弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

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5年後……。モルバレス家

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「おばさん!」
「え……?」

姪のリリアが、突然私のことをそう呼んだ。

「……ベオリーナ。あなた、また何か、変なことを教えたわね?」
「え? 何の話だ?」

ベオリーナが、わざとらしく、首を傾げている。

誤魔化したって無駄だ。

「キリア。あなたからも注意しなさいよ」
「ま、まぁまぁ」
「おいおいスズカ! あたしの夫を虐めないでくれ!」
「あなたの夫である前に、私の弟よ!」

私はキリアの右腕に抱き着いた。

すると、ベオリーナが、キリアの左腕に抱き着く。

私たちは、睨み合いの構図になった。

「ベオリーナ。これから先、リリアが私のことを、ずっとおばさんと呼ぶようになったら、どうしてくれるの?」
「だって、関係性的には、おばさんだろ? 違うか?」
「そうだけど……。でも、私はまだ二十五歳よ? おばさんと呼ばれて、気分がいいわけがないじゃない」
「そんな怒るなよ……。ちょっとした冗談じゃんか」
「キリア! あなたはどう思うの?」
「え、えぇ……?」

キリアは、情けなく頭をかいている。

……優しすぎる夫も、問題よね。

「ママたち、喧嘩してるの?」

リリアが、不安そうに、私たちを見上げている。

いけないいけない。ちょっと言い方がきつかったかもしれない。

「仲直りしよ~?」

そう言いながら、リリアが、私とベオリーナの手を掴んで……。

お互いに、握らせようとした。

……なんて心優しい。

「リリア。あなたはキリアに似たのね」
「な、なにぃ? 見ろよスズカ! この可愛らしい鼻! どう見たって、あたしに似てるじゃないか!」
「ママ、怒ってるの?」
「怒ってるんじゃない。……拗ねてるんだよ」
「まぁまぁ……」

キリアが、ベオリーナの頭を撫でた。

どうやら、それがお気に入りらしく、ベオリーナがすぐに大人しくなった。

もう結婚して、五年も経つのに、付き合いたてみたいね……。

「じゃあ、私は出かけてくるから。……おばさんは、やめさせなさいよ?」
「わ、わかったって……」
「わかればいいの」

私は、家を出て、王都に向かうことにした。

今でも、私はネイトルと、週に一回は顔を合わせるようにしている。

場所は、私の家だったり、王都だったり……。

今日みたいに、家で弟夫婦が遊ぶ時は、私が出て行くようにしている。

邪魔ものになっちゃうから。私みたいなのは……。

……私も、そろそろ結婚しないとね。

今日、ネイトルに相談してみようかしら。

この年になると、そういう話が増えてくる。


……辞めた辞めた。もっと、楽しい話をしないと。

せっかく、親友と会うのだから。


馬車に乗り込み、窓の外を見つめる。

ふと、今頃セレノーは、何をしているのだろうと、そんなことを思った。

キリアの顔の傷が消えてからは、もう思い出す回数も、どんどん減って行ってるけれど。

気の強い彼女のことだから、きっとどこかで、必死で暮らしているだろう。

なんてことを思いながら、私は馬車に揺られた。
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