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番外編
恋人になるまで(3)
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「……祝福が、見えると?」
「はい、どうやらそのようなのです」
「はぁ……なるほど……」
僕はレオン様のキラキラ化現象を、教会で相談してみた。勇者パーティーの神官という肩書きは絶大で、相談できる神官様を指名させていただいた。もちろん、ぴかぴか光っている神官様に。
「……私が考えるに、恐らくその瞳こそ、フェリス様に授けられた祝福なのではないでしょうか」
「えっ?僕の……?」
「はい。フェリス様は私を『光っているように見える』と仰って下さいましたが、私はフェリス様こそ、清廉そのもののような、眩しいような……、神力の強さを感じます」
そんな風に言われて、嬉しく無いはずが無い。
照れながら礼を言い、ふと、気付く。
「でも、僕は僕の周りに輝きは感じません。どうしてでしょうか……」
「自分まで光ってしまえば、きっと視界が悪くなります。神のご考慮でしょう」
そっか……!
大納得だ!
「でも、勇者様にその現象が起こるのは私では分かりません……、もしかして、」
「あっ!きっとレオン様は剣士でも神の祝福を得られた勇者の中の勇者なんだと思います!教えてくださってありがとうございます!」
「えっ?ええ……え?」
僕は非常にスッキリした。
神官様が首を捻っているのにも気づかず、意気揚々と宿へ帰ったのだった。
同じ部屋のレオン様は、鍛錬をこなした後なのか、シャワーを浴びていたみたい。
大問題なことに、まだ濡れて、腰にタオルを雑に巻いてるだけ……?!ややっ!いつも以上にキラキラして見えるし、どうしよう、背景にお花まで見える……!
「やぁ、フェリスくん。教会はどうだったかな?」
「あっ?!あ、はい!とてもいい神官様に会えました!ハイ……」
レオン様はワイルドに髪を拭きながら、さらりと聞いてきた。あっ、そうか……。
ドギマギしているのなんて、僕だけだ。だから裸を見られているのに、何にも動じてない。
男のうち大半は、女の子を好きになるのだもの。
僕はたまたま男の人が好きで……レオン様は、そうではないかもしれない。
レオン様は、僕のことなんて『村から来た子供』くらいにしか、思ってらっしゃらないのだ。
可愛いと良く言って頂けるのは、弟や妹に向けるような言葉。僕だって弟は可愛い。
そう思うと、いやらしい気持ちでレオン様の身体を見てしまう僕がほとほとどうしようもない男なのだと、分かってしまった。
「ぼ、僕っ!その、喉乾いたので!下に行ってきますね!」
慌てて外に出ようとする。くるりと背中を向けて鍛え上げられた身体を見ないようにして、もつれそうな足を前に出すと。
「……っ!」
「おっと。気をつけて。階段から落ちてしまうからね」
ひ、っっひぇぇえ……!
背中に、ぴとりと。
レオン様の身体が。はだかの、身体が。
太くて逞しい腕一本で、転びそうになったところを支えられている。
「……っ、……っ!」
「そうだ、柑橘系の果汁水があったなら私の分もお願いしていいかな?悪いね」
「は、はひぃ……!」
みみみ、耳が死んでしまう!
僕は這々の体で、下の食堂へと逃げたのだった。
――――――――部屋に残されたレオンは。
「刺激が強かったかな……」
自身の格好を見下ろして呟く。
あるいは、あざとかったか。長風呂をして、フェリスくんの帰宅する気配と同時に出た。
ラッキースケベ(不可避)作戦だ。
私の自慢の身体を見れば、どこぞのなよなよとした男など吹き飛ぶに違いない。フェリスくんを手放してくれてありがとう。強いて言えば、フェリスくんをあの村と男から引き剥がせた自分にも感謝を捧げたい所だ。
紳士たるもの、エチケットとして勃起の心配はゼロにしている。何故なら無造作に巻いた布巾の下には、ヴァネッサに特注した下穿きを履いている。これはフェリスくんと旅を共にして早々に気付いたのだが、隣を歩いていたり小さな唇でぱくぱくと食べる様子に股間が熱くなるため。
ヴァネッサからは『変態って自覚しているのに恥ずかしげもないなんて末期ね』と言われたが、なんとでも。
この下穿きの中央は隠し収納魔法がほんの少し付いている。そう、サイズ的には、ちょっとした水瓶くらいか。そのため見た目はなんら変わりない、静かなものである。
それさえ履いて涼しい顔をしておけば、私は間違いなく、爽やかな好青年に見えることだろう。
私の裸を見たフェリスくんは、分かりやすく顔を真っ赤にさせてオロオロとしていた。そのかわいい顔を見て、私もまた完全に勃起していたが、とくと見るがいい。私の完璧な肉体を!
猛々しいモノの痛みなど知らんぷりをして微笑めば、フェリスくんはとうとう顔を隠して逃げ出してしまった。意識は、してもらえたようだ。
足を滑らそうとしていたので咄嗟に抱き抱える。軽ッ。細っ。良い匂いがする……。
そんな邪念は振り払い、私はイメージ向上に努めた。
まさかその振る舞いが、『対象にされていない』などと誤解され、とんだ逆襲を受けることになるとは、思ってもみなかったのだ。
「はい、どうやらそのようなのです」
「はぁ……なるほど……」
僕はレオン様のキラキラ化現象を、教会で相談してみた。勇者パーティーの神官という肩書きは絶大で、相談できる神官様を指名させていただいた。もちろん、ぴかぴか光っている神官様に。
「……私が考えるに、恐らくその瞳こそ、フェリス様に授けられた祝福なのではないでしょうか」
「えっ?僕の……?」
「はい。フェリス様は私を『光っているように見える』と仰って下さいましたが、私はフェリス様こそ、清廉そのもののような、眩しいような……、神力の強さを感じます」
そんな風に言われて、嬉しく無いはずが無い。
照れながら礼を言い、ふと、気付く。
「でも、僕は僕の周りに輝きは感じません。どうしてでしょうか……」
「自分まで光ってしまえば、きっと視界が悪くなります。神のご考慮でしょう」
そっか……!
大納得だ!
「でも、勇者様にその現象が起こるのは私では分かりません……、もしかして、」
「あっ!きっとレオン様は剣士でも神の祝福を得られた勇者の中の勇者なんだと思います!教えてくださってありがとうございます!」
「えっ?ええ……え?」
僕は非常にスッキリした。
神官様が首を捻っているのにも気づかず、意気揚々と宿へ帰ったのだった。
同じ部屋のレオン様は、鍛錬をこなした後なのか、シャワーを浴びていたみたい。
大問題なことに、まだ濡れて、腰にタオルを雑に巻いてるだけ……?!ややっ!いつも以上にキラキラして見えるし、どうしよう、背景にお花まで見える……!
「やぁ、フェリスくん。教会はどうだったかな?」
「あっ?!あ、はい!とてもいい神官様に会えました!ハイ……」
レオン様はワイルドに髪を拭きながら、さらりと聞いてきた。あっ、そうか……。
ドギマギしているのなんて、僕だけだ。だから裸を見られているのに、何にも動じてない。
男のうち大半は、女の子を好きになるのだもの。
僕はたまたま男の人が好きで……レオン様は、そうではないかもしれない。
レオン様は、僕のことなんて『村から来た子供』くらいにしか、思ってらっしゃらないのだ。
可愛いと良く言って頂けるのは、弟や妹に向けるような言葉。僕だって弟は可愛い。
そう思うと、いやらしい気持ちでレオン様の身体を見てしまう僕がほとほとどうしようもない男なのだと、分かってしまった。
「ぼ、僕っ!その、喉乾いたので!下に行ってきますね!」
慌てて外に出ようとする。くるりと背中を向けて鍛え上げられた身体を見ないようにして、もつれそうな足を前に出すと。
「……っ!」
「おっと。気をつけて。階段から落ちてしまうからね」
ひ、っっひぇぇえ……!
背中に、ぴとりと。
レオン様の身体が。はだかの、身体が。
太くて逞しい腕一本で、転びそうになったところを支えられている。
「……っ、……っ!」
「そうだ、柑橘系の果汁水があったなら私の分もお願いしていいかな?悪いね」
「は、はひぃ……!」
みみみ、耳が死んでしまう!
僕は這々の体で、下の食堂へと逃げたのだった。
――――――――部屋に残されたレオンは。
「刺激が強かったかな……」
自身の格好を見下ろして呟く。
あるいは、あざとかったか。長風呂をして、フェリスくんの帰宅する気配と同時に出た。
ラッキースケベ(不可避)作戦だ。
私の自慢の身体を見れば、どこぞのなよなよとした男など吹き飛ぶに違いない。フェリスくんを手放してくれてありがとう。強いて言えば、フェリスくんをあの村と男から引き剥がせた自分にも感謝を捧げたい所だ。
紳士たるもの、エチケットとして勃起の心配はゼロにしている。何故なら無造作に巻いた布巾の下には、ヴァネッサに特注した下穿きを履いている。これはフェリスくんと旅を共にして早々に気付いたのだが、隣を歩いていたり小さな唇でぱくぱくと食べる様子に股間が熱くなるため。
ヴァネッサからは『変態って自覚しているのに恥ずかしげもないなんて末期ね』と言われたが、なんとでも。
この下穿きの中央は隠し収納魔法がほんの少し付いている。そう、サイズ的には、ちょっとした水瓶くらいか。そのため見た目はなんら変わりない、静かなものである。
それさえ履いて涼しい顔をしておけば、私は間違いなく、爽やかな好青年に見えることだろう。
私の裸を見たフェリスくんは、分かりやすく顔を真っ赤にさせてオロオロとしていた。そのかわいい顔を見て、私もまた完全に勃起していたが、とくと見るがいい。私の完璧な肉体を!
猛々しいモノの痛みなど知らんぷりをして微笑めば、フェリスくんはとうとう顔を隠して逃げ出してしまった。意識は、してもらえたようだ。
足を滑らそうとしていたので咄嗟に抱き抱える。軽ッ。細っ。良い匂いがする……。
そんな邪念は振り払い、私はイメージ向上に努めた。
まさかその振る舞いが、『対象にされていない』などと誤解され、とんだ逆襲を受けることになるとは、思ってもみなかったのだ。
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