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22 結婚の条件
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これには真も驚いたよう。
「亮、旦那さんがなにか、知ってるか?」
「知ってるよ! 結婚したら、男が旦那さんで、女が奥さんになる!」
正解だ。
だが、俺と真が知りたいのは、どうしてそう思ったか。
「お母さんが智くんの奥さんになるなら、智くんは旦那さんでしょ?」
「なんで、お母さんが――」
「なりたいって」
「は!?」
「お母さん、智くんの奥さんになりたいんだって」
…………。
「お母さんが……そう言ったのか?」
「うん」
俺の問いに、亮は即答した。
「いつ!?」と真が聞く。
「入院する前。宿題の作文のことを話してて、お母さんの将来の夢は? って聞いたら、智くんの奥さんになりたい、って」
彩が……そんなこと――。
「けど、お母さんは俺と兄ちゃんのお母さんだから、智くんの奥さんにはなれないんだって」
「え――――?」
真が、目を丸くした。
「お母さんが一番大事なのは俺と兄ちゃんだから、ダメなんだって」
だから、彩は俺と別れようと――?
「一番じゃなくて、いい」
考えるより先に、言葉が口を飛び出した。
「二番でも三番でもいい」
とにかく、必死だった。
「だから、俺を家族に入れてくれ」
縋るような想いで、言った。
『家族』がなにか、わからなかった。
彩と付き合い始めて、真と亮と会うようになっても、やっぱりわからなくて。
正直、今もわからない。
けれど、これだけは、わかる。
彩のそばにいたい――――。
「いい父親になれるかはわかんねーけど、悪い父親にだけはならないから」
「いいよ!」と亮が言った。
あまりに早く、迷いのない返事に、ビックリした。
「智くん、お父さんにしてあげる!」
「えっ?」
そんなあっさり?
「お母さんと結婚したら、智くんは俺と兄ちゃんだけのお父さんだよね?」
「え? あ、ああ」
「やった! あ、俺ジュース買うんだった! 兄ちゃん、お金ちょーだい」
真から小銭を貰い、亮はさっきまでいた十メートル向こうの自動販売機に駆けて行った。
俺は呆気に取られて、ポカンと口を開けていた。
「……お母さんも同じこと、言ったんだ」
真が言った。
「お父さんと離婚した時。頑張るから、って。いいお母さんになれるように頑張るから、って。頑張ってもいいお母さんになれなくても、悪いお母さんにだけはならないから、って」
男泣きなんて、柄じゃない。
だけど、一旦こぼれた涙を止める術なんてわからない。
「俺も亮も、すっごい食べるから、お金かかるよ?」
「え?」
「高校とか大学とかも、お金かかるよ」
真が何を言いたいのかすぐにはわからず、返事を迷った。
「お母さんと結婚したら、溝口さんが働いたお金、なくなるよ? 血も繋がってない俺と亮の為に、働くの嫌じゃない? どんなに働いても自分の好きに使えるお金はあんまりなくて、ムカつかない?」
真の目に涙が浮かぶ。
「真、それ――」
「亮、旦那さんがなにか、知ってるか?」
「知ってるよ! 結婚したら、男が旦那さんで、女が奥さんになる!」
正解だ。
だが、俺と真が知りたいのは、どうしてそう思ったか。
「お母さんが智くんの奥さんになるなら、智くんは旦那さんでしょ?」
「なんで、お母さんが――」
「なりたいって」
「は!?」
「お母さん、智くんの奥さんになりたいんだって」
…………。
「お母さんが……そう言ったのか?」
「うん」
俺の問いに、亮は即答した。
「いつ!?」と真が聞く。
「入院する前。宿題の作文のことを話してて、お母さんの将来の夢は? って聞いたら、智くんの奥さんになりたい、って」
彩が……そんなこと――。
「けど、お母さんは俺と兄ちゃんのお母さんだから、智くんの奥さんにはなれないんだって」
「え――――?」
真が、目を丸くした。
「お母さんが一番大事なのは俺と兄ちゃんだから、ダメなんだって」
だから、彩は俺と別れようと――?
「一番じゃなくて、いい」
考えるより先に、言葉が口を飛び出した。
「二番でも三番でもいい」
とにかく、必死だった。
「だから、俺を家族に入れてくれ」
縋るような想いで、言った。
『家族』がなにか、わからなかった。
彩と付き合い始めて、真と亮と会うようになっても、やっぱりわからなくて。
正直、今もわからない。
けれど、これだけは、わかる。
彩のそばにいたい――――。
「いい父親になれるかはわかんねーけど、悪い父親にだけはならないから」
「いいよ!」と亮が言った。
あまりに早く、迷いのない返事に、ビックリした。
「智くん、お父さんにしてあげる!」
「えっ?」
そんなあっさり?
「お母さんと結婚したら、智くんは俺と兄ちゃんだけのお父さんだよね?」
「え? あ、ああ」
「やった! あ、俺ジュース買うんだった! 兄ちゃん、お金ちょーだい」
真から小銭を貰い、亮はさっきまでいた十メートル向こうの自動販売機に駆けて行った。
俺は呆気に取られて、ポカンと口を開けていた。
「……お母さんも同じこと、言ったんだ」
真が言った。
「お父さんと離婚した時。頑張るから、って。いいお母さんになれるように頑張るから、って。頑張ってもいいお母さんになれなくても、悪いお母さんにだけはならないから、って」
男泣きなんて、柄じゃない。
だけど、一旦こぼれた涙を止める術なんてわからない。
「俺も亮も、すっごい食べるから、お金かかるよ?」
「え?」
「高校とか大学とかも、お金かかるよ」
真が何を言いたいのかすぐにはわからず、返事を迷った。
「お母さんと結婚したら、溝口さんが働いたお金、なくなるよ? 血も繋がってない俺と亮の為に、働くの嫌じゃない? どんなに働いても自分の好きに使えるお金はあんまりなくて、ムカつかない?」
真の目に涙が浮かぶ。
「真、それ――」
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