「もう十分に生きていると思っていた私に、殿下は毎日花を置いていきました」
侯爵家を出て、二年が経った。
離縁のことは、もう誰にも話さない。
王都の外れに小さな部屋を借り、伯爵家の令嬢に刺繍を教え、静かに、過不足なく生きている。
泣いたのはいつだったか、もう思い出せない。
それで十分だと、思っていた。
ある晩、馴染みの花屋の前で、男が立っていた。
「セラフィーナ」
三年ぶりに聞く声が、当然のように名前を呼ぶ。
ヴィンセント王太子殿下――幼い頃から、ただひとり、自分を名前で呼び続けてくれた人。
「王宮へ来てください」
「お断りします。私はもう、十分に生きていますので」
翌日、部屋の前に花が一輪あった。
その翌日も。また翌日も。
受け取らない。でも、捨てられない。
必要とされなくても生きていける。
それはもう証明した。
だからあなたは、私を揺るがさないでください。
せっかく、平らになった心だったのに。
これは、ひとりで立つことを選んだ女が、
それでも誰かの隣へ帰るまでの物語。
離縁のことは、もう誰にも話さない。
王都の外れに小さな部屋を借り、伯爵家の令嬢に刺繍を教え、静かに、過不足なく生きている。
泣いたのはいつだったか、もう思い出せない。
それで十分だと、思っていた。
ある晩、馴染みの花屋の前で、男が立っていた。
「セラフィーナ」
三年ぶりに聞く声が、当然のように名前を呼ぶ。
ヴィンセント王太子殿下――幼い頃から、ただひとり、自分を名前で呼び続けてくれた人。
「王宮へ来てください」
「お断りします。私はもう、十分に生きていますので」
翌日、部屋の前に花が一輪あった。
その翌日も。また翌日も。
受け取らない。でも、捨てられない。
必要とされなくても生きていける。
それはもう証明した。
だからあなたは、私を揺るがさないでください。
せっかく、平らになった心だったのに。
これは、ひとりで立つことを選んだ女が、
それでも誰かの隣へ帰るまでの物語。
あなたにおすすめの小説
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
気持ち悪いストーカー