63 / 209
身分
しおりを挟む
【リティシア】
そして時は現在に戻る。
「…アーグレン」
「…はい」
「さっきからずっと棒立ちしているけど…貴方の席はそこよって何度も言ってるじゃない」
「いえ、お気持ちはありがたいのですが、私は護衛騎士ですので…いついかなる時も剣を抜ける体勢でいなければならないのです」
先程から何度同じ会話を繰り返したか分からない。彼は私は護衛騎士だからの一点張りで全く座ろうとせず、私の側を立ち続けている。
こちらの言葉に従わず、護衛騎士という立場だけを意識しているということは…明らかに私を警戒しているのだろう。
まぁ、当たり前よね。親友の婚約者が嫌な奴だったらなんとしてでも阻止したいと思うもの。
そのためには…こちらを観察する必要があるはずだわ。
彼のアレクへの思いが強ければ強い程…私が要らない奴だと判断されれば消される可能性が高くなる。
流石にこんな序盤で退場はしたくないわ。まだなんにもしてないんだから…。したことと言えば色々悪役令嬢らしからぬ事をしたくらい…。
そうよ、なんかアレクとは明らかに距離が縮まっちゃってるし、今の所マイナスにしかなってないわ。
挽回のチャンスが欲しい。
どうにかして味方につけないと。
失敗したら死。でも成功すれば…私は格段に生きやすくなる。
悪役令嬢の人生ってほんとに殺伐としてるのね…。例えるなら…生きるか死ぬかのデスゲームだわ。
彼のアレクへの思いをどうにか私にも向けられれば良いんだけど…それは難しいかしらね。
となれば私もアレクへの思いなら負けないからそれで争って…いや争ってどうするのよ。彼は騎士よ。敵意を感じ取られたらそれこそ秒で消されてしまう。どうにかその思いを共有するのよ。
ルナのように簡単に心を開いてくれなそうだし…どうすべきかしら…。
私はアレクの味方だよって事を伝えられればすぐに心を開いてくれると思うんだけど…単純にこの言葉を言うだけだと…ただ何かを企んでる悪女にしか思えないのよね。
…悪役令嬢は会わずして人に嫌われる才能は天才的だからね。ほんといらない才能だわ。
私が色々思考を巡らせているとふと背後から侍女達の声が聞こえてくる。彼女達はこちらを見ながら何かを話しているようだ。
よく聞き耳を立ててみると、どうやらアーグレンについて話しているようであった。
「…ねぇ、アーグレンさんって凄く格好良くない?」
「ね、私はアレクシス殿下も好みだけどアーグレンさんのあの黒髪もたまらないわ!」
なんというか…女子高生みたいな会話ね…。
まぁ分からなくもないわ。アレクもアーグレンも他の人とは比べ物にならない程のイケメンだから。
まぁ私は勿論アレク一筋だけどね。
…私、誰に言っているんだろう。
「…公女様」
普通に話しかけてくるところから推測するに彼には全く聞こえていないようだった。憐れな侍女達。
ルナを除いた侍女達は私に怯えたり感情を無にして接してくるから、こういう人間らしい一面が見えるとなんか新鮮ね。
でもアーグレンは主人公を好きになるから、残念だけど侍女達の出番はなさそうね。
「…どうしたの?」
「お仕えする上で、初めに言っておきたいことがあるのですが…よろしいですか?」
「えぇ。どうぞ」
アーグレンから伝わってくる緊張感がそのまま私にも伝染し、心臓が音を立てる。
一体何を言うつもりなの…?
彼は私を信頼していないはずなのに、何かを伝えたいなんてことあるかしら…?
「私は…平民です、公女様」
…なるほどね。
面白いわ。その告白は…身分が重視されるこの世界では…重大だものね。
私を試しているんだわ。どんな人間なのかを…知る為に。
でもその作戦は貰ったわ。私の答えによっては彼を簡単に味方にすることが出来る。
貴方自らチャンスをくれるなんてね…本当にありがとう。
私は少し言葉に悩んだ後、口を開いた…その時だった。侍女達の彼に対する評価が、明らかに変わったのだ。
「え、今の聞いた?」
まるで彼を嘲笑うかのような言い草。私は驚いて言葉を失った。
「なんだ、イケメンだと思ったのに残念…まさか平民だなんて。」
「よく見るとあの紫の目も不気味よね。毒におかされてるみたい」
「今時黒髪って言うのもねぇ…なんか闇の魔法とか使いそうじゃない?」
そうか、これが…これが彼にとっての普通なのか。貴族やアレクを除いた王族に馬鹿にされる日々…彼の容姿を褒めることはあっても出身を知った途端に手のひらを簡単に返してしまう…。
そんな彼にとってアレクがいかに重要で特別か、今ようやく分かった気がした。
そして同時にどうしようもなく…腹が立った。
ガタン、と強く机を叩き、ゆっくりと立ち上がり振り返ると侍女達が凍りついていく様がよく分かった。
「…平民だから何?」
侍女達は激怒した私を見ると、互いに手を取り合って生まれたての子鹿のように震えている。だが私はその様子を見ても可哀想だとは微塵も思わなかった。
「それが何?それだけでアーグレンの価値が下がるの?どうして?ねぇ…説明しなさいよ」
そして時は現在に戻る。
「…アーグレン」
「…はい」
「さっきからずっと棒立ちしているけど…貴方の席はそこよって何度も言ってるじゃない」
「いえ、お気持ちはありがたいのですが、私は護衛騎士ですので…いついかなる時も剣を抜ける体勢でいなければならないのです」
先程から何度同じ会話を繰り返したか分からない。彼は私は護衛騎士だからの一点張りで全く座ろうとせず、私の側を立ち続けている。
こちらの言葉に従わず、護衛騎士という立場だけを意識しているということは…明らかに私を警戒しているのだろう。
まぁ、当たり前よね。親友の婚約者が嫌な奴だったらなんとしてでも阻止したいと思うもの。
そのためには…こちらを観察する必要があるはずだわ。
彼のアレクへの思いが強ければ強い程…私が要らない奴だと判断されれば消される可能性が高くなる。
流石にこんな序盤で退場はしたくないわ。まだなんにもしてないんだから…。したことと言えば色々悪役令嬢らしからぬ事をしたくらい…。
そうよ、なんかアレクとは明らかに距離が縮まっちゃってるし、今の所マイナスにしかなってないわ。
挽回のチャンスが欲しい。
どうにかして味方につけないと。
失敗したら死。でも成功すれば…私は格段に生きやすくなる。
悪役令嬢の人生ってほんとに殺伐としてるのね…。例えるなら…生きるか死ぬかのデスゲームだわ。
彼のアレクへの思いをどうにか私にも向けられれば良いんだけど…それは難しいかしらね。
となれば私もアレクへの思いなら負けないからそれで争って…いや争ってどうするのよ。彼は騎士よ。敵意を感じ取られたらそれこそ秒で消されてしまう。どうにかその思いを共有するのよ。
ルナのように簡単に心を開いてくれなそうだし…どうすべきかしら…。
私はアレクの味方だよって事を伝えられればすぐに心を開いてくれると思うんだけど…単純にこの言葉を言うだけだと…ただ何かを企んでる悪女にしか思えないのよね。
…悪役令嬢は会わずして人に嫌われる才能は天才的だからね。ほんといらない才能だわ。
私が色々思考を巡らせているとふと背後から侍女達の声が聞こえてくる。彼女達はこちらを見ながら何かを話しているようだ。
よく聞き耳を立ててみると、どうやらアーグレンについて話しているようであった。
「…ねぇ、アーグレンさんって凄く格好良くない?」
「ね、私はアレクシス殿下も好みだけどアーグレンさんのあの黒髪もたまらないわ!」
なんというか…女子高生みたいな会話ね…。
まぁ分からなくもないわ。アレクもアーグレンも他の人とは比べ物にならない程のイケメンだから。
まぁ私は勿論アレク一筋だけどね。
…私、誰に言っているんだろう。
「…公女様」
普通に話しかけてくるところから推測するに彼には全く聞こえていないようだった。憐れな侍女達。
ルナを除いた侍女達は私に怯えたり感情を無にして接してくるから、こういう人間らしい一面が見えるとなんか新鮮ね。
でもアーグレンは主人公を好きになるから、残念だけど侍女達の出番はなさそうね。
「…どうしたの?」
「お仕えする上で、初めに言っておきたいことがあるのですが…よろしいですか?」
「えぇ。どうぞ」
アーグレンから伝わってくる緊張感がそのまま私にも伝染し、心臓が音を立てる。
一体何を言うつもりなの…?
彼は私を信頼していないはずなのに、何かを伝えたいなんてことあるかしら…?
「私は…平民です、公女様」
…なるほどね。
面白いわ。その告白は…身分が重視されるこの世界では…重大だものね。
私を試しているんだわ。どんな人間なのかを…知る為に。
でもその作戦は貰ったわ。私の答えによっては彼を簡単に味方にすることが出来る。
貴方自らチャンスをくれるなんてね…本当にありがとう。
私は少し言葉に悩んだ後、口を開いた…その時だった。侍女達の彼に対する評価が、明らかに変わったのだ。
「え、今の聞いた?」
まるで彼を嘲笑うかのような言い草。私は驚いて言葉を失った。
「なんだ、イケメンだと思ったのに残念…まさか平民だなんて。」
「よく見るとあの紫の目も不気味よね。毒におかされてるみたい」
「今時黒髪って言うのもねぇ…なんか闇の魔法とか使いそうじゃない?」
そうか、これが…これが彼にとっての普通なのか。貴族やアレクを除いた王族に馬鹿にされる日々…彼の容姿を褒めることはあっても出身を知った途端に手のひらを簡単に返してしまう…。
そんな彼にとってアレクがいかに重要で特別か、今ようやく分かった気がした。
そして同時にどうしようもなく…腹が立った。
ガタン、と強く机を叩き、ゆっくりと立ち上がり振り返ると侍女達が凍りついていく様がよく分かった。
「…平民だから何?」
侍女達は激怒した私を見ると、互いに手を取り合って生まれたての子鹿のように震えている。だが私はその様子を見ても可哀想だとは微塵も思わなかった。
「それが何?それだけでアーグレンの価値が下がるの?どうして?ねぇ…説明しなさいよ」
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる