婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら

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違約金

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「は、八億ペンゾ!??!?」

リエスと婚約破棄をし、一週間後。
ようやく、必要書類が整ったので、エンバートの役所を訪れたところ。

違約金なるものを、八億ペンゾも要求された!
なんだ、違約金とは……。聞いたことが無い!

「そのような物、用意しろとは……」
「普通でしたら、翌日に提出されるのが常識ですから。違約金についての説明など、しませんよ」
「なっ……」

一週間、父上を説得し続け……。
なんとか、手切れ金として、八億ペンゾもらった。
だいたい、一年程度は、食うに困らない額だ。
それで……。のんびり、次の職でも探そうと思ったのに!

「今ここで、八億ペンゾを支払ってしまったら、僕はどうやって暮らしていけばいいんだよ!」
「知りませんよ。借金すればいいのでは?」
「侯爵令息が借金など……。ありえない!」
「……はぁ」

受付の女性が、ためいきをついた。
バカにしやがって……。

だが、ここで暴れてしまっては、印象が悪い。
なんとか、譲歩してもらわなければ。

「せめて、分割で支払うことはできないか?」
「できますよ」
「本当か!?」
「はい。ですが、一か月ごとに、元の違約金が高くなりますけど」
「……え?」
「例えば、今は八億ペンゾですが、分割で、月に一億ペンゾ払うとすると、一か月経ったところで、残りは七億ペンゾではなく、七億五千万ペンゾになります」
「わ、わからない。計算はできないんだ。とにかく、分割になるならそれでいい!」
「良いのですか?」
「良い!」

よくわからなかったが、とりあえず書類にサインした。

「違約金については、これで構いません。それから、婚約破棄の手続きですが」
「あぁ。早く進めてくれ」
「原則、五年間は、婚約破棄はできません」
「……は?」

何を言っているんだ。この女は……。

「い、いや。だとすれば、この書類は、何のために?」
「ですから、書類を提出してから、五年間、破棄ができないということでございます」
「それは……。それはつまり、新に誰かと結婚することも、許されないと?」
「そういうことになります」
「なんてことだ……」

僕は、ケスラと結婚できないのか……。

「五年後に、改めて、他のどこかの国で、結婚なさってください」
「嫌だ! 僕は今すぐ結婚したいんだ!」
「説明は以上です。お帰りください」
「おい! まだ話は――」

……行ってしまった。

聞いていない……。聞いてないぞ! こんな話!

リエスは、僕を騙したのか!?
くそっ……。元から、生意気な女だと思っていたんだ!

顔が良くて、勢いで婚約を申し込んだが……。
すごく冷酷で、人間味のない女だった。

それに比べて、ケスラは……。

……ケスラの元に、戻ろう。
いっぱい抱きしめ合って、慰めてもらおう。

だってそれが、夫婦だから。
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