94 / 242
学院編
94 九九
しおりを挟む
ディクソン先生からようやく解放されて僕は馬車乗り場へと急いだ。
幸いまだ馬車は来ておらず、待っているアーサー達と合流出来た。
「エド、間に合って良かった」
アーサーがホッとしたように僕に近寄ってくる。
それと同時に向こうから馬車が近付いて来るのが見えた。
アーサーは特にディクソン先生の話が何だったのかを聞いてはこなかった。
こんな衆人の前で出来る話ではないとわかっているのだろう。
僕とアーサーは当たり障りのない会話を交わしながら馬車に揺られる。
目的地に到着すると、アーサーはいつものように僕の家に寄り道をする。
僕の家の応接室で二人きりになるやいなやアーサーが問い詰めてきた。
「エド! ディクソン先生に何を言われたんだ?」
勢いこんで聞いてくるアーサーに僕は苦笑する。
「今話すから落ち着いて。ほら、まずはお茶を一口どうぞ」
アーサーにお茶を勧めつつ僕も一口飲んで喉を潤す。
温かいお茶を飲んだ事で心が落ち着いてくる。
アーサーも渋々と僕に習ってお茶を飲んでいるが、その顔は早く話が聞きたくて仕方がなさそうだ。
「実は今日の小テストで、前世で習った計算方法で計算をしたんだ。それがディクソン先生の目に止まって『これは何ですか?』って聞かれたんだよ」
「前世で習った計算方法? そんなのがあるのか?」
アーサーは僕の説明を聞いても半信半疑な顔をしている。
僕はテーブルの上にあったメモ用紙に今日出た問題を筆算で書いてみせる事にした。
「今日の問題に『5963+4649』というのがあっただろう。それを横に並べずに縦に位を揃えて計算式を書くんだ」
筆算で『5963+4649』という計算式を書いてやると、アーサーはそれを見て目を見張った。
「凄い! それぞれの位が縦に並んでいるから計算がしやすい!」
「そうだろう? 繰り上がった『1 』も書いたら分かりやすいだろう? これは引き算や掛け算にも応用出来るんだ」
「掛け算にも? 引き算は何となくわかるけれど、掛け算もこれで出来るのか?」
驚いているアーサーをよそに今度は掛け算を筆算で計算してみせた。
アーサーは更にびっくりしているけれど、僕にしてみればこの計算方法で正解を導き出せる方がびっくりだよ。
「凄いな。エドがいた世界ではこんな計算の仕方をしていたのか。そりゃ、ディクソン先生が話を聞きたがるはずだよ。…まさか、前世の記憶があるって打ち明けたのか?」
アーサーが声を潜めて問いかけてくるけれど、そんな事を告白出来るわけがない。
「流石にそんな事は言えないよ。『頭がおかしくなった』と思われるのがオチだ。自分で考えたって言ったらディクソン先生に『陞爵をしてもらうべきだ』なんて言い出されて焦ったよ」
僕が困ったように告げるとアーサーはプッと吹き出した。
「エドのご両親の無欲ぶりは徹底してるからな。下手したら男爵すらも返上しかねないんじゃないか?」
「どうだろうね。流石にそこまではしないだろうけれど、早々にクリスに爵位を譲って楽隠居を決め込みそうだよね」
「ハハッ、それは言えてるな」
二人でひとしきり笑った後、僕はアーサーに九九を教えた。
「なにこれ! こんな事をやってるのか? エドがいた世界って天才ばかりがいるのか!」
流石にそれは言い過ぎだと思うけど、『九九』を考えついた人って凄いよね。
英語だと語呂が悪いらしく浸透しなかったようだ。
だけどインドでは『19×19』まで暗記するらしいからね。
アーサーは僕が教えた『九九』をブツブツ言いながら暗記しようとしている。
勿論、誰にも言わないように釘は差したからね。
幸いまだ馬車は来ておらず、待っているアーサー達と合流出来た。
「エド、間に合って良かった」
アーサーがホッとしたように僕に近寄ってくる。
それと同時に向こうから馬車が近付いて来るのが見えた。
アーサーは特にディクソン先生の話が何だったのかを聞いてはこなかった。
こんな衆人の前で出来る話ではないとわかっているのだろう。
僕とアーサーは当たり障りのない会話を交わしながら馬車に揺られる。
目的地に到着すると、アーサーはいつものように僕の家に寄り道をする。
僕の家の応接室で二人きりになるやいなやアーサーが問い詰めてきた。
「エド! ディクソン先生に何を言われたんだ?」
勢いこんで聞いてくるアーサーに僕は苦笑する。
「今話すから落ち着いて。ほら、まずはお茶を一口どうぞ」
アーサーにお茶を勧めつつ僕も一口飲んで喉を潤す。
温かいお茶を飲んだ事で心が落ち着いてくる。
アーサーも渋々と僕に習ってお茶を飲んでいるが、その顔は早く話が聞きたくて仕方がなさそうだ。
「実は今日の小テストで、前世で習った計算方法で計算をしたんだ。それがディクソン先生の目に止まって『これは何ですか?』って聞かれたんだよ」
「前世で習った計算方法? そんなのがあるのか?」
アーサーは僕の説明を聞いても半信半疑な顔をしている。
僕はテーブルの上にあったメモ用紙に今日出た問題を筆算で書いてみせる事にした。
「今日の問題に『5963+4649』というのがあっただろう。それを横に並べずに縦に位を揃えて計算式を書くんだ」
筆算で『5963+4649』という計算式を書いてやると、アーサーはそれを見て目を見張った。
「凄い! それぞれの位が縦に並んでいるから計算がしやすい!」
「そうだろう? 繰り上がった『1 』も書いたら分かりやすいだろう? これは引き算や掛け算にも応用出来るんだ」
「掛け算にも? 引き算は何となくわかるけれど、掛け算もこれで出来るのか?」
驚いているアーサーをよそに今度は掛け算を筆算で計算してみせた。
アーサーは更にびっくりしているけれど、僕にしてみればこの計算方法で正解を導き出せる方がびっくりだよ。
「凄いな。エドがいた世界ではこんな計算の仕方をしていたのか。そりゃ、ディクソン先生が話を聞きたがるはずだよ。…まさか、前世の記憶があるって打ち明けたのか?」
アーサーが声を潜めて問いかけてくるけれど、そんな事を告白出来るわけがない。
「流石にそんな事は言えないよ。『頭がおかしくなった』と思われるのがオチだ。自分で考えたって言ったらディクソン先生に『陞爵をしてもらうべきだ』なんて言い出されて焦ったよ」
僕が困ったように告げるとアーサーはプッと吹き出した。
「エドのご両親の無欲ぶりは徹底してるからな。下手したら男爵すらも返上しかねないんじゃないか?」
「どうだろうね。流石にそこまではしないだろうけれど、早々にクリスに爵位を譲って楽隠居を決め込みそうだよね」
「ハハッ、それは言えてるな」
二人でひとしきり笑った後、僕はアーサーに九九を教えた。
「なにこれ! こんな事をやってるのか? エドがいた世界って天才ばかりがいるのか!」
流石にそれは言い過ぎだと思うけど、『九九』を考えついた人って凄いよね。
英語だと語呂が悪いらしく浸透しなかったようだ。
だけどインドでは『19×19』まで暗記するらしいからね。
アーサーは僕が教えた『九九』をブツブツ言いながら暗記しようとしている。
勿論、誰にも言わないように釘は差したからね。
406
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる