腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第五章:足止め

5-20お題

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 私たちはコクさんのたっての要望で美味しいものを三点ほど提供しなければならなくなった。


「まったく、あんたらは本当に厄介事に巻き込まれるわね」

「ううぅ、そう言わないでくださいよカリナさん……」


 ジマの国のお城の厨房で持ってこられた新鮮な食材を目の前に私は悩んでいた。
 コクさんの要望するエルハイミさんの喜びそうな食事って言われてもピンとこない。

 そもそも私はエルハイミさんと関わったのはあの転移に巻き込まれた時とコクさんと争っていた時にしか会っていない。
 そんな短時間であの駄女神にそっくりな、いや、駄女神がエルハイミさんの姿形を借りてるんだっけ? とにかく顔を知ってるくらいの人の好みなんてわかるはずがない。


「うーん、食材は素晴らしい新鮮なものが山の幸、海の幸と有るけど……」

 日本人にはなじみのある醤油、いや魚醤だけどそれもあるからいろいろと料理の幅は広がる。
 けど根本的に何が好きなのか分からなければ対処のしようがない。

「カリナさんってエルハイミさんの好きなモノって知ってます?」

「私? 知ってるわけないじゃない? そもそもエルハイミさんって食べ物は何でも食べてた印象だし。ああぁ、虫は嫌がっていたようだけど?」


 虫かぁ。

 私は思わず故郷の父を思い出す。
 イケメンのパパなのにおいしそうにさなぎの油揚げ食べるお父様。
 決して近寄らないで欲しい。

 えんがちょパパさんである。


「まあ虫はこの中には無いから良いのですが…… そうだ、クロエさんやクロさんは知っているでしょうか?」

「さあ、どうだかね。クロエ様もクロ様もエルハイミさんや黒龍様の身の回りのお世話していたからもしかして知っているかもね」

 私はそれを聞き急いでクロエさんやクロさんを探しに行くのだった。


 * * * * *


「主様の好みですかな?」

「主様の好みでいやがりますか?」


 たまたま廊下を出てコクさんがいる部屋に向かっていたらクロさんとクロエさんにばったりと出会った。
 どうやらお茶の準備をする為に厨房へ来るつもりだったらしい。

 私は二人を捕まえてすぐにエルハイミさんが好きそうな料理を聞いてみる。

「主様は特に好き嫌いなされていませんでしたからな。出されたものは全て食べておいでだった」

「時たま変なものを食べてはいたでいやがりますがね。何と言うかエルフ豆の腐ったようなものを黒いソースとネギを混ぜてライスの上に乗せて食べていやがりましたね、精霊都市ユグリアでは」

「はい? エルフ豆の腐ったモノ? 黒いソースにネギ? ライスって、白米のですか?」

 私はそれを聞いて首をかしげる。
 精霊都市ユグリアと言えばエルフの森からすぐ近くの街だったはず。
 あそこは確かファイナス長老が市長を務め、エルフ族との数少ない外界との接点であるはず。


 そんな精霊都市ユグリアにどう考えても納豆みたいなものが有ると?
 それにライスって白米だとすると、エルハイミさんって納豆ご飯食べていたって言うの!?


「あ、あの、その精霊都市ユグリアって私行った事無いのですがなんでそんな特殊な食べ物があるんですか?」

「それはイチロウ・ホンダと言う異世界人のせいでいやがります。彼は異世界の料理人でこちらの世界でもその料理を再現していると言われるでいやがります。ああ、そう言えば主様はやたらとその異世界料理を好んでいたでいやがりますね?」

 イチロウ・ホンダって、それ完全に日本人の名前じゃないの!?
 こっちの世界に日本から転生か何かで来ているって事?
 いや、今クロエさんは「異世界人」って言ってた。

 じゃあ、何かの方法でこっちの世界に来た人って事?


「すみません! そのお話もう少し詳しく聞かせてください!!」


 私はクロエさんとクロさんにそう懇願するのだった。


 * * * * *


 この世界にはその昔異世界から戦力として異世界人を召喚する術が有ったらしい。
 詳しくはクロエさんたちも知らないようだったけど、要は魔法で異世界人を召喚して争いの戦力に使っていたとか。

 今はその異世界人がこちらの世界に来る時に持つ「ギフト」と呼ばれるスキルが問題視され召喚する方法自体を禁忌として失われてしまったらしいけど、中には未だにこの世界で生き続けている人もいるらしい。

 その代表的な存在が魔法学園ボヘーミャの学園長、英雄でもあるユカ・コバヤシと言う人物と精霊都市ユグリアのファイナス長老お抱えの料理人、イチロウ・ホンダと言う人物らしい。
 彼らはこちらの世界に来てゆうに千年以上は生きているとか。


「あの、なんで普通の人間が千歳以上も生きているんですか?」

「それは全部お前らエルフのせいでいやがります!」


 びしっとクロエさんに指を突き付けられて思わず私はたじろぐ。


「え? な、なんで私らエルフが??」

「ふむ、クロエよそれでは流石に説明不足であろう。リル殿よ、『時の指輪』はご存じか?」

 クロエさんに指さされて困っている私を見かねてクロさんが語りだす。
 勿論シャルさんから聞いているので「時の指輪」については知っている。

「はい、知ってはいますけど…… って、まさかその異世界人たちって『時の指輪』をしているんですか!?」

 私の推測にクロさんは頷く。

「そのとおり、彼の者たちは我ら黒龍にさえ影響を及ぼせる者もいた。非常に危険な存在だったが今いる英雄ユカ・コバヤシやイチロウ・ホンダは主様とも友好関係を持たれておられる」

 クロさんはそう言って私を見る。
 クロさんの主様って事はエルハイミさんの事だから、エルハイミさんってもしかして……


「あ、あのぉ~もしかしてエルハイミさんって異世界人の転生者なんですか?」


 もしかして聞かれてまずいかもしれない事なので私は声を小さくして聞いてみる。
 するとクロさんもクロエさんも無言で頷く。

「遠い昔に主様自身がそうおっしゃられていた。今はその記憶自体知る物はほとんどいないが」


 うっわー。

 やっぱりエルハイミさんは異世界人の転生者だったんだ!
 しかも納豆を食べるって事は、関東圏の日本人?
 関西の人は納豆嫌いって言ってたもんなぁ。

 だとすると……


「このジマの国の食材はうってつけかもしれませんね。後はどんなものが好きかさえわかれば……」

 漠然とした話だったけど何となく方向性が決まりそうだ。
 
 「和食」をベースとした料理。


 
 私は更にエルハイミさんについていろいろとクロさんとクロエさんに聞くのだった。  
 
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