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77 後始末
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アガサの指摘に真っ先に反応したのはお父様ではなくお兄様だった。
「こ、これは… その…」
ミランダに操られていたとはいえ、物理的に切り裂いてしまったのはお兄様だから慌てるのも当然よね。
上手い言い訳が思い付かずワタワタしているお兄様にアガサが怪訝な顔をしている。
ここは妹としてフォローするべきよね。
「これは、きっとかまいたちよ」
胸を張って答える私だったけれど、皆の反応は思っていたのと違った。
「かまいたち?」
「かまいたちって何だ?」
「初めて聞きましたわ」
あ、あれ?
もしかして失敗しちゃった?
この世界に『かまいたち』なんて概念は存在しないのかしら?
それに『かまいたち』は自然現象だから外でしか起こらないんだっけ。
どう答えようか困っている私に助け舟を出してくれたのはお父様だった。
「私の服など今はどうでもいい。それよりもこのミランダの始末をする事が先決だ」
お父様に言われて私は改めて床に横たわっているミランダに目をやった。
お父様はミランダに近寄り身を屈めると、開いたままの瞼を閉じさせた。
「ソフィアが亡くなってもなお、彼女に忠誠心を示してくるのはいいが、流石にフェリシアに手をかけるのはやりすぎだ。本来ならば一族にも其れ相応の罰を下さなければならないだろうが、おそらく何も聞かされていないだろう。今日の事はアガサの胸に秘めていてくれ」
お父様はどうやらミランダが私だけを襲い、そこを駆け付けたお父様とお兄様が成敗したという事にしたいようだ。
「ミランダの実家はさほど裕福ではない子爵家ですからね。今日の事に加担しているとは考えられませんわ。承知いたしました。ですが、この遺体はいかがなさいますか?」
アガサの言うとおり、お父様とお兄様がこの遺体の処理を行うのは難しいんじゃないかしら?
「それはこちらで手配する。アガサは知らなくても良い」
お父様に言われてアガサはペコリと頭を下げた。
「それよりも早くフェリシアを休ませてやってくれ。明日は大事なお披露目があるからな」
お父様の言葉に私は目を瞬いた。
こんな事があっても明日、お披露目をするの?
「フェリシア。今日、こんな事があって辛いかもしれないが、流石に明日のお披露目を延期するわけにはいかない。わかってくれるな」
「フェリシア。お風呂に入って今日の嫌な事を洗い流しておしまい。そして明日の楽しい事だけを考えて眠るといいよ」
お父様とお兄様に諭されて私はコクリと頷いた。
確かに明日に向けて準備がされて来た以上、中止に出来ないのは当然だろう。
「アガサ、フェリシアを頼んだぞ」
お父様に厳命されたアガサは軽く一礼すると私の手を取った。
「さあ、フェリシア様。お風呂に参りましょうか。明日は朝早くから湯浴みをする事になっていますので、今日は軽く汗を流すだけにいたしましょう」
え? 明日の朝もお風呂に入るの?
今日、これから入ったら明日の朝なんていらなくない?
歩きだそうとするアガサを少し押し留めて、私はお父様とお兄様に向き直った。
だが、アガサがいる以上、迂闊な事は口にしない方がいいだろう。
「それじゃ、お父様、お兄様。お先に失礼いたしますね」
少し引き攣りそうになる頬を必死で緩めながら、私は二人に笑いかけた。
「おやすみ、良い夢を」
「おやすみ、フェリシア」
二人に見送られて私はアガサと共に自室に戻った。
ソファーに腰を下ろした途端にどっと疲れが押し寄せてくる。
先ほどまでの出来事がまるで夢のようで現実味がまるでない。
「フェリシア様、その傷はいかがされました? まさか、ミランダが?」
アガサに問われて、ミランダに付けられた傷を思い出した。
触るとチリッとした痛みが走る。
このままお風呂に入ったらお湯が滲みるわね。
治るかしら?
そう考えたところで、傷に触れている指先が温かくなった。
「フェリシア様。傷が消えました。…もしかしてヒールが使えるのですか?」
あ、そういえばさっき、お父様の傷も治したんだったわね。
これでお湯が滲みなくてすむわ。
「こ、これは… その…」
ミランダに操られていたとはいえ、物理的に切り裂いてしまったのはお兄様だから慌てるのも当然よね。
上手い言い訳が思い付かずワタワタしているお兄様にアガサが怪訝な顔をしている。
ここは妹としてフォローするべきよね。
「これは、きっとかまいたちよ」
胸を張って答える私だったけれど、皆の反応は思っていたのと違った。
「かまいたち?」
「かまいたちって何だ?」
「初めて聞きましたわ」
あ、あれ?
もしかして失敗しちゃった?
この世界に『かまいたち』なんて概念は存在しないのかしら?
それに『かまいたち』は自然現象だから外でしか起こらないんだっけ。
どう答えようか困っている私に助け舟を出してくれたのはお父様だった。
「私の服など今はどうでもいい。それよりもこのミランダの始末をする事が先決だ」
お父様に言われて私は改めて床に横たわっているミランダに目をやった。
お父様はミランダに近寄り身を屈めると、開いたままの瞼を閉じさせた。
「ソフィアが亡くなってもなお、彼女に忠誠心を示してくるのはいいが、流石にフェリシアに手をかけるのはやりすぎだ。本来ならば一族にも其れ相応の罰を下さなければならないだろうが、おそらく何も聞かされていないだろう。今日の事はアガサの胸に秘めていてくれ」
お父様はどうやらミランダが私だけを襲い、そこを駆け付けたお父様とお兄様が成敗したという事にしたいようだ。
「ミランダの実家はさほど裕福ではない子爵家ですからね。今日の事に加担しているとは考えられませんわ。承知いたしました。ですが、この遺体はいかがなさいますか?」
アガサの言うとおり、お父様とお兄様がこの遺体の処理を行うのは難しいんじゃないかしら?
「それはこちらで手配する。アガサは知らなくても良い」
お父様に言われてアガサはペコリと頭を下げた。
「それよりも早くフェリシアを休ませてやってくれ。明日は大事なお披露目があるからな」
お父様の言葉に私は目を瞬いた。
こんな事があっても明日、お披露目をするの?
「フェリシア。今日、こんな事があって辛いかもしれないが、流石に明日のお披露目を延期するわけにはいかない。わかってくれるな」
「フェリシア。お風呂に入って今日の嫌な事を洗い流しておしまい。そして明日の楽しい事だけを考えて眠るといいよ」
お父様とお兄様に諭されて私はコクリと頷いた。
確かに明日に向けて準備がされて来た以上、中止に出来ないのは当然だろう。
「アガサ、フェリシアを頼んだぞ」
お父様に厳命されたアガサは軽く一礼すると私の手を取った。
「さあ、フェリシア様。お風呂に参りましょうか。明日は朝早くから湯浴みをする事になっていますので、今日は軽く汗を流すだけにいたしましょう」
え? 明日の朝もお風呂に入るの?
今日、これから入ったら明日の朝なんていらなくない?
歩きだそうとするアガサを少し押し留めて、私はお父様とお兄様に向き直った。
だが、アガサがいる以上、迂闊な事は口にしない方がいいだろう。
「それじゃ、お父様、お兄様。お先に失礼いたしますね」
少し引き攣りそうになる頬を必死で緩めながら、私は二人に笑いかけた。
「おやすみ、良い夢を」
「おやすみ、フェリシア」
二人に見送られて私はアガサと共に自室に戻った。
ソファーに腰を下ろした途端にどっと疲れが押し寄せてくる。
先ほどまでの出来事がまるで夢のようで現実味がまるでない。
「フェリシア様、その傷はいかがされました? まさか、ミランダが?」
アガサに問われて、ミランダに付けられた傷を思い出した。
触るとチリッとした痛みが走る。
このままお風呂に入ったらお湯が滲みるわね。
治るかしら?
そう考えたところで、傷に触れている指先が温かくなった。
「フェリシア様。傷が消えました。…もしかしてヒールが使えるのですか?」
あ、そういえばさっき、お父様の傷も治したんだったわね。
これでお湯が滲みなくてすむわ。
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