御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

94 九九

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 ディクソン先生からようやく解放されて僕は馬車乗り場へと急いだ。

 幸いまだ馬車は来ておらず、待っているアーサー達と合流出来た。

「エド、間に合って良かった」

 アーサーがホッとしたように僕に近寄ってくる。

 それと同時に向こうから馬車が近付いて来るのが見えた。

 アーサーは特にディクソン先生の話が何だったのかを聞いてはこなかった。

 こんな衆人の前で出来る話ではないとわかっているのだろう。

 僕とアーサーは当たり障りのない会話を交わしながら馬車に揺られる。

 目的地に到着すると、アーサーはいつものように僕の家に寄り道をする。

 僕の家の応接室で二人きりになるやいなやアーサーが問い詰めてきた。

「エド! ディクソン先生に何を言われたんだ?」

 勢いこんで聞いてくるアーサーに僕は苦笑する。

「今話すから落ち着いて。ほら、まずはお茶を一口どうぞ」

 アーサーにお茶を勧めつつ僕も一口飲んで喉を潤す。

 温かいお茶を飲んだ事で心が落ち着いてくる。

 アーサーも渋々と僕に習ってお茶を飲んでいるが、その顔は早く話が聞きたくて仕方がなさそうだ。

「実は今日の小テストで、前世で習った計算方法で計算をしたんだ。それがディクソン先生の目に止まって『これは何ですか?』って聞かれたんだよ」

「前世で習った計算方法? そんなのがあるのか?」

 アーサーは僕の説明を聞いても半信半疑な顔をしている。

 僕はテーブルの上にあったメモ用紙に今日出た問題を筆算で書いてみせる事にした。

「今日の問題に『5963+4649』というのがあっただろう。それを横に並べずに縦に位を揃えて計算式を書くんだ」

 筆算で『5963+4649』という計算式を書いてやると、アーサーはそれを見て目を見張った。

「凄い! それぞれの位が縦に並んでいるから計算がしやすい!」

「そうだろう? 繰り上がった『1 』も書いたら分かりやすいだろう? これは引き算や掛け算にも応用出来るんだ」

「掛け算にも? 引き算は何となくわかるけれど、掛け算もこれで出来るのか?」

 驚いているアーサーをよそに今度は掛け算を筆算で計算してみせた。

 アーサーは更にびっくりしているけれど、僕にしてみればこの計算方法で正解を導き出せる方がびっくりだよ。

「凄いな。エドがいた世界ではこんな計算の仕方をしていたのか。そりゃ、ディクソン先生が話を聞きたがるはずだよ。…まさか、前世の記憶があるって打ち明けたのか?」

 アーサーが声を潜めて問いかけてくるけれど、そんな事を告白出来るわけがない。

「流石にそんな事は言えないよ。『頭がおかしくなった』と思われるのがオチだ。自分で考えたって言ったらディクソン先生に『陞爵をしてもらうべきだ』なんて言い出されて焦ったよ」

 僕が困ったように告げるとアーサーはプッと吹き出した。

「エドのご両親の無欲ぶりは徹底してるからな。下手したら男爵すらも返上しかねないんじゃないか?」

「どうだろうね。流石にそこまではしないだろうけれど、早々にクリスに爵位を譲って楽隠居を決め込みそうだよね」

「ハハッ、それは言えてるな」

 二人でひとしきり笑った後、僕はアーサーに九九を教えた。

「なにこれ! こんな事をやってるのか? エドがいた世界って天才ばかりがいるのか!」

 流石にそれは言い過ぎだと思うけど、『九九』を考えついた人って凄いよね。

 英語だと語呂が悪いらしく浸透しなかったようだ。

 だけどインドでは『19×19』まで暗記するらしいからね。

 アーサーは僕が教えた『九九』をブツブツ言いながら暗記しようとしている。

 勿論、誰にも言わないように釘は差したからね。


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