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5年後……。ブレッザ家
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娼婦になって、四年が経過した。
あれだけ嫌がっていた職業。だけど、私は自分に適性のあるジャンルを発見したのだ。
相手を罵り……。痛めつける。
どうやらこの世界には、Mと呼ばれる性質の男性がいるらしい。
「いやぁ~! すごいね! セレノーちゃん! また売り上げトップだよ!」
「当然です」
「そのクールな感じもいいね! 来月も頼むよ?」
「わかりました」
オーナーから、特別祝儀を受け取り、私は思わず、頬が緩んだ。
今や、この国で私を知らない人はいない。
小さな国だけど、わざわざ王族が、お忍びで来ることも……。
あんな街で、虚勢を張っていた時代が、遠い過去のように思えた。
「セレノー。あなたにお客さんが来てるわよ」
突然、休憩中の娼婦が、私を呼びにきた。
「客? いいえ。今日は休みと書いておいたはず……」
「客じゃないの。女の人よ」
「女……?」
全く心辺りがなかったが、裏の控え室に案内したとのことなので、私はすぐに向かった。
「……セレノー」
「えっ……」
控え室には……。
母上がいた。
「は……。母上!?」
「そうよ。あぁごめんなさいセレノー。こんなことになってしまって」
「本物……ですか?」
「もちろんよ」
私は思わず、母上に抱き着いた。
きつい香水の香りがする。
だけど、その奥に、確かに懐かしい母の匂いも残っていた。
「五年前、娼婦になってから、突然あなたへの送金が、全く届かなくなってしまって……。街に行ったら、追い出されたと聞いたわ。それからずっと、色々な国を探し回って……。あぁセレノー。ようやく見つけることができた」
「母上……。ずっと会いたかったです」
「……まさか、私と同じ、娼婦になっていただなんてね」
「お許しください……。生きるため、仕方なく」
「謝ることなんてないわ。トップだもの。……私なんて、一度も取ったことがないわ」
母上は……。美人すぎるのだろう。
体はそこまでではない。
この世界では、体と愛嬌、その次に顔だ。
「もう充分、貯蓄はあるはずでしょう? 続けるの?」
「……人を支配することに、喜びを感じていたことは確かです。ですが、母上と再会することができた以上、もうここで……」
「二人で、どこか小さな村に行って、暮らしましょう?」
「そうですね……」
あの時も、同じだった。
事業に失敗し、国を追い出され、あの街に……。
だけど、同じ過ちはしない。
私には、母上がいる。
もう、意地を張る必要なんてないのだ。
ブレッザ家という名前は、なくなったのだから。
「私は、自然豊かな土地が良いと思っているの。あなたは?」
「そうですね……。静かな場所がいいと思っています」
「だいたい、一致しそうね。やっぱり親子だわ」
「……はい」
私は母上と手を繋ぎながら、店を出た。
これから、第三の人生が始まる……。
あれだけ嫌がっていた職業。だけど、私は自分に適性のあるジャンルを発見したのだ。
相手を罵り……。痛めつける。
どうやらこの世界には、Mと呼ばれる性質の男性がいるらしい。
「いやぁ~! すごいね! セレノーちゃん! また売り上げトップだよ!」
「当然です」
「そのクールな感じもいいね! 来月も頼むよ?」
「わかりました」
オーナーから、特別祝儀を受け取り、私は思わず、頬が緩んだ。
今や、この国で私を知らない人はいない。
小さな国だけど、わざわざ王族が、お忍びで来ることも……。
あんな街で、虚勢を張っていた時代が、遠い過去のように思えた。
「セレノー。あなたにお客さんが来てるわよ」
突然、休憩中の娼婦が、私を呼びにきた。
「客? いいえ。今日は休みと書いておいたはず……」
「客じゃないの。女の人よ」
「女……?」
全く心辺りがなかったが、裏の控え室に案内したとのことなので、私はすぐに向かった。
「……セレノー」
「えっ……」
控え室には……。
母上がいた。
「は……。母上!?」
「そうよ。あぁごめんなさいセレノー。こんなことになってしまって」
「本物……ですか?」
「もちろんよ」
私は思わず、母上に抱き着いた。
きつい香水の香りがする。
だけど、その奥に、確かに懐かしい母の匂いも残っていた。
「五年前、娼婦になってから、突然あなたへの送金が、全く届かなくなってしまって……。街に行ったら、追い出されたと聞いたわ。それからずっと、色々な国を探し回って……。あぁセレノー。ようやく見つけることができた」
「母上……。ずっと会いたかったです」
「……まさか、私と同じ、娼婦になっていただなんてね」
「お許しください……。生きるため、仕方なく」
「謝ることなんてないわ。トップだもの。……私なんて、一度も取ったことがないわ」
母上は……。美人すぎるのだろう。
体はそこまでではない。
この世界では、体と愛嬌、その次に顔だ。
「もう充分、貯蓄はあるはずでしょう? 続けるの?」
「……人を支配することに、喜びを感じていたことは確かです。ですが、母上と再会することができた以上、もうここで……」
「二人で、どこか小さな村に行って、暮らしましょう?」
「そうですね……」
あの時も、同じだった。
事業に失敗し、国を追い出され、あの街に……。
だけど、同じ過ちはしない。
私には、母上がいる。
もう、意地を張る必要なんてないのだ。
ブレッザ家という名前は、なくなったのだから。
「私は、自然豊かな土地が良いと思っているの。あなたは?」
「そうですね……。静かな場所がいいと思っています」
「だいたい、一致しそうね。やっぱり親子だわ」
「……はい」
私は母上と手を繋ぎながら、店を出た。
これから、第三の人生が始まる……。
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