弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

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あれから……。

あの日以来、私とネイトルは、仮面の館ではなく、私の家で会話するようになった。

「またお姉様が、意地の悪い作戦を思いついたみたいで……。とても、うんざりしています」
「あはは……。懲りない方ね」
「全くです!」

……とは言っても、話す内容は、そんなに変わらないけれど。

「ところで、キリアの姿が見えないですね。お仕事ですか?」
「いや……。その、ベオリーナのところに、行ってるらしくて」
「……まぁ。最近多いですね」

どうやら、私の知らないところで、二人は密かに、関係を育んでいたらしい。

「ベオリーナのことは、正直あまり好きではないの……。どう思う? キリアの結婚相手として」
「そうですか? 私は結構、ああいうはっきりした方は、好きなので……。……スバレスと、似ていますよ」
「なっ……。それだけはやめて。泣きそうになる」

まさか、同族嫌悪というやつだろうか。

いいや、私は人前では、基本的に引っ込み思案なタイプだ。
気を許した相手に対してしか、強気なことは言わない。

ベオリーナは、どこでもあんな感じである。

「心優しいキリアが、あの子に振り回されないか、心配で……」
「そのくらいが、ちょうどいいと思いますけどね」
「そんなもんなのかなぁ……」

息をかけて、少し冷ましてから、紅茶を口に含んだ。

その瞬間。
ドアが、勢いよく開け放たれた。

「よぉ~っす! キリアと結婚しま~す!」

せっかく口に含んだ紅茶を、吐き出してしまった。

ベオリーナが、キリアと手を繋ぎながら、家に入って来たのだ。

慌てて口元を拭い、私は立ち上がった。

「い、いきなりどういうつもりなの!?」
「結婚しま~す!」
「キリア! 説明しなさい!」
「あ、あはは……。ごめん姉さん」
「ごめんじゃなくて!」

思わず、頭を抱えてしまった。

なんてことだ。今の今、ああいう話をしていたばかりなのに。

「って、ネイリア様もいらっしゃったのですか。これはご無礼を……」
「なぁなぁ姫様! あたしとキリア、お似合いだと思うだろ!?」
「そうですね……。ぴったりだと思います」
「ネイトル!? 勝手なこと言わないでちょうだい! ベオリーナ! 弟はあげないわよ!」
「あちゃ~……。やっぱり怒っちゃったか~」
「当たり前!」

ベオリーナが、困ったように、頭を掻いた。

しかし、どうやら思い直したようで。

真剣な表情に変わり、私を真っすぐ見つめてくる。

「な、なによ……」
「……本気で好きなんだ。キリアのこと」
「っ……」
「結婚したい。絶対。誰よりも、あんたの弟のこと、幸せにしてみせるから。お願いします」

ベオリーナが、頭を下げてきた。

「や、やめなさい。頭を上げて?」
「……お願いします」
「なんだか、まるで男女逆みたいですね」

ネイトルが笑った。

私はキリアに目を向ける。

……とても、幸せそうな表情をしていた。

「……まだ、あなたの両親に、話を聞いてないわよ?」
「もうオッケーって言ってた」
「……はぁ」

話が早すぎる。

……色々、不安なことは思い浮かぶけど。


キリアの幸せが、一番だものね。

「キリア、あなたは……。ベオリーナが好きなの?」
「……うん」

とびっきりの笑顔だった。

……どうやら、決まってしまったみたいね。
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