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レイラ準男爵家の者を懲らしめたい勇者様
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私はお姑様から殴られて、慌てて雑用女の部屋に駆け込んだ。最近は、なにをしても機嫌が悪いとすぐに殴られた。こんな生活が続くのなら死んでしまいたい・・・・・・お兄様さえ生きていたら、こんなことにはならなかったのかしら?
私は、粗末な古いシミだらけの布団にくるまって泣いていた。暖炉もなく、火の気がない狭い部屋は凍えるほど寒かった。
もの音が、扉のあたりでして先ほど見かけた男性が入ってきた。
「貴女が、グレイス・カリブ伯爵令嬢だろう? 貴女の兄は生きているよ。さっき、見たよね? もう一人のがっしりした熊のような男がいたろう? あれがマイケル・カリブだ。さぁ、ここから出て私とおいで」
その男性は、プラチナブロンドの髪で黄金に煌めく瞳を私に向けた。レイラ準男爵家の使用人達はその男性を尊敬の眼差しで見つめていた。
「私は勇者のアレクサンダーだ。わかっているね? 私がこの娘を連れ出したことは内緒だ。口を滑らした者には厳しい罰を与えよう。黙っていれば、いずれお前達を召し抱えに来る。お前達は英雄の使用人になれる。恩恵はここの数百倍だろう」
アレクサンダー様は、そう言うと私の手を引いて大通りまでゆっくりと歩いた。
「今日は、寒いけれどこれから春がくる。グライスさんの冬はもう今日でおしまいだ。さぁ、これから、元の貴女に戻ろうね」
優しく私に話しかけるアレクサンダー様に、私は思わず頬を染めた。アレクサンダー様は私を町一番のドレスをあつらえる仕立屋に連れて行き、そのオーナに声をかける。
「この女性に合うドレスを20着。それと、隣の美容院にも連れて行ってほしい。本来の色に、髪を染め直してほしい。とても、綺麗な金髪に。靴も宝石も見立ててくれないか? 金なら充分ある。私はアレクサンダー。知っているな?」
「はい。もちろんでございます。英雄の名前を知らないわけがありません。勇者様の仰せのままに。支払いは結構です。ですが、勇者様ご用達のお店として看板をかけさせてください」
そんな会話を私は黙って聞いていた。私は、どうなるのだろう?兄はなぜ、レイラ準男爵家の者と出かけたの?アレクサンダー様のお考えがわからなかった。
「さぁ、グレイスさん。貴女は、ここで好きなドレスを仕立てて貰って、美容院では髪を元通りにしておいで。その間に私は登城し、王様からご褒美に屋敷と使用人を揃えてもらう。おそらく、爵位も頂けるはずだから・・・・・・貴女はそこでしばらく私と暮らそう。貴女を虐げた者達を、少し懲らしめたいと私は思っている」
そう言いながら、アレクサンダー様は、悪戯っぽい笑顔を私に向けた。
「あ、貴女の兄上には、しばらく騙されてもらおうね! これは私と貴女だけの秘密だよ」
私の耳元でそっと囁いたのだった。
私は、粗末な古いシミだらけの布団にくるまって泣いていた。暖炉もなく、火の気がない狭い部屋は凍えるほど寒かった。
もの音が、扉のあたりでして先ほど見かけた男性が入ってきた。
「貴女が、グレイス・カリブ伯爵令嬢だろう? 貴女の兄は生きているよ。さっき、見たよね? もう一人のがっしりした熊のような男がいたろう? あれがマイケル・カリブだ。さぁ、ここから出て私とおいで」
その男性は、プラチナブロンドの髪で黄金に煌めく瞳を私に向けた。レイラ準男爵家の使用人達はその男性を尊敬の眼差しで見つめていた。
「私は勇者のアレクサンダーだ。わかっているね? 私がこの娘を連れ出したことは内緒だ。口を滑らした者には厳しい罰を与えよう。黙っていれば、いずれお前達を召し抱えに来る。お前達は英雄の使用人になれる。恩恵はここの数百倍だろう」
アレクサンダー様は、そう言うと私の手を引いて大通りまでゆっくりと歩いた。
「今日は、寒いけれどこれから春がくる。グライスさんの冬はもう今日でおしまいだ。さぁ、これから、元の貴女に戻ろうね」
優しく私に話しかけるアレクサンダー様に、私は思わず頬を染めた。アレクサンダー様は私を町一番のドレスをあつらえる仕立屋に連れて行き、そのオーナに声をかける。
「この女性に合うドレスを20着。それと、隣の美容院にも連れて行ってほしい。本来の色に、髪を染め直してほしい。とても、綺麗な金髪に。靴も宝石も見立ててくれないか? 金なら充分ある。私はアレクサンダー。知っているな?」
「はい。もちろんでございます。英雄の名前を知らないわけがありません。勇者様の仰せのままに。支払いは結構です。ですが、勇者様ご用達のお店として看板をかけさせてください」
そんな会話を私は黙って聞いていた。私は、どうなるのだろう?兄はなぜ、レイラ準男爵家の者と出かけたの?アレクサンダー様のお考えがわからなかった。
「さぁ、グレイスさん。貴女は、ここで好きなドレスを仕立てて貰って、美容院では髪を元通りにしておいで。その間に私は登城し、王様からご褒美に屋敷と使用人を揃えてもらう。おそらく、爵位も頂けるはずだから・・・・・・貴女はそこでしばらく私と暮らそう。貴女を虐げた者達を、少し懲らしめたいと私は思っている」
そう言いながら、アレクサンダー様は、悪戯っぽい笑顔を私に向けた。
「あ、貴女の兄上には、しばらく騙されてもらおうね! これは私と貴女だけの秘密だよ」
私の耳元でそっと囁いたのだった。
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