4 / 13
呆れる令嬢
しおりを挟む
「今日もフォーラン様は、いらっしゃらなかったのね」
「はい……。そのようでございます」
メイドのシンシアと共に、私はため息をついた。
フォーラン様が、婚約破棄を申し出てきて、もう三日ほど経っている。
普通であれば、翌日には、何枚も書類を持って、役所を訪れないといけないのに。
ちなみに私の方の提出書類は、フォーラン様が帰ってすぐに提出しておいた。
婚約破棄した側と違い、された側は、書類を提出した翌日から、誰かと婚約、あるいは結婚をすることが許されるが……。
……しばらくは、したくないなぁ。
元々、ただでさえ、特に願望がなかったのに。
こんな経験をしてしまっては、余計に遠ざかってしまいそうだ。
「彼は……。何も理解していなかったのでしょうか」
「そうでしょうね……。婚約するメリット、そして……。デメリットを、あれだけ役所の方に説明されたのに、一切聞いていませんでしたから」
貴族と言えば、まずは婚約。
そんな考えが、フォーラン様にはあったのだろう。
「婚約を申請することで、得られるメリットは豊富ですが、その分、ただ離婚した時よりも、リスクは高い……。この国で、婚約をする人など、ほとんどいないのに」
「口約束では、している方はいらっしゃると思うわよ?」
「ですが、それもバレてしまえば、結局申請が必要になります。はぁ……。異国から、この地に参って、三年経ちますが、まだ慣れないことが多く、困ってしまいます」
シンシアが、疲れたようにそう言った。
「あなたはとても優秀よ? ほとんどのメイドが、三日ともたずにやめてしまうもの」
「……気持ちはわかります。何をするにも、書類書類。サインというものを覚えたのも、この国に来てからでございますから」
「あはは。そう言われると……。何とも、申し訳ないような気持ちになるけれど」
「いえ。お嬢様が謝る必要は……。その分、教養のレベルが高く、深い話をできる方が多いので、そこに関しては、大変満足しております」
「そう? 良かったわ。シンシアには、長く働いてもらいたいから……」
「ありがたいお言葉です」
……さて。
明日には、来るだろうか。
婚約破棄の書類の提出は、一日遅れるごとに、違約金が発生することを……。
きっと、フォーラン様は、知らないんだろうなぁ。
「はい……。そのようでございます」
メイドのシンシアと共に、私はため息をついた。
フォーラン様が、婚約破棄を申し出てきて、もう三日ほど経っている。
普通であれば、翌日には、何枚も書類を持って、役所を訪れないといけないのに。
ちなみに私の方の提出書類は、フォーラン様が帰ってすぐに提出しておいた。
婚約破棄した側と違い、された側は、書類を提出した翌日から、誰かと婚約、あるいは結婚をすることが許されるが……。
……しばらくは、したくないなぁ。
元々、ただでさえ、特に願望がなかったのに。
こんな経験をしてしまっては、余計に遠ざかってしまいそうだ。
「彼は……。何も理解していなかったのでしょうか」
「そうでしょうね……。婚約するメリット、そして……。デメリットを、あれだけ役所の方に説明されたのに、一切聞いていませんでしたから」
貴族と言えば、まずは婚約。
そんな考えが、フォーラン様にはあったのだろう。
「婚約を申請することで、得られるメリットは豊富ですが、その分、ただ離婚した時よりも、リスクは高い……。この国で、婚約をする人など、ほとんどいないのに」
「口約束では、している方はいらっしゃると思うわよ?」
「ですが、それもバレてしまえば、結局申請が必要になります。はぁ……。異国から、この地に参って、三年経ちますが、まだ慣れないことが多く、困ってしまいます」
シンシアが、疲れたようにそう言った。
「あなたはとても優秀よ? ほとんどのメイドが、三日ともたずにやめてしまうもの」
「……気持ちはわかります。何をするにも、書類書類。サインというものを覚えたのも、この国に来てからでございますから」
「あはは。そう言われると……。何とも、申し訳ないような気持ちになるけれど」
「いえ。お嬢様が謝る必要は……。その分、教養のレベルが高く、深い話をできる方が多いので、そこに関しては、大変満足しております」
「そう? 良かったわ。シンシアには、長く働いてもらいたいから……」
「ありがたいお言葉です」
……さて。
明日には、来るだろうか。
婚約破棄の書類の提出は、一日遅れるごとに、違約金が発生することを……。
きっと、フォーラン様は、知らないんだろうなぁ。
297
あなたにおすすめの小説
罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。
公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない
有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。
魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。
「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚
里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」
なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。
アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
婚約破棄、されたほうです。
みけねこ
恋愛
社交パーティーの会場のど真ん中で突然言い渡された婚約破棄。
目の前で婚約者は肩を抱き寄せられ、得意げに弟はこちらにそう突きつけた。
婚約破棄、されたのはどうやらこちらのようです。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる