婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら

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困惑する娼婦

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「なんですか!? この契約は!」

私は思わず、フォーランから受け取った書類を、地面に叩きつけてしまった。

「ど、どうしたんだいケスラ。僕たちは、五年結婚できなくても……。実質結婚しているようなものじゃないか。愛があれば、問題ないだろう?」
「そっちの話をしているのではありません!」
「え?」
「こんな法外な分割払いがありますか!」

私がそう言っても、フォーランは首を傾げている。
店に来ていた時から、数字に弱い印象はあったけど……。

まさか、ここまでとは。
これじゃあ一年で、六億ペンゾも損することになる。
そして……。
そんな金を稼ぐことができる保証は、どこにも無い。

「ごめんよケスラ。そんなに怒らないでくれ……」
「甘えないでください!」

うっかり、抱き着こうとしてきたフォーランの頬を、引っ叩いてしまった。
傷ついた表情で、フォーランが私を見上げる。

「痛っ……。酷いよ、ケスラ……」
「……すいません。ですが、これでは、最終的に、とんでもない額を払わないといけないことになりますよ?」
「それならきっと、大丈夫だ。遠くの国の親戚に、払ってもらえばいい」

その親戚は、本当に信用できるのだろうか……。
いきなり現れた、令嬢と婚約破棄をした男に対して、何億ペンゾも支援を?
……考えられない。現実的な話じゃないと思う。

「それよりもケスラ。せっかく良いホテルに泊まっているんだ。美味しいディナーでも――」
「バカですか! そんなお金を使っている余裕など、あるわけがないでしょう!?」

この部屋だって……。
一泊で、一体いくらかかるんだってくらい、設備が良く、高級感が漂っていた。

「フォーラン様。これからは、私が金を管理します。良いですね?」
「どうしてだい? 僕のお金なのに……」
「いい加減にしなさい! そうやって、使うお金がなくなったら、私たち、お終いなのよ!?」
「でも、ケスラだって、貯蓄があるだろう?」
「……あるけど。でも、これから先のことを考えれば、そう簡単に使うことなんて、出来ません」

私は……。働くことができないのだから。
それに、貯蓄と言っても、この男のせいで、金銭感覚が狂ってしまい、入る分だけ使っていたから、ほとんど残っていない。

「難しい話はやめよう。ほら、ベッドが広いよ? 動き回っても大丈夫だ。ケスラは……。たくさん踊ってくれるからね」

気持ち悪い……。
金払いが良かったから、こういうセリフも、我慢していたけど。
これから毎日、言われ続けるの?

ストレスで、胃が痛い……。
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