倒すには魔物の弱点と本質を見極めなければならない。大物の魔物は化けることも上手だからだ。

 小さく弱き姿のふりをして実は強いもの。大きく強い姿を装いながらも実はただの小者の下位の魔物だったりすることも多い。そんな戦いを7年も続けていると人間の本質も見えてくるようになった。直感が働くと言った方が良いかも知れないが。


 務めを果たして親友のマイケルと故郷に帰ってきた時、大通りには私達を歓迎する人々が溢れていた。マイケルは道を逸れて、実家に帰ったが両親は亡くなっていたと言う。妹はというと、随分、格下の貴族に借金を背負って嫁いだという。マイケルの歳の離れた妹を思うと胸が痛い。

 偶然、通りで歓迎の声をあげる人々の中から、マイケルの妹だという女性が現れた時には驚いた。マイケルはその女性に声をかけたが反応が妙だった。12年ぶりに会うのだ。兄が家出をした時が、いくら5歳の頃で覚えていないとはいえ、実の兄に会えてあのような迷惑そうな表情を浮かべるだろうか? 借金を抱えて嫁がなければならなかったとすれば、身内が一人もいない心許なささに寂しい思いをしていたはずだろうに。

 それに、あの娘は全くマイケルに似ていない。マイケルから聞いていたマイケルの母上の容貌ともかけ離れている。金髪と青い目だけが合っているだけだ。

 私の直感が『あの女はマイケルの妹ではない』と告げていた。とすれば、本当の妹はどこだ? 私はこのレイラ準男爵の母という婦人も観察した。愛想良く振る舞っていたが、どこか違和感がある。そして、この婦人から放たれるオーラにはドロッとしたものを感じた。

 もちろん、あくまで、直感で証明するものはなにもない。ならば、確かめるために懐に飛び込むしかあるまい。
騙されたふりをしてみようと思った。だから、私はこの女を庇った。

「マイケル。5歳の頃から会ってないのなら、イメージが違うのも当たり前さ。やぁ、貴女がグレイスかい? 私が勇者のアレクサンダーだ。それで、これが、君の子供か? さぁ、抱っこしてあげよう」

 私は、満面の笑みを浮かべながら、赤子を抱いた。そして、その女の顔を見て確信した。その女は私の言葉に、薄く狡猾な微笑を一瞬だけ浮かべたからだ。この表情は、よく見たことがあるものだ。金を騙し取ろうとする者が成功した時に、ちょうどこんな表情を浮かべるのだ。人のものを奪おうとする者の独特の表情だった。

「マイケル。せっかくだから、グレイスさんとこのレイラ準男爵家の皆さんも連れて、王様の謁見に行ったらどうかな? 君は有名な冒険者になったから、カリブ伯爵家を復興させることができる。その場に妹夫婦がいれば、妹夫婦も爵位は一つあがるかもしれない。王様は、こういうときには気前が良いさ」

「まぁーー。本当ですか? それならば、同行させてください。私どもの屋敷はすぐそこですので、一緒に来て頂けませんか? 私達はドレスを着替え、息子も呼びますから」

 レイラ準男爵の母親は媚びた笑顔で私達に提案してきた。そうさ、これを待っていたんだ! この女達の屋敷には必ず本物のグレイスさんがいるに違いない。

 10分ほど歩くと、準男爵家にしては大きめな屋敷に着いた。羽振りはそれほど悪くはなさそうだった。屋敷に中に入ると庭先で掃除をしている女がいた。スカーフを頭に巻き、痩せ細った女だった。レイラ準男爵の母親がその女を叩いて大きな声を張り上げた。

「お前のようなみっともない雑用女がいると、レイラ準男爵家の恥だよ! さっさと、部屋に入って明日まで出て来るんじゃないよっ!」

 女は俯いたまま去って行った。私には、その女の横顔だけがちらりと見えた。その顔は、痩せ細っていたけれど、マイケルから聞いていたマイケルの母親の特徴に似ていたのだった。

 見つけた! あの子だ!
  

*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:


 レイラ準男爵家の者達が着飾り、マイケルと馬車で王宮に行くのを私は見送っていた。

「なんで、お前も一緒に来ないんだよ?」

尋ねるマイケルに私はにやりと笑って言ったのだった。

「大好きな女性に会ってから、ゆっくり登城すると王様に伝えてくれ」 
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