小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

文字の大きさ
337 / 464
竜の恩讐編

三年前にて…… その7

しおりを挟む
「いいよ」
 そう短く答えた媛寿えんじゅに、ピオニーアは安心して目を閉じようとしたが、
「ただし」
 媛寿の続く言葉に、閉じかけた目を再び開いた。
「えんじゅからもやくそく」
 後ろから抱きすくめているピオニーアに、媛寿はもたれかかるように少し体重を預けた。
「もしゆうきにすきっていうときは、えんじゅにもこえかけて。えんじゅもいっしょにすきっていうから」
 媛寿からの予想外の提案に驚いたピオニーアは、数秒ほど目を丸くして固まってしまった。
「? どしたのぴおにーあ?」
「あ―――ごめんなさい。ちょっとビックリしちゃって。えっと……媛寿ちゃんと私が、同時に結城ゆうきさんに告白するっていうこと、ですよね?」
「そう」
「……もし、結城さんが私の告白を受け入れたら、媛寿ちゃんはどうするんですか?」
「え? どうもしないよ? ゆうきやぴおにーあといっしょにいる」
「……じゃあ、私が結城さんに断られたら?」
「ゆうきはそんなことしない。だからぴおにーあはえんじゅやゆうきとこれからもいっしょ。その……えんじゅもぴおにーあのこと……けっこうすきだし」
 ピオニーアはさらに驚いた。媛寿の出した答えは、全てがピオニーアの想像を超えるものばかりだった。
 自身が想定していた未来も、不安も、座敷童子ざしきわらしの、いや、媛寿という永遠のお子様の前には足元にも及ばない。
 そう気付いた時、
「ふ……ふふ……くす……」
 ピオニーアは自然と笑いがこみ上げてきた。
「くふふ……あはは……」
「ぴ、ぴおにーあどしたの? まだえんじゅくすぐってないよ?」
 急に笑い始めたピオニーアに驚き、媛寿は先ほどのくすぐりの仕返しに使おうとしていた羽ボウキを左袖ひだりそでに収めてしまった。
「う……ふふ……何でもありませんよ。媛寿ちゃんのことも本気で好きになっちゃいそうって思っただけです」
「へ? なにそれ、へんなの」
 笑いで出た涙を指でぬぐうピオニーアを、媛寿が怪訝けげんな顔で見ていると、
「お~い、媛寿~」
 紙コップを持った結城が祭り客の波からい出してきた。
「いや~、大変だったよ。かかりの人に紙コップとお水もらえたまではよかったんだけど、途中で人混みに押されて金魚すくいの水槽に頭つっこんじゃったり、ヨーヨー釣りの水槽に頭つっこんじゃったり―――って、二人ともどうしたの?」
 戻ってきた結城は、ピオニーアのひざの上にいる媛寿を見て目を丸くした。
 媛寿と出逢であって以降、媛寿が他の誰かの膝に座っているところを、結城は一度も見たことがなかったからだ。
「媛寿、もう頭は痛くないの?」
「あ、うん。もうなおった」
「そっか。なら良かったよ―――あ! もしかして僕がいない間にピオニーアさんに何か悪戯イタズラしようとしてた?」
「そんなことないですよ。女の子同士で楽しくお話してただけですよ」
「はわっ! ぴ、ぴおにーあ!?」
 なぜかピオニーアはかなり上機嫌で、媛寿の後頭部にほおり寄せ、媛寿を困惑させていた。
「う~ん、よく分からないけど、まぁ、いっか。それよりも『カラアゲちゃん』の屋台で追加ががったみたいだよ?」
「からあげちゃん! たべたいたべたい! いこ! ぴおにーあ! ゆうき!」
 揚げたての唐揚げを想像して我慢できなくなった媛寿は、ピオニーアの膝から降りると、ピオニーアと結城の手を取って屋台へと走り出した。
 結城がなぜか祭り客のひじばかりにぶつかる中、ピオニーアは自身の手を引く媛寿の小さな手を見て、記憶の彼方かなたにある手を思い出していた。
 故郷に残してきた、そのいとしき者の手のことを。

「その話、間違いないんだな?」
「ああ。連絡コンタクトを取ってきた奴が、血液サンプルも送ってきた。モグリの霊媒医師にせたら、相当驚いてたから本物だ」
「その霊媒医師は?」
「もちろん始末した。この秘密を知ってるのは少ない方がいいからな」
流石さすがは我が弟だ。が、話に乗ったとしても、後々あとあと二十八家にじゅうはっけ』から追われるのではな……」
「安心しろ、兄貴。事が済んだら『敷岐内家しきうちけ』が全ての家を黙らせる」
「そうだな。必ず・・そうなるな。ふふふ」
「くくく」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

処理中です...