93 / 242
学院編
93 ディクソン先生の追及
しおりを挟む
すぐに返事が出来ずにいると、ディクソン先生は僕を安心させるように軽く微笑む。
「大丈夫です。帰りの馬車の時間には間に合わせます」
ディクソン先生の言うように馬車が出発するまであと十分はある。
それまでには話を終わらせてくれるのだろう。
「わかりました」
僕は返事をするとディクソン先生が立っている教壇に近づいていく。
他の生徒は好奇心丸出しの目でこちらにチラチラと視線をやりながら教室を出て行く。
僕は心配そうな顔をしているアーサーに軽く頷いてみせると、アーサーは渋々ながら教室を出て行った。
生徒全員が教室から出て行くのを待っていたディクソン先生は、誰も居ないのを確認すると盗聴防止の魔導具を取り出した。
「さて、エルガーさん。どうして呼ばれたのかわかりますか?」
ディクソン先生に問われるが僕にはさっぱりわからない。
お昼休憩にマーリン先生達と食事をしたのが問題ならば、アーサーも一緒に呼び出されるはずだ。
「いえ、皆目見当もつきません」
「そうですか。それでは、これについて説明していただけますか?」
そう言ってディクソン先生が取り出したのは、計算の授業の時間に受けた小テストの答案用紙だった。
勿論、そこには僕の名前が書いてある。
だけど、これの何処が問題なんだろう?
「えっと、どれですか?」
「ここです!」
そう言ってディクソン先生が指差したのは計算式の横に書いた筆算だった。
どうしてこれについて聞かれるのかわけがわからない。
「筆算が何か問題でもあるんですか?」
「『ひっさん』!? 何ですか、それは? どうしてこんな計算の仕方を知っているのですか?」
ディクソン先生に詰め寄られて僕はタジタジとなる。
「あ、あの…。これが何か…」
「何かじゃありません! 今まで誰もこんな計算の仕方をした人はいませんでした。他の先生方にも尋ねましたが、誰もこんな計算方法を知りませんでした。エルガーさんは何処で誰にこんな計算の仕方を習ったのですか?」
あちゃー!
どうやらこの世界では筆算で、計算はしなかったようだ。
これはどうやって誤魔化すべきだろうか?
『誰かに習った』と言えば、『その人物は誰か?』と追及されるに決まっている。
ある程度の年頃まで孤児院にいたのなら『孤児院で習った』と言えるのだが、一歳でエルガー家に貰われたのでそれは使えない。
『エルガー家に入った後で習った』と言えば、義両親に話がいくに決まっている。
ここはやはり、『自分で考えた』事にするべきだろうか?
それが一番、手っ取り早いかもしれない。
「あの…、僕が自分で考えました…」
ボソボソと答えると、ディクソン先生は驚いたように目を見張った。
「エルガーさんが、ご自分で?」
そう言いながら答案用紙と僕を交互に見比べている。
『嘘をつくんじゃありません!』
そう言われるのを覚悟していたが、ディクソン先生は「まあっ!」と感嘆の声をあげた。
「素晴らしいですわ。ぜひとも国中の皆さんにこの計算方法を教えて差し上げないと!」
更にディクソン先生は良い事を思いついた、とばかりにパン!と両手を叩く。
「そうだわ。ぜひとも国王陛下にお知らせして、エルガー家の爵位を上げていただけるように校長先生に進言しましょう」
そんな事をのたまうディクソン先生に僕は「ひえっ」と息を呑む。
あれだけ陞爵を回避している義両親なのに、僕が爵位を上げてしまったら『恩を仇で返す』ようなものじゃないか。
「せ、先生、それだけは止めてください。義父様達に僕が怒られます」
必死で止めるとディクソン先生は何かを思い出したように「あ…」と呟いた。
どうやら僕の義両親が陞爵を断っているのを思い出したようだ。
「他の人に教えるのは良いのですが、陞爵は義父様様が嫌がるので止めてください。お願いします」
必死でディクソン先生に頼み込むとディクソン先生は渋々と了承してくれた。
やれやれ。
これで『九九』の事も口にしてたら、どんな事になっていたのやら。
アーサーに『九九』は教えても、一切口外しないように伝えないとね。
「大丈夫です。帰りの馬車の時間には間に合わせます」
ディクソン先生の言うように馬車が出発するまであと十分はある。
それまでには話を終わらせてくれるのだろう。
「わかりました」
僕は返事をするとディクソン先生が立っている教壇に近づいていく。
他の生徒は好奇心丸出しの目でこちらにチラチラと視線をやりながら教室を出て行く。
僕は心配そうな顔をしているアーサーに軽く頷いてみせると、アーサーは渋々ながら教室を出て行った。
生徒全員が教室から出て行くのを待っていたディクソン先生は、誰も居ないのを確認すると盗聴防止の魔導具を取り出した。
「さて、エルガーさん。どうして呼ばれたのかわかりますか?」
ディクソン先生に問われるが僕にはさっぱりわからない。
お昼休憩にマーリン先生達と食事をしたのが問題ならば、アーサーも一緒に呼び出されるはずだ。
「いえ、皆目見当もつきません」
「そうですか。それでは、これについて説明していただけますか?」
そう言ってディクソン先生が取り出したのは、計算の授業の時間に受けた小テストの答案用紙だった。
勿論、そこには僕の名前が書いてある。
だけど、これの何処が問題なんだろう?
「えっと、どれですか?」
「ここです!」
そう言ってディクソン先生が指差したのは計算式の横に書いた筆算だった。
どうしてこれについて聞かれるのかわけがわからない。
「筆算が何か問題でもあるんですか?」
「『ひっさん』!? 何ですか、それは? どうしてこんな計算の仕方を知っているのですか?」
ディクソン先生に詰め寄られて僕はタジタジとなる。
「あ、あの…。これが何か…」
「何かじゃありません! 今まで誰もこんな計算の仕方をした人はいませんでした。他の先生方にも尋ねましたが、誰もこんな計算方法を知りませんでした。エルガーさんは何処で誰にこんな計算の仕方を習ったのですか?」
あちゃー!
どうやらこの世界では筆算で、計算はしなかったようだ。
これはどうやって誤魔化すべきだろうか?
『誰かに習った』と言えば、『その人物は誰か?』と追及されるに決まっている。
ある程度の年頃まで孤児院にいたのなら『孤児院で習った』と言えるのだが、一歳でエルガー家に貰われたのでそれは使えない。
『エルガー家に入った後で習った』と言えば、義両親に話がいくに決まっている。
ここはやはり、『自分で考えた』事にするべきだろうか?
それが一番、手っ取り早いかもしれない。
「あの…、僕が自分で考えました…」
ボソボソと答えると、ディクソン先生は驚いたように目を見張った。
「エルガーさんが、ご自分で?」
そう言いながら答案用紙と僕を交互に見比べている。
『嘘をつくんじゃありません!』
そう言われるのを覚悟していたが、ディクソン先生は「まあっ!」と感嘆の声をあげた。
「素晴らしいですわ。ぜひとも国中の皆さんにこの計算方法を教えて差し上げないと!」
更にディクソン先生は良い事を思いついた、とばかりにパン!と両手を叩く。
「そうだわ。ぜひとも国王陛下にお知らせして、エルガー家の爵位を上げていただけるように校長先生に進言しましょう」
そんな事をのたまうディクソン先生に僕は「ひえっ」と息を呑む。
あれだけ陞爵を回避している義両親なのに、僕が爵位を上げてしまったら『恩を仇で返す』ようなものじゃないか。
「せ、先生、それだけは止めてください。義父様達に僕が怒られます」
必死で止めるとディクソン先生は何かを思い出したように「あ…」と呟いた。
どうやら僕の義両親が陞爵を断っているのを思い出したようだ。
「他の人に教えるのは良いのですが、陞爵は義父様様が嫌がるので止めてください。お願いします」
必死でディクソン先生に頼み込むとディクソン先生は渋々と了承してくれた。
やれやれ。
これで『九九』の事も口にしてたら、どんな事になっていたのやら。
アーサーに『九九』は教えても、一切口外しないように伝えないとね。
382
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる