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学院編
93 ディクソン先生の追及
すぐに返事が出来ずにいると、ディクソン先生は僕を安心させるように軽く微笑む。
「大丈夫です。帰りの馬車の時間には間に合わせます」
ディクソン先生の言うように馬車が出発するまであと十分はある。
それまでには話を終わらせてくれるのだろう。
「わかりました」
僕は返事をするとディクソン先生が立っている教壇に近づいていく。
他の生徒は好奇心丸出しの目でこちらにチラチラと視線をやりながら教室を出て行く。
僕は心配そうな顔をしているアーサーに軽く頷いてみせると、アーサーは渋々ながら教室を出て行った。
生徒全員が教室から出て行くのを待っていたディクソン先生は、誰も居ないのを確認すると盗聴防止の魔導具を取り出した。
「さて、エルガーさん。どうして呼ばれたのかわかりますか?」
ディクソン先生に問われるが僕にはさっぱりわからない。
お昼休憩にマーリン先生達と食事をしたのが問題ならば、アーサーも一緒に呼び出されるはずだ。
「いえ、皆目見当もつきません」
「そうですか。それでは、これについて説明していただけますか?」
そう言ってディクソン先生が取り出したのは、計算の授業の時間に受けた小テストの答案用紙だった。
勿論、そこには僕の名前が書いてある。
だけど、これの何処が問題なんだろう?
「えっと、どれですか?」
「ここです!」
そう言ってディクソン先生が指差したのは計算式の横に書いた筆算だった。
どうしてこれについて聞かれるのかわけがわからない。
「筆算が何か問題でもあるんですか?」
「『ひっさん』!? 何ですか、それは? どうしてこんな計算の仕方を知っているのですか?」
ディクソン先生に詰め寄られて僕はタジタジとなる。
「あ、あの…。これが何か…」
「何かじゃありません! 今まで誰もこんな計算の仕方をした人はいませんでした。他の先生方にも尋ねましたが、誰もこんな計算方法を知りませんでした。エルガーさんは何処で誰にこんな計算の仕方を習ったのですか?」
あちゃー!
どうやらこの世界では筆算で、計算はしなかったようだ。
これはどうやって誤魔化すべきだろうか?
『誰かに習った』と言えば、『その人物は誰か?』と追及されるに決まっている。
ある程度の年頃まで孤児院にいたのなら『孤児院で習った』と言えるのだが、一歳でエルガー家に貰われたのでそれは使えない。
『エルガー家に入った後で習った』と言えば、義両親に話がいくに決まっている。
ここはやはり、『自分で考えた』事にするべきだろうか?
それが一番、手っ取り早いかもしれない。
「あの…、僕が自分で考えました…」
ボソボソと答えると、ディクソン先生は驚いたように目を見張った。
「エルガーさんが、ご自分で?」
そう言いながら答案用紙と僕を交互に見比べている。
『嘘をつくんじゃありません!』
そう言われるのを覚悟していたが、ディクソン先生は「まあっ!」と感嘆の声をあげた。
「素晴らしいですわ。ぜひとも国中の皆さんにこの計算方法を教えて差し上げないと!」
更にディクソン先生は良い事を思いついた、とばかりにパン!と両手を叩く。
「そうだわ。ぜひとも国王陛下にお知らせして、エルガー家の爵位を上げていただけるように校長先生に進言しましょう」
そんな事をのたまうディクソン先生に僕は「ひえっ」と息を呑む。
あれだけ陞爵を回避している義両親なのに、僕が爵位を上げてしまったら『恩を仇で返す』ようなものじゃないか。
「せ、先生、それだけは止めてください。義父様達に僕が怒られます」
必死で止めるとディクソン先生は何かを思い出したように「あ…」と呟いた。
どうやら僕の義両親が陞爵を断っているのを思い出したようだ。
「他の人に教えるのは良いのですが、陞爵は義父様様が嫌がるので止めてください。お願いします」
必死でディクソン先生に頼み込むとディクソン先生は渋々と了承してくれた。
やれやれ。
これで『九九』の事も口にしてたら、どんな事になっていたのやら。
アーサーに『九九』は教えても、一切口外しないように伝えないとね。
「大丈夫です。帰りの馬車の時間には間に合わせます」
ディクソン先生の言うように馬車が出発するまであと十分はある。
それまでには話を終わらせてくれるのだろう。
「わかりました」
僕は返事をするとディクソン先生が立っている教壇に近づいていく。
他の生徒は好奇心丸出しの目でこちらにチラチラと視線をやりながら教室を出て行く。
僕は心配そうな顔をしているアーサーに軽く頷いてみせると、アーサーは渋々ながら教室を出て行った。
生徒全員が教室から出て行くのを待っていたディクソン先生は、誰も居ないのを確認すると盗聴防止の魔導具を取り出した。
「さて、エルガーさん。どうして呼ばれたのかわかりますか?」
ディクソン先生に問われるが僕にはさっぱりわからない。
お昼休憩にマーリン先生達と食事をしたのが問題ならば、アーサーも一緒に呼び出されるはずだ。
「いえ、皆目見当もつきません」
「そうですか。それでは、これについて説明していただけますか?」
そう言ってディクソン先生が取り出したのは、計算の授業の時間に受けた小テストの答案用紙だった。
勿論、そこには僕の名前が書いてある。
だけど、これの何処が問題なんだろう?
「えっと、どれですか?」
「ここです!」
そう言ってディクソン先生が指差したのは計算式の横に書いた筆算だった。
どうしてこれについて聞かれるのかわけがわからない。
「筆算が何か問題でもあるんですか?」
「『ひっさん』!? 何ですか、それは? どうしてこんな計算の仕方を知っているのですか?」
ディクソン先生に詰め寄られて僕はタジタジとなる。
「あ、あの…。これが何か…」
「何かじゃありません! 今まで誰もこんな計算の仕方をした人はいませんでした。他の先生方にも尋ねましたが、誰もこんな計算方法を知りませんでした。エルガーさんは何処で誰にこんな計算の仕方を習ったのですか?」
あちゃー!
どうやらこの世界では筆算で、計算はしなかったようだ。
これはどうやって誤魔化すべきだろうか?
『誰かに習った』と言えば、『その人物は誰か?』と追及されるに決まっている。
ある程度の年頃まで孤児院にいたのなら『孤児院で習った』と言えるのだが、一歳でエルガー家に貰われたのでそれは使えない。
『エルガー家に入った後で習った』と言えば、義両親に話がいくに決まっている。
ここはやはり、『自分で考えた』事にするべきだろうか?
それが一番、手っ取り早いかもしれない。
「あの…、僕が自分で考えました…」
ボソボソと答えると、ディクソン先生は驚いたように目を見張った。
「エルガーさんが、ご自分で?」
そう言いながら答案用紙と僕を交互に見比べている。
『嘘をつくんじゃありません!』
そう言われるのを覚悟していたが、ディクソン先生は「まあっ!」と感嘆の声をあげた。
「素晴らしいですわ。ぜひとも国中の皆さんにこの計算方法を教えて差し上げないと!」
更にディクソン先生は良い事を思いついた、とばかりにパン!と両手を叩く。
「そうだわ。ぜひとも国王陛下にお知らせして、エルガー家の爵位を上げていただけるように校長先生に進言しましょう」
そんな事をのたまうディクソン先生に僕は「ひえっ」と息を呑む。
あれだけ陞爵を回避している義両親なのに、僕が爵位を上げてしまったら『恩を仇で返す』ようなものじゃないか。
「せ、先生、それだけは止めてください。義父様達に僕が怒られます」
必死で止めるとディクソン先生は何かを思い出したように「あ…」と呟いた。
どうやら僕の義両親が陞爵を断っているのを思い出したようだ。
「他の人に教えるのは良いのですが、陞爵は義父様様が嫌がるので止めてください。お願いします」
必死でディクソン先生に頼み込むとディクソン先生は渋々と了承してくれた。
やれやれ。
これで『九九』の事も口にしてたら、どんな事になっていたのやら。
アーサーに『九九』は教えても、一切口外しないように伝えないとね。
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