婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。

冬吹せいら

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没落の始まり

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「なななっ、ぬわんじゃこりゃあああ!!!」

 ブリジット家の当主、カーセル・ブリジットは、新聞を見て、椅子からひっくり返って転んでしまった。

「お父様!? どうされたのですか!?」

 慌てて、次女のマーシュが、部屋を訪れる。
 
「痛てて……。お、おいマーシュ! 私は少し歳だから、視力が落ちているのかもしれない! 私の代わりに、その新聞の一面を読んでくれ!」
「わ、わかりましたわ……。えっと……」

 新聞を拾い上げたマーシュは、ゆっくりと読み上げ始めた。

「なになに……。家を追い出された子爵令嬢、かつて王子を助けた聖人だった……?」

 そのまま、下の方へと読み進めていくと……。
 
「いやああああ!!?」

 キャロの名前が、びっしりと書いてあったのだ!

「や、やはり、見間違いではないと言うのか!? キャロが……。キーターンの王子と婚約を!?」
「間違いありませんわ! でも、まさかそんなことって……。これは偽物新聞では無くて?」
「いいやそんなことはない。王都で偽の新聞が広まることはないだろう」

 ようやく立ち上がり、椅子に座り直したカーセル。
 心中穏やかではない。自分の追い出した娘が、あろうことか隣国の王子と……。
 なおかつ、ブリジット家の名前が、大々的に出されてしまっている。このままでは、仕事に支障が出てしまう!

「すぐにキーターンへ向かわねば。今ならまだ、国外追放は冗談だったと言えば、済まされるはず!」
「そうですわね!」

 許されるはずがない。
 しかしカーセルは、楽観的であった。

 すぐに荷物をまとめ……。キーターンへと、馬車を走らせたのだ。

 ◇

「頼む! 帰って来てくれ!」
「嫌ですよ」
「そんなぁ!」

 王宮の一室で、キャロは久しぶりに顔を合わせる実の父に、軽蔑の視線を向けていた。
 ……強欲な父なら、やってくるだろうなと思っていたので、そこまでの驚きは無かった様子。

 しかし、腹は立つ。
 あれだけの追い出し方をしておいて、王子との婚約が分かった途端。帰ってこいとは何事か。

「私が悪かった! なんでも好きな物を買い与えてやる! もう厳しくもしない! だから早く帰って来てくれ!」
「何を言っても無駄です。あなたと私は、とっくに縁が切れているので。他人同士ですよ」
「そう言うな! 役所の人間に言って、取り消してもらう! だから我が家に――」
「しつこいですよ……」

 キャロは立ち上がり……。跪いているカーセルを見降ろした。

「あなた、私に何て言いました? 私みたいな不出来な子は、自分の子供と思いたくない。そう言いましたよね?」
「撤回する! 君は誰に対しても慈悲深い、自慢の娘だ!」
「……もう結構です。早く帰ってください」
「待ってくれ! キャロ!」

 キャロを追いかけようとしたカーセルだが、見張りの騎士に捕らえられた。
 
 見るも無残な姿。涙を流しながら、必死でキャロの名前を叫び続けている。
 しかし、実の娘に対して行った、卑劣な行動を思えば、当然の報いだった。
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