御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
93 / 270
学院編

93 ディクソン先生の追及

 すぐに返事が出来ずにいると、ディクソン先生は僕を安心させるように軽く微笑む。

「大丈夫です。帰りの馬車の時間には間に合わせます」

 ディクソン先生の言うように馬車が出発するまであと十分はある。

 それまでには話を終わらせてくれるのだろう。

「わかりました」

 僕は返事をするとディクソン先生が立っている教壇に近づいていく。

 他の生徒は好奇心丸出しの目でこちらにチラチラと視線をやりながら教室を出て行く。

 僕は心配そうな顔をしているアーサーに軽く頷いてみせると、アーサーは渋々ながら教室を出て行った。

 生徒全員が教室から出て行くのを待っていたディクソン先生は、誰も居ないのを確認すると盗聴防止の魔導具を取り出した。

「さて、エルガーさん。どうして呼ばれたのかわかりますか?」

 ディクソン先生に問われるが僕にはさっぱりわからない。

 お昼休憩にマーリン先生達と食事をしたのが問題ならば、アーサーも一緒に呼び出されるはずだ。

「いえ、皆目見当もつきません」

「そうですか。それでは、これについて説明していただけますか?」 

 そう言ってディクソン先生が取り出したのは、計算の授業の時間に受けた小テストの答案用紙だった。

 勿論、そこには僕の名前が書いてある。

 だけど、これの何処が問題なんだろう?

「えっと、どれですか?」

「ここです!」

 そう言ってディクソン先生が指差したのは計算式の横に書いた筆算だった。

 どうしてこれについて聞かれるのかわけがわからない。

「筆算が何か問題でもあるんですか?」

「『ひっさん』!? 何ですか、それは? どうしてこんな計算の仕方を知っているのですか?」

 ディクソン先生に詰め寄られて僕はタジタジとなる。

「あ、あの…。これが何か…」

「何かじゃありません! 今まで誰もこんな計算の仕方をした人はいませんでした。他の先生方にも尋ねましたが、誰もこんな計算方法を知りませんでした。エルガーさんは何処で誰にこんな計算の仕方を習ったのですか?」

 あちゃー!

 どうやらこの世界では筆算で、計算はしなかったようだ。

 これはどうやって誤魔化すべきだろうか?

『誰かに習った』と言えば、『その人物は誰か?』と追及されるに決まっている。

 ある程度の年頃まで孤児院にいたのなら『孤児院で習った』と言えるのだが、一歳でエルガー家に貰われたのでそれは使えない。

『エルガー家に入った後で習った』と言えば、義両親に話がいくに決まっている。

 ここはやはり、『自分で考えた』事にするべきだろうか?

 それが一番、手っ取り早いかもしれない。

「あの…、僕が自分で考えました…」

 ボソボソと答えると、ディクソン先生は驚いたように目を見張った。

「エルガーさんが、ご自分で?」

 そう言いながら答案用紙と僕を交互に見比べている。

『嘘をつくんじゃありません!』

 そう言われるのを覚悟していたが、ディクソン先生は「まあっ!」と感嘆の声をあげた。

「素晴らしいですわ。ぜひとも国中の皆さんにこの計算方法を教えて差し上げないと!」

 更にディクソン先生は良い事を思いついた、とばかりにパン!と両手を叩く。

「そうだわ。ぜひとも国王陛下にお知らせして、エルガー家の爵位を上げていただけるように校長先生に進言しましょう」

 そんな事をのたまうディクソン先生に僕は「ひえっ」と息を呑む。

 あれだけ陞爵を回避している義両親なのに、僕が爵位を上げてしまったら『恩を仇で返す』ようなものじゃないか。

「せ、先生、それだけは止めてください。義父様達に僕が怒られます」

 必死で止めるとディクソン先生は何かを思い出したように「あ…」と呟いた。

 どうやら僕の義両親が陞爵を断っているのを思い出したようだ。

「他の人に教えるのは良いのですが、陞爵は義父様様が嫌がるので止めてください。お願いします」

 必死でディクソン先生に頼み込むとディクソン先生は渋々と了承してくれた。

 やれやれ。

 これで『九九』の事も口にしてたら、どんな事になっていたのやら。

 アーサーに『九九』は教えても、一切口外しないように伝えないとね。



感想 156

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

<完結>金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?