【完結】神官として勇者パーティーに勧誘されましたが、幼馴染が反対している

カシナシ

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番外編

恋人になるまで(4)

「はぁ…………」

「どうしたの、フェリスちゃん。悩ましいため息、狼が寄ってくるから気をつけてね?」

「オオカミ……ですか?」


 耳を押さえて食堂の隅に縮こまっていると、ヴァネッサ様に声をかけられた。
 顔を上げると、食堂は結構賑わっていて色んな男の人が僕を見ていたようだった。うわ、なんでだろ、皆んな心配してくれたのかな?僕は大丈夫です、の気持ちでにこりと微笑んだ。……ざわりと視線を逸らされた。


「ヴァネッサ様。何でもありません。……あ!そうでした、少し聞きたいことが……」

「あー、あーあー、そうね。フェリスちゃん。何でも教えてあげるわ。そう、なんでも、ね」


 ヴァネッサ様のウインクが、心強い。後ろを気にしているみたいだけど、何でも相談できそう!


「ありがとうございます!えと、レオン様のことなんですが……レオン様は、恋人や、婚約者……あっ、お、奥様とか、いらっしゃいますか……?」

「え……っ、そこ?いないわよ。いないに決まってるじゃない!それ、聞いてなかったの?」

「あ、は、はい。何となく……聞けなくてですね」

「ふうん。あたくしは?あたくしの恋人の有無は聞かないの?」

「あ……えっと。よろしければ……」


 ヴァネッサ様が身を乗り出すと、大きく開いた胸元が破廉恥で困る。周りの男の人たちが、手を出してきちゃうかもしれないから。僕はひよっこだから、守れないかもしれない。
 なんて思いながらおどおどと視線を逸らせていると、ヴァネッサ様はにや~っと悪い笑い方をしていた。


「興味なさそうねぇ。ちなみにあたくしは恋人、もちろん婚約者も許婚も旦那も愛人もいないけど……もう、フェリスちゃんは分かりやすいんだから!」

「えっ……」

「その恥じらい方を見たらすぐにわかるわ。レオンのこと、好きなんでしょう?本人に聞いたらいいじゃないの。嬉々として話すでしょうよ」

「そ、そんな……いや、でも……」

「でも、じゃないの!好きなら好きになって貰えるように頑張らなくちゃね」

「……!」


 確かに……!
 僕はハッとした。にやにやと笑う、ヴァネッサ様の言う通りだ!

 アノンとは幼馴染の延長のような恋で、あまり良く分からないうちに好きだと思っていた。運よくと言うべきか、アノンの方から告白してくれたから、好きになって貰うという基本的なことを失念していたのだ。


「ありがとうございます、ヴァネッサ様……!僕、頑張ります!」


 ぎゅっと手を握ってしまった。あっ、いけない。許可もなしに!
 慌ててふわりと浄化をかけると、ヴァネッサ様はうっとりとしていた。……結果オーライかな?












 部屋へ戻ってきた僕は、考えてみた。

 まず、レオン様は、男の人と女の人、どちらが好きなのだろう?と。

 どちらかと言えば、やっぱり女の人を好む男の人が多いだろう。
 でもでも、前に僕の痴態を見られた時、『酒のアテにした』と仰っていた。ああ、思い出したくもない失態だけど。
 あの言葉は冗談にしろ、僕の身体が、気持ち悪いという訳ではない……と、思う。

 レオン様は、一体どちらがお好き?
 それを確かめたくて、僕はとある作戦に出た。






「あ、フェリスくん。お風呂上がっ……!?」

「ど、どうしましたか、レオン様」


 レオン様は、お風呂上がりの僕を凝視して固まっていた。
 いつもなら僕は、首元までつまった夜間着を着ているところなのだが……今日の僕は、違う。

 先ほどのレオン様もしていたタオル一丁スタイルで、ドーンと出てみたのだ。顔だって、涼しげで、ほら、なんてこと……ない。

 本当は物凄く恥ずかしい。恥ずかしくて顔は火照っているけれど、きっと風呂上がりということで、おかしくは、ないはずだ。


「そ、そういえば、オレンジの果実水があったので買ってきました。一緒に飲みません……か?」

「あ、ああ……そう、だな。ぜひ頂こう。とても美味しそうだ……」


 そう言うレオン様の顔は赤く、視線は落ちて僕の胸元あたりを見ていた。えっと……これは、つまり、脈、ある?あるのかな?
 あっ、逸らした。えっ?やっぱり無い?

 どっちなのか分からない。それどころかばくばくと心臓が鳴って、痛みまで覚えた。これじゃレオン様の観察どころじゃない!

 ベッドに並んで果実水を飲む。お風呂上がりだからか、無防備な状態でレオン様のお側にいるからか、ものすごく喉が渇いていた。


「んっ……」

「あ」


 たらっ。緊張で勢い良く傾けてしまい、果実水が顎を伝って胸へと垂れてしまう。レオン様はぱくぱくと窒息しそうな口をして、とうとう、顔を覆ってしまった。


「……これを、使いなさい。ベタベタしてしまうから」


 布巾を渡される。や、優しい。こんな時にまで優しいレオン様。やっぱり、……好き。


「あのっ……、ありがとうございます。その、レオン様。一つお聞きしたい事がありまして……」

「何だろう?何でも答えよう」

「レオン様は、男の人と、女の人、どちらがお好みなのでしょうか……?」


 ブフォッ、とレオン様は噴き出した。

 ああ、ごめんなさい。飲んでいる時に話しかけてしまうなんて。

 でも、好きが溢れた僕は、もう、直球で聞きたくなってしまったんだ。レオン様のご嗜好が、どちらなのか。やっぱり僕には、レオン様の様子から読み取るなんて高等テクニックは無かった……!

 僕より遥かに派手に零してしまったレオン様は、しばらく無言で拭いていた。そして、やがて顔をあげ、決心をしたように僕をじっと見つめた。










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