弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

文字の大きさ
16 / 16

5年後……。ブレッザ家

しおりを挟む
娼婦になって、四年が経過した。

あれだけ嫌がっていた職業。だけど、私は自分に適性のあるジャンルを発見したのだ。

相手を罵り……。痛めつける。

どうやらこの世界には、Mと呼ばれる性質の男性がいるらしい。

「いやぁ~! すごいね! セレノーちゃん! また売り上げトップだよ!」
「当然です」
「そのクールな感じもいいね! 来月も頼むよ?」
「わかりました」

オーナーから、特別祝儀を受け取り、私は思わず、頬が緩んだ。

今や、この国で私を知らない人はいない。

小さな国だけど、わざわざ王族が、お忍びで来ることも……。

あんな街で、虚勢を張っていた時代が、遠い過去のように思えた。

「セレノー。あなたにお客さんが来てるわよ」

突然、休憩中の娼婦が、私を呼びにきた。

「客? いいえ。今日は休みと書いておいたはず……」
「客じゃないの。女の人よ」
「女……?」

全く心辺りがなかったが、裏の控え室に案内したとのことなので、私はすぐに向かった。

「……セレノー」
「えっ……」

控え室には……。

母上がいた。

「は……。母上!?」
「そうよ。あぁごめんなさいセレノー。こんなことになってしまって」
「本物……ですか?」
「もちろんよ」

私は思わず、母上に抱き着いた。

きつい香水の香りがする。
だけど、その奥に、確かに懐かしい母の匂いも残っていた。

「五年前、娼婦になってから、突然あなたへの送金が、全く届かなくなってしまって……。街に行ったら、追い出されたと聞いたわ。それからずっと、色々な国を探し回って……。あぁセレノー。ようやく見つけることができた」
「母上……。ずっと会いたかったです」
「……まさか、私と同じ、娼婦になっていただなんてね」
「お許しください……。生きるため、仕方なく」
「謝ることなんてないわ。トップだもの。……私なんて、一度も取ったことがないわ」

母上は……。美人すぎるのだろう。

体はそこまでではない。

この世界では、体と愛嬌、その次に顔だ。

「もう充分、貯蓄はあるはずでしょう? 続けるの?」
「……人を支配することに、喜びを感じていたことは確かです。ですが、母上と再会することができた以上、もうここで……」
「二人で、どこか小さな村に行って、暮らしましょう?」
「そうですね……」

あの時も、同じだった。

事業に失敗し、国を追い出され、あの街に……。

だけど、同じ過ちはしない。

私には、母上がいる。

もう、意地を張る必要なんてないのだ。

ブレッザ家という名前は、なくなったのだから。

「私は、自然豊かな土地が良いと思っているの。あなたは?」
「そうですね……。静かな場所がいいと思っています」
「だいたい、一致しそうね。やっぱり親子だわ」
「……はい」

私は母上と手を繋ぎながら、店を出た。

これから、第三の人生が始まる……。
しおりを挟む
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

さくら湖雪
2025.07.01 さくら湖雪

女王様でナンバーワンでのし上がるってってまさかのオチにビックリ

解除
tente
2020.10.29 tente
ネタバレ含む
2020.10.29 冬吹せいら

ご感想ありがとうございます!

解除
歌川ピロシキ
ネタバレ含む
2020.10.29 冬吹せいら

ご感想ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉

菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。 気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。 姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。 全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。

存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。 そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。