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圧倒的な力
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サリバーラの兵と共に、森へと向かう馬車の中で。
……なぜか、ヒーナの提案で、私たちは二人きりになっていた。
「……懐かしいわね」
ヒーナが、何とも言えない表情で語り出す。
「私は、いつもあなたと比べられてきた」
「……何の話?」
「私の人生の話よ」
「それよりも、森に着いてからの、隊列の話をしましょう。私は前衛、あなたは後衛で――」
「そんな話、どうだっていいわ」
「どうだっていいわけがないでしょう? これは戦いなの。ベアードはとても強力で」
「私の魔法を見たでしょう? それとも、もう忘れてしまったの?」
挑発するような物の言い方に、一瞬ムカついたが……。
ここで言い返していては、キリがないだろう。私は引き下がることにした。
「もちろん、あなたの魔法は強力よ。だからこそ、後衛を任せたいという話をしたいの。私たちが前衛で、弱い魔物の侵攻を防いでいる間に、あなたの魔法で、ベアードを倒す。こういう作戦ね。理解している?」
「……」
「ヒーナ?」
「……さっき、私があの魔法を使った時、こんなことを言っている兵がいたわ」
ヒーナは、拳を握りながら言う。
「さすが、あのミュシーの妹だ……。ってね」
「……」
「これだけ、圧倒的な力を見せつけても、まだあなたのことを言うの。本当に腹立たしいわ。……だから今日、もっとすごい力を見せてやるの」
「無理はしたらダメよ。あなたが聖女になったのは、つい最近のことじゃない。それに……」
「相性が最悪だから、災いが起こるって?」
馬鹿にするように、笑われた。
「見てなさい……。絶対に、わからせてあげるから」
それっきり、ヒーナは何も話そうとしなかった。
しばらくして、森に到着。
魔物の匂いが……。かなり濃くなっている。
「見てなさい」
そう呟いて、ヒーナが馬車を飛び出した。
私は慌てて、後を追う。
「ヒーナ! 待ちなさい!」
森に向かって、駆け出すヒーナに気がついた兵たちが、慌てて彼女を止めようと、追いかけ始めた。
まずい、このままでは、隊列が……。
「ミュシー様! これは一体……」
リアスが、馬車の中から飛び出してきた。
「申し訳ございません。ヒーナが、勝手に森に……」
「……私は隊列を整えます。ミュシー様、先に向かっていただけますか?」
「わかりました」
私がそう答えた、まさにその時。
とんでもなく大きな音が、森から聞こえた。
そして……。
空に向かって、大きな煙の柱が立っている。
「ヒーナ……」
一本、二本……。
次々と、柱は増えていった。
私は森に向かって走って行く。
煙の柱の立っている場所には、大きな穴が空いていた。
そして、粉々になった魔物の一部が、そこら中に散らばっている。
森の奥へ奥へと進んでいくに従って、穴の数は増えていき……。
「ヒーナ!!!!」
ようやくヒーナの元に辿り着いた。
ヒーナは、これまでで一番大きな穴の中心に立って、空を見上げている。
近くにいた兵が、腰を抜かしていた。
「……すごい」
「もし、一体何があったのですか?」
「ヒーナ様の魔法で……。数十匹ほどいたベアードが、一瞬で砕け散ったのです」
そんな魔法は……。聞いたことが無い。
地面に穴を空け、魔物を粉々にする?
意味がわからない。
めちゃくちゃな力だ。
「あら、ミュシー。遅かったわね」
ヒーナが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「たくさんの兵たちが、私の力を見てくれたの。喜ばしいことだわ。……もう誰も、私をミュシーの妹だなんて、呼ばないでしょうね」
「ヒーナ。あんな力を多用していたら、きっと体が壊れてしまうわ」
「何ともないのよ。これが聖女の力ということなんじゃないかしらね」
スキップをしながら、ヒーナが去って行った。
……本当に、そうなのだろうか。
あれだけの魔法を多用して、全く疲れてないことなんて、ありえない……。
強い違和感を覚えてしまうが、勝利したことに間違いはない。
彼女の言う通り……。これが、聖女の力ということなのだろう。
……なぜか、ヒーナの提案で、私たちは二人きりになっていた。
「……懐かしいわね」
ヒーナが、何とも言えない表情で語り出す。
「私は、いつもあなたと比べられてきた」
「……何の話?」
「私の人生の話よ」
「それよりも、森に着いてからの、隊列の話をしましょう。私は前衛、あなたは後衛で――」
「そんな話、どうだっていいわ」
「どうだっていいわけがないでしょう? これは戦いなの。ベアードはとても強力で」
「私の魔法を見たでしょう? それとも、もう忘れてしまったの?」
挑発するような物の言い方に、一瞬ムカついたが……。
ここで言い返していては、キリがないだろう。私は引き下がることにした。
「もちろん、あなたの魔法は強力よ。だからこそ、後衛を任せたいという話をしたいの。私たちが前衛で、弱い魔物の侵攻を防いでいる間に、あなたの魔法で、ベアードを倒す。こういう作戦ね。理解している?」
「……」
「ヒーナ?」
「……さっき、私があの魔法を使った時、こんなことを言っている兵がいたわ」
ヒーナは、拳を握りながら言う。
「さすが、あのミュシーの妹だ……。ってね」
「……」
「これだけ、圧倒的な力を見せつけても、まだあなたのことを言うの。本当に腹立たしいわ。……だから今日、もっとすごい力を見せてやるの」
「無理はしたらダメよ。あなたが聖女になったのは、つい最近のことじゃない。それに……」
「相性が最悪だから、災いが起こるって?」
馬鹿にするように、笑われた。
「見てなさい……。絶対に、わからせてあげるから」
それっきり、ヒーナは何も話そうとしなかった。
しばらくして、森に到着。
魔物の匂いが……。かなり濃くなっている。
「見てなさい」
そう呟いて、ヒーナが馬車を飛び出した。
私は慌てて、後を追う。
「ヒーナ! 待ちなさい!」
森に向かって、駆け出すヒーナに気がついた兵たちが、慌てて彼女を止めようと、追いかけ始めた。
まずい、このままでは、隊列が……。
「ミュシー様! これは一体……」
リアスが、馬車の中から飛び出してきた。
「申し訳ございません。ヒーナが、勝手に森に……」
「……私は隊列を整えます。ミュシー様、先に向かっていただけますか?」
「わかりました」
私がそう答えた、まさにその時。
とんでもなく大きな音が、森から聞こえた。
そして……。
空に向かって、大きな煙の柱が立っている。
「ヒーナ……」
一本、二本……。
次々と、柱は増えていった。
私は森に向かって走って行く。
煙の柱の立っている場所には、大きな穴が空いていた。
そして、粉々になった魔物の一部が、そこら中に散らばっている。
森の奥へ奥へと進んでいくに従って、穴の数は増えていき……。
「ヒーナ!!!!」
ようやくヒーナの元に辿り着いた。
ヒーナは、これまでで一番大きな穴の中心に立って、空を見上げている。
近くにいた兵が、腰を抜かしていた。
「……すごい」
「もし、一体何があったのですか?」
「ヒーナ様の魔法で……。数十匹ほどいたベアードが、一瞬で砕け散ったのです」
そんな魔法は……。聞いたことが無い。
地面に穴を空け、魔物を粉々にする?
意味がわからない。
めちゃくちゃな力だ。
「あら、ミュシー。遅かったわね」
ヒーナが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「たくさんの兵たちが、私の力を見てくれたの。喜ばしいことだわ。……もう誰も、私をミュシーの妹だなんて、呼ばないでしょうね」
「ヒーナ。あんな力を多用していたら、きっと体が壊れてしまうわ」
「何ともないのよ。これが聖女の力ということなんじゃないかしらね」
スキップをしながら、ヒーナが去って行った。
……本当に、そうなのだろうか。
あれだけの魔法を多用して、全く疲れてないことなんて、ありえない……。
強い違和感を覚えてしまうが、勝利したことに間違いはない。
彼女の言う通り……。これが、聖女の力ということなのだろう。
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